( 2013.02.12 )

  


 中国社会で “敵視” されている前東京都知事、石原慎太郎・日本維新の会共同代表の名前が、再び中国のインターネット上にちらほら登場している。 もっとも今回は、石原氏が都による購入を試み、日本政府が国有化するに至った沖縄県・尖閣諸島にまつわる話ではない。




 中国では1月中旬から、北京や天津、河北省を中心に、深刻な大気汚染が社会問題となっている。 呼吸器疾患を誘発するとされる直径2.5マイクロメートル以下の微小粒子状物質 「PM2.5」 の大気中の濃度が上昇し、日本の基準値の25倍となる大気1立方メートル当たり900マイクログラムを記録した。

 PM2.5の濃度を上げているのが、自動車の排ガス、工場が吐き出す煤煙、石炭の利用などである。 特に主原因として糾弾されているのが排ガスで、北京市政府は旧型の自動車18万台を淘汰する方針を示している。

 そこで関連事例として取り上げられるのが1999年、粒子状物質を排出するディーゼルエンジン車が東京都の大気汚染の元凶だとして、記者会見で 「東京からディーゼル車を駆逐する作戦を展開する」 と宣言し、真っ黒い煤の入ったペットボトルを振り回した石原氏の姿だ。 石原氏のパフォーマンスで、ディーゼル車のイメージはさらに低下した。 しかし、ディーゼルトラックなどに対する粒子状物質の排出規制基準を制定、減少装置の取付を義務づけ、緑化を進めた結果、東京の大気の状況は改善されたとされる。




 国内に広がる深刻な状況を受け、各国の “症例” を検証した中国メディアは、 「世界の8大公害事件のうち4件は1950~60年代の日本で発生した。 世界最大の都市の一つである東京も、60年代はスモッグが天をいぶし、河川は臭気が漂っていた」 としている。

 そのうえで、 「日本は80年代に汚染の改善に乗り出し、環境を重視し始めた。 そして人口が密集する極めて狭小な国土で、奇跡といえる成果を成し遂げた」 と高く評価している。

 中国でも1979年に 「環境保護法」 が試行法として制定されている。 83年に当時副首相だった李鵬元首相が 「環境保護を国策の一つとする」 と発言。 89年には同法が内容を強化した上で正式に施行された。 全国人民代表大会( 全人代、国会に相当 )常務委員会は昨年8月、23年ぶりとなる同法改正案の草案を審議した。

 「大気汚染防止法」 「水汚染防止法」 など関連法規も数多い。 しかし、改革・開放の御旗のもと、経済成長を優先する中で、汚染物質の排出基準などについて、中央と地方レベルの二重基準を設けることで抜け道を用意。 これらの法規はほとんど空文と化していた。

 持続的な経済成長と環境保護という 「矛盾」 が積もりに積もり、ついに決壊した格好だ。 中国気象局は5日の記者会見で、大気汚染について、 「影響を及ぼした範囲が広く、長時間続き、強大だ。 歴史的にもまれにしか見られないものだ」 と非常事態を認めた。




 中国外務省の華春瑩報道官は5日の定例記者会見で大気汚染問題に触れ、 「他国の経験と対策を参考にして学びたい」 と述べた。 今、 “奇跡” を必要としている中国が、奇跡を起こした日本に学ばない手はない。

 日中は96年に、日本政府の無償資金協力と中国政府の資金を投入して 「日中環境保全センター」 を立ち上げている。 日中外交筋は 「中国で環境対策がよりプライオリティーを得られるよう手伝っていきたい。 環境保護について日本は経験があるし、協力できる」 と呼びかけてもいる。

 扉を閉ざしているのは中国だ。 日本の首相経験者らを招待、習近平共産党総書記が与党党首と会見したといっても、彼らを通じて尖閣諸島に関する持論を喧伝し、 “失言” を引き出したにすぎない。

 日中関係筋は 「何が起きても日本側の責任というのが、中国のお決まりの言い方だ」 と指摘する。 中国は関係改善の条件として、日本側に 「実際の行動」 を求めているが、中国海軍のフリゲート艦が海上自衛隊の護衛艦に射撃管制用レーダーを照射した一件を見ても、挑発行為を重ねてるのは中国であることは明らかだ。

 中国では環境に対する市民の意識が徐々に高まっている。 健康被害が顕著になれば、当局に対する不満が噴出しかねない。 環境破壊が経済成を鈍化させる恐れも指摘されている。 温家宝首相は1月、 「省エネや排ガスの減少を進め、行動をもって人民に希望を与えなければならない」 と述べた。 日中関係改善に努め、日本に教えを請うことも 「行動」 の一つに数えられる。





( 2013.03.07 )

