( 2012.01.12 )

  

 中国の首都・北京の大気汚染は、2008年のオリンピックの際盛んにクローズアップされた。 中国は国の威信をかけて空気の浄化に努め、オリンピックはつつがなく終了した。 ではその後、北京の大気汚染はどうなっているのか。

 つい先日、所用で北京に行って驚いた。 北京首都国際空港を出て、タクシーで高速道路に入ると、スモッグに包まれて、視界が数百メートルもきかないのだ。 ドライバーに聞くと、 「 最近はいつもこんな調子 」 だそうで、スモッグが原因の交通事故も多発しているという。 ようやく無事に北京市内のホテルに到着したが、知人の話では航空便のキャンセルは日常茶飯事で、肺がんの発生率は60%近く上昇するなど、北京の大気汚染は一向に改善していないという。

 北京を訪れるのは2010年12月以来1年ぶり。 前回はそれほど気にならなかったが、知人が言うには 「 冬は北風が吹くから、日によってはそれほど悪くはならない 」 ということだった。

 ところが、今年はそれほど北風が吹かないらしく、ほぼ毎日 「 スモッグ注意報 」 状態で、視界がきかず、 「 ひどいときには200メートル先も見えない 」 というほど大気汚染は悪化している。

 この原因は冬の暖房用の石炭ストーブによる煤煙のほか、急速に増加している市内の自動車だ。 北京市政府によると、2010年には2700万トンの石炭が消費されたほか、市内の保有自動車数も2011年年末には500万台以上に膨れあがった。 2008年には350万台だったから、この3年間で30%も急増した計算だ。

 私が北京を訪問した数日前の12月5日には濃霧のため、発着便合わせて200機以上のフライトがキャンセルになり、125便に遅れが出たほどだ。

 スモッグは有害な微小粒子状物質( 直径2.5マイクロメートル以下 )を含み、大量に吸い込むとぜんそくや気管支炎を引き起こすという “危険物質” でもある。

 中国共産主義青年団の機関紙、中国青年報によると、同紙の社会調査センターなどがインターネットを使った世論調査を実施したところ、8割近くが最近自分の住む都市のスモッグが深刻と答え、69.8%が環境当局の大気測定結果と自分の感覚が合わないと回答している。 共産党系中国紙が、当局に対する市民の不信感を示す世論調査結果を掲載するのは珍しい。

 また別の報道によると、北京市五環路( 高速道路 )の外に居住する中国政法大学法学院の何兵・副院長が中国版ツイッター 「 微博 」 で、取り付けて間もないという自宅の空気洗浄器のフィルターを洗った後の水の写真を公開したところ、まるで墨汁のように真っ黒だった。

 「 空気清浄機がなかったら、真っ黒な物が全て私の肺に吸い込まれたのではないか。 北京に住むということは、まさに命がけだ 」 と何氏は書き込んでいる。

 北京市衛生局の毛羽・副局長はこのほど、北京のメディアに、2000年から2009年までの10年間で、北京市の肺がん発病率は56.35%上昇、がん患者5人のうち1人は肺がんであることを明らかにしている。

 ここで急激に売れているのがマスクだ。 スモッグがひどかった4日、北京の大手ドラッグストアでは前日の3倍以上の3万個のマスクが飛ぶように売れたという。 特に売れ筋は活性炭入りの防塵用特殊マスクで、普通のマスクは1個5元~15元( 60円~180円 )だが、このマスクは20元~35元( 240円~420円 )もするもののすでに品切れで、工場からの入庫の目処が立たない状態だ。 いかに、北京市民が大気汚染に苦しんでいるかが分かろうというものだ。

 大気汚染は所構わずなので、中国共産党の最高指導部も対策に頭を痛めていると思いきや、そうでもないらしい。 米紙 「 ニューヨーク・タイムズ 」 によると、党の最高決定機関の党中央委員会には、中国の家電販売会社から1台数千万円もする高価な空気清浄機が寄付されたという。 党指導部は大気汚染にはさらされておらず、何も心配もないようだと報じている。





( 2012.02.09 )


 中国で続いている石炭や車の排出ガスが原因とみられる “殺人大気汚染” は、日本にも影響が出始め、深刻な事態を迎えている。 大勢の死者も出ている大気汚染にまみれた中国の生活はどうなっているのか? 北京在住の30代の日本人妻Aさんが、空気のみならず水質汚染の “ダブル被害” に苦しめられる悲惨な実態を訴えた。

