( 2013.12.18 )
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 11月15日付の中国紙・北京青年報などによると、北京市環境局は大気汚染の主な原因となる微小粒子状物資PM2.5について、今年の平均濃度が1立方メートル当たり90マイクログラム前後になることを明らかにした。 中国の環境基準の約2.5倍、日本の基準値の6倍に当たる。 中国各地で大量の石炭を燃やす暖房が始まっており、警戒感が高まってきた。 ボイラー燃料の石炭が、質の悪いガソリンによる自動車の排ガスに次ぐPM2.5の発生源だからだ。 北京市の発表を受け、同市の日系企業の駐在員が家族を脱出させる動きが加速している。

 中国黒竜江省のハルビンで10月21日、高密度の大気汚染物資を含む濃霧が発生し、PM2.5の濃度が1000マイクログラムの観測上限を超えた。 視界が10メートル未満のひどい汚染に見舞われ、市内の全小中学校が臨時休校となった。 高速道路の通行止めが相次ぎ、空港や鉄道、路線バスのダイヤが乱れた。 ハルビンでは10月から家庭で暖房が始まり、燃料の石炭の使用量が急増したため、煤煙が大量に放出され、PM2.5の濃度が急激に高まった。 風が弱い日だと北京でもハルビンと同じように濃霧が発生し、PM2.5の濃度が高まることになる。
 世界保健機関( WHO )の下で化学物質など発がん性を評価している専門組織、国際がん研究機関( IARC )はPM2.5について肺がんなどの発がん性を有すると初めて認定し、5段階のリスク評価で最も危険度が高い 「 グループ1 」 に分類した。 IARCは2010年に大気汚染が原因の肺がんによる死者が世界全体で22万人に上ったと推計。 特に大気汚染が深刻化している中国は早急な対策が必要だと指摘した。

 これを受け、中国政府はようやく重い腰を上げ始めた。 9月にはPM2.5削減の数値目標を盛り込んだ5ヵ年計画 「 大気汚染防止対策 」 を策定した。 最も求められるのは排出源対策だが、自動車の排ガス規制に踏み込むと経済成長にブレーキがかかるため、どれだけ現実的に削減が進むかは疑問といわざるを得ない。

 中国発のPM2.5は例年、偏西風に乗って黄砂とともに春に日本に飛来してきたが、九州などでは11月に入って注意情報が出された。 今後、西日を中心に大量のPM2.5が日本に飛来してくるのは確実で、来年の春先にピークを迎える。


【 補足:PM2.5による健康被害 】
 PM2.5は、呼吸器系の病気だけでなく、心筋梗塞やがんの原因になるとの指摘がある。 IARCはPM2.5を含む大気汚染物質の発がんリスクついて、5段階のうち最高の 「 発がん性がある 」 ( グループ1 )に分類した。 これはアスベスト( 石綿 )やたばこと同じレベルだ。
 がんとともに心配なのが、心筋梗塞や脳梗塞といった循環器系疾患への影響だ。 循環器系疾患を引き起こす経路は、肺の末端の肺胞に入り込んで炎症を起こすだけでなく、炎症が全身に広がって循環器系を痛める → 肺にある自律神経系( 交感神経と副交感神経 )のバランスを崩し、不整脈を引き起こす → 肺胞からPM2.5が血液中に溶け込んで全身に回り、動脈を収縮、硬化させるとされている。
 また、大気汚染と乳がんや膀胱がんの関係を指摘する調査報告もある。 不妊症や胎児への影響も懸念されるという。