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 安倍晋三首相が、中国からの飛来が問題となっている微小粒子状物資 「PM2.5」 について、日本の環境技術で協力する姿勢を明らかにした。 ただ、中国側は、沖縄県・尖閣諸島をめぐる緊張関係のせいか、難色を示しているという。 今週末には、中国大陸から黄砂とPM2.5が襲来しそうだが、迷惑国家は目を覚ますのか。

 「公害を克服した日本の環境技術を生かし、解決に向けて積極的に取り組む」

 安倍首相は6日の参院本会議で、中国からのPM2.5に関する代表質問にこう答えた。 戦後の高度成長期、日本は 「公害のデパート」 とさえ言われたが、行政と企業、国民が一体となって改善に取り組み、いまや環境技術は世界有数となっている。

 中国のPM2.5の主原因は 「自動車の排ガス」 「工場のばい煙」 「石炭の利用」 とされ、いずれも日本の技術で対応できる。 現に、環境省は担当者を訪中させ、観測機器の提供や研究者の受け入れを申し入れている。

 ところが、石原伸晃環境相は2日、 「( 中国側は )欧米には研究者を派遣して先進国の経験を聞くと言うが、日本に行くとは言ってくれなかった」 「環境問題( での協力 )が、ぎくしゃくしている日中関係を取り戻す 『てこ』 になると思ったが、良い返事がない」 と講演で語った。
 それどころか、日本に責任を押し付けるような言動も見受けられる。

 ジャーナリストの宇田川敬介氏が先月、旧知の共産党幹部を取材したところ、 「中国の環境を悪化させたのは、外国投資による工場が大半だ。 結果、中国人民が損害を被っている。 日本人の被害は自業自得でもある。 この事態を解決するのは、外国企業が空気をきれいにする技術を自費で持ち込み、中国をきれいにすることだ。 何も対処しない場合、 『環境税の徴収』 を考えている」 と言い放ったのだ。

 中国はGDP( 国内総生産 )世界第2位となりながら、他国への越境汚染に対する自責の念もなさそうなのだ。 安倍首相の善意は通じないのか。

 「月刊中国」 の発行人である鳴霞めい・か氏は 「中国では、大気汚染だけでなく、河川の汚染、土壌汚染が深刻化しているが、政府が本気で取り組む様子は見えない。 がん患者も激増しており、 『大気汚染で年間50万人が死ぬ』 という指摘もある。 共産党幹部の親族らはどんどん海外に移住している。 人口が13億人もいるため 『国民が多少死んでも構わない』 と思っているのではないか」 と語っている。





( 2013.12.18 )

  


 中国の環境汚染が激烈を極めている。 河川や沿岸海域、大気の汚染は甚大で、日本にも悪影響を及ぼしている。 こうしたなか、共産党内で驚くべきプランが浮上しているという。 外国企業を対象に 「環境税」 を徴収しようというのだ。

 中国での環境税導入は15年ほど前から検討されてきた。 急激な経済発展の代償として、中国の主要7河川( 長江、黄河、珠江、松花江、淮河、海河、遼河 )は、工場排水などで深刻な汚染に直面している。 中小河川の汚染もひどく、ネット上では、赤や青、緑、黄色など、自然界ではあり得ない色に染まった河川の画像まで掲載されている。 当然、汚染水が流れ込む、沿岸海域の汚染も進行している。

 微小粒子状物質 「PM2.5」 が有名になった大気汚染も猛烈で、首都・北京は晴れの日でも黒い霧に覆われたような状況。 在北京日本大使館が今月8日、現地邦人向けに行った説明会では、劣悪な環境について 「壮大な動物実験のような状況に置かれている」 との解説がなされた。

 これには中国の人々も黙ってはいない。

 昨年10月には、浙江省寧波市で化学工場の建設計画に反対する地元住民ら約1000人による抗議デモが発生。 参加者の一部が暴徒化して警察の車両などを破壊したり、投石するなどして多数の負傷者が出たという。

 こうしたなか、アジア開発銀行( ADB )は昨年8月、中国の環境汚染防止に向けて 「環境税」 の創設など包括的な財政、法制度の整備が必要だと提言する報告書をまとめた。

 環境税には、国民から幅広く環境税を徴収する案と、企業など汚染物質排出量に応じて徴収する案がある。

 中国事情に詳しいジャーナリストは 「外国企業を対象にした環境税導入は十分あり得る。 これまでも、失業保険や福利厚生なども外国企業だけに義務付けてきた。 ただ、税収が環境改善に使われるかは疑わしい。 中国ではいまだかつて、目的税が目的に使用されたことはない。 大気汚染でいえば、元凶は火力発電所と環境対策がなされていない古い車。 ここにメスを入れないと意味がない。 環境税導入が、党幹部らの金もうけに悪用されかねない」 と語っている。