 「 一昨年に北京に来た当初から空気はよどんでいましたが、昨年末からひどくなった。 排出ガスのこげたようなニオイとドブの臭いが混ざっている感じで、ダンナは緑色の変なタンが出るし、周りも肺や肝機能に異変を起こして、入院。 子供たちも原因不明の体調不良に襲われている 」

 こう話すAさんは、夫の中国勤務で北京市内のマンションに在住し、幼い子供の育児に追われる専業主婦だ。 そんなAさんは、激しい頭痛に見舞われ朝を迎える。 起床後にチェックするのは、その日の大気汚染指数だ。 50を超えると長時間の屋外活動を控え、150を超えると高齢者や子供は屋外活動の中止が勧告される。 中国政府と在中国米国大使館がそれぞれ指数を発表しているが、数字に開きが出るという。

 「 中国と米国大使館の指数が50も違う時があるんです。 もちろん米国大使館の数字を信じ、中国はアテにしていません 」

 主婦業の炊事、洗濯、掃除は、大気汚染の影響で重労働を強いられるという。

 「 大気汚染と同時に水の汚れもひどくなって、蛇口をひねると茶色の水が出てくる。 最初だけでなく、時々出てくるので、とても飲めません 」

 飲料水はミネラルウオーターで、野菜も生は厳禁。 専用洗剤で漬け置きしてからでないと料理には使えない。 水が汚れているために洗濯も悪戦苦闘で 「 白物は洗濯すると逆に灰や茶色に汚れることがあるんです。 大事な服は手洗い。 1回で2度洗濯機を回すことになる 」

 もちろん外に干せるハズもなく、室内干しは北京市内では “常識” だ。 ただ、その室内も汚れてしまうから目も当てられない。 2重サッシで日本製の空気清浄機を24時間、フル稼働させているが、効果はゼロに等しい。

 「 ガスやホコリが入ってきて、床掃除は朝夕拭いても真っ黒。 ずっと黒くて、掃除が終わらない 」

 室内でも、マスクが欠かせない家庭が多いという。 汚染指数の低い日は近場の日系スーパーへ買い出しに出掛けるが “厚化粧” に時間をかける。

 「 毛穴に汚れが入らないようにベースメークを入念に塗り込むんです。 帰ってきたらメークごと汚れを落とす感じ。 目は痛くなるし、髪の毛はベトベトで、シャワーを浴びると黒い水が出ます。 この冬買った青いコートはドス黒くなりました 」

 夜の生活にも大きな影響を及ぼしているようで 「 ( 空気の汚れは )午前より午後の方がひどくなる。 夜の営み? 私はゼロ。 周りを見てもメンタル面で落ち込んでいる人が多いので、なかなか頑張ろうとはならないと思います 」。

 大気汚染は、想像以上に人々の心身を深く傷付けている。





( 2013.01.15 )


 沖縄県・尖閣諸島問題に端を発したと思われる中国の 「 戦争準備命令 」 には度肝を抜かれたが、より間近に迫っているのが “有毒ガス” 問題だ。 北京や上海など中国各都市で大量に発生し、死者が出ている亜硫酸ガスの有害成分が、偏西風に乗り黄砂に紛れ日本に降り注ぐのは、もはや避けられない状況となった。 一刻も早く手を打たないと、取り返しのつかないことになる。

 中国各地で有毒物質を含んだ濃霧が発生し、大気汚染が深刻化している問題で、北京市当局が住民に、できる限り外出を控えさせる最高レベルの 「 オレンジ警報 」 を発令したのは13日。 北京市の大気を調べる観測地点では、6段階の指数で最悪の 「 深刻な汚染 」 を記録した。

 汚染物質は中国国内だけでなく、日本どころか、太平洋を挟んだ米国にまで飛来しているという。

 中国問題に詳しいジャーナリストの南郷大氏は 「 中国の大気汚染は、実際に死者が出ている。 もはや人間が血を吐いて絶命するほど危険なレベルなんです 」 とショッキングな指摘をする。

