( 2014.01.15 )


 中国の首都・北京の息を詰まらせている汚染を制御するため、北京から車で2時間の工業都市・唐山に最近、 「 破壊部隊 」 が現れ、石炭を使用している一連の製鉄工場を解体処分した。

 テレビカメラは、政府の閉鎖要請に長年抵抗してきた時代遅れの製鉄施設の大型の機械設備を、政府公認の破壊部隊が取り壊している様子を捉えた。 一部の報道によると、破壊部隊は 「 日曜作戦 」 と銘打ち、爆発物を使ってボイラーを吹き飛ばした。

 そのメッセージは 「 都市部の汚染浄化に真剣に取り組め 」 というもので、地元の役人向けだ。 地元の役人たちは、汚染源の工場所有者と共謀していることが多い。 所有者は高額納税者でもある場合が少なくないからだ。

 中国の大気汚染指数が過去最悪を更新するなか、人々は中央政府の対応が欠如していると結論付けがちだ。 しかし、唐山の軍事スタイルの破壊作戦からは、その逆が真実であることがうかがえる。

 実際、米ハーバード大学と中国のいくつかの有名大学( 清華大学など )の科学者などから成る研究チームは、政府が厳格な措置を講じて汚染源を排除しているにもかかわらず、中国の大気の質が悪化していると述べている。

 彼ら大学の専門家がたどりついた結論は、中国のみならず、日本や韓国といった隣国をも悩ませるものだ。 日本と韓国は、活況を呈する中国の工業地帯から排気が流れてくる位置にあるからだ。 中国当局が汚染に対して最大限に努力しても、中国の経済成長のスピードに追いつかない。

 つまり、即効薬はないと学者は考えているということだ。


 ハーバード大学工学・応用科学科の中国プロジェクトの責任者を務めるクリス・ニールセン氏は、 「 中国がある種の汚染対策で大きな成功を収めているという主張に不合理な点はない 」 と述べる。

 だが、この成功が大気の質の向上につながっていない。 このことから、大気汚染には 「 非常に複雑な問題がある 」 ことがうかがえると同氏は主張する。

 英医学誌ランセットに昨年掲載された論文によると、大気汚染は中国人にとって4番目の健康上の脅威になっている。 論文によれば、中国では2010年に約120万人が大気汚染のために早死にした。 中国政府のデータによると、悪性腫瘍による死亡で最も多かったのが肺がんだった。

 中国の公式な基準によると、昨年760万人の唐山市民が吸っていた大気の質の平均値は、7日のうち5日、健康に危険だとされる水準に達しており中国でも汚染が最もひどい。

 唐山の有害な排気は1年前、北京周辺のその他の都市から出された排気とともに 「 Airpocalypse( air=大気 と apocalypse=黙示録から作られた造語 ) 」 を形成するのに一役買った。 当時、北京の大気汚染の度合いは米国で安全だとされる水準の70倍以上に達していた。

 さらに悪いことに、唐山の鉄鋼業は過剰な生産能力に悩まされている。 これは中国で大きな問題になっており、唐山の生産能力は米国の全生産能力に匹敵すると推測されている。

 したがって、汚染源となる古い製鉄所を廃棄すれば、一石二鳥になる。

 しかし、前出のニールセン氏は、中国の汚染問題の複雑さが中国の国家計画当局が好むようなトップダウンの解決法に結びつくとは限らないと述べる。

 例えば、中国は石炭火力発電所から排出される二酸化硫黄を劇的に削減したが、このために中国北部で冬にPM2.5と呼ばれる微粒子が増えた可能性がある。 PM2.5は人間の肺に最も大きなダメージを与える粒子だが、大気中の化学反応によって形成される。 ニールセン氏によれば、硫黄分を取り去ったことが、この化学反応の増加を許したという。

 気候パターンの変化も環境の浄化を阻んでいる。 かつては寒冷前線が北京を通過することで、汚染物質が海の方向に流れていったが、最近は大気が停滞する傾向が強まっている。

 カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究者で、中国の環境の専門家でもあるデボラ・デリグソン氏は 「 彼らは動く標的を追おうとしている 」 と述べた。 それでも同氏は、5〜10年で 「 目に見えるような大気の改善がみられる 」 と予測している。

 中国政府は昨年、国家行動計画を発表し、17年までの5年間に2750億ドル( 約28兆7000億円 )を汚染対策に費やす目標を掲げた。 政府はこの間に北京周辺域のPM2.5の数値を25%削減することを目指している。

 ニールセン氏は、究極的な解決法が産業界に炭素税を課すことかもしれないと考えている。 炭素税は市場を基盤とした解決法で、中国の新財務相、楼継偉氏もこれを支持している。

 それでもニールセン氏は、灰色の空をいきなり青色に変えられた国は世界に存在しないと指摘、 「 問題解決には何十年もかかるだろう 」 と述べた。