 「 長江以北の中国の都市を移動していると、街のあちこちに大きな煙突が立っていることに気がつきます。 これは周辺の住宅や工場などに暖房用のスチームを供給するためのボイラーの煙突なのですが、こういったボイラーは例外なく石炭を燃料にしています 」

 中国の石炭産出量は、世界でもトップクラス。 都市部では例年にない寒さと生産アップのため工場などで石炭をガンガン燃やし、農村地帯でも一般家庭が煮炊きのために石炭を燃料として使っている。

 「 しかも中国産の石炭というのは、硫黄分が非常に多く含まれています。 ですからこれを燃やせば、大気中に大量の亜硫酸ガスをまき散らすことになるんです 」 と南郷氏。

 亜硫酸ガスが人間の体に良いわけがない。 これまでの蓄積もあり、中国は今や地球上で最も有毒ガスにあふれている国といえそうだ。

 「 民家や低層のビルは、レンガで造られていることが多いんです。 中国は改革開放経済の採用以来、豊かになった市民たちが競うようにしてレンガ造りの住宅を建設していますが、このレンガを焼くのにも大量の石炭を燃やしているのです。 さらには各地にある火力発電所も、燃料は石炭。 つまり中国は社会全体が、大気中に大量の亜硫酸ガスを放出するシステムと化しているのです 」( 同 )

  黄砂の飛来は近年、日本国内でも頻繁に報道されている。 毎年これからの時期、北京市民は黄砂を吸い込むのを防ぐスカーフやマスクが欠かせない。

 スカーフやマスクで自己防衛できる人間はまだ良い。 近年、韓国の牧場では放牧されている牛たちが黄砂を吸い込んで肺をやられ、もがき苦しんだ揚げ句に血を吐いて死ぬ被害が急増している。

 海を隔てているとはいえ、2~6月ごろ偏西風に乗って黄砂が飛んでくる日本にとって、中国の大気汚染は人ごとではない。





( 2013.02.07 )


 中国の “殺人汚染大気” が日本に飛来するのではないかとの懸念が広がり、深刻さを増している。 中国環境保護省は、有毒物質を含む濃霧が日本の国土の3倍以上にあたる130万平方キロメートルの広範囲に広がっていると発表。 汚染物質によって発生した濃霧のせいで高速鉄道の列車も止まった。 しかし、そんな危険な状況さえ “インチキ商売” のネタにする不届き者が続出しているという。

 大気汚染の “主犯” とされるのは、車の排ガスなどに含まれる直径2.5マイクロメートル( 1マイクロメートルは1000分の1ミリ )以下の微小粒子状物質 「 PM2.5 」。 呼吸器の奥深くまで入り込みやすいことから、人体への健康被害が懸念されている。

 PM2.5に起因する死者は昨年、8000人を数えたともいわれており、中国の “殺人大気汚染問題” は、ますます深刻化。 実業家で著名な慈善活動家の陳光標氏が、新鮮な空気の詰まった缶を売り出したほどだ。 1缶5元( 約74円 )で、新疆ウイグル自治区などのきれいな空気などが入っているとされる。

 PM2.5は、石炭や石油などの燃焼により発生する。 中国では一般家庭から火力発電所までが石炭を使用。 硫黄分が多く、燃やすことで亜硫酸ガスが発生するため、暖房が必要な冬季に汚染が深刻になる。 石油製品に含まれる硫黄の量などに関する政府規制が国際基準より緩いことも、大気汚染深刻化の要因に挙げられている。

 汚染の影響は人体だけではなかった。 高速鉄道が止まってしまった。 濃霧で見通しが利かず ―― などというフツーの理由ではない。

 先月31日には、北京と広州を結ぶ中国版新幹線が有害物質を含んだ濃霧の影響で故障し、14本が緊急停止。 列車は閃光を発した。 有害濃霧に含まれる帯電した微粒子が原因で電気系統が故障し、火花などによる強い光が発生したとみられる。

 列車を止めるほどの大気汚染をめぐっては、中国紙 「 新華新聞 」 によると、豚やカモの血を摂取すると有毒物質に抵抗力を持つことができるというデマも広がっている。

 中国のネットでは 「 大気汚染の有毒物質を吸ってしまった肺をきれいにするレシピ。 豚の血、キクラゲ、ユリ根は清肺的食品です 」 というウソ情報がバラまかれ、これらの材料を使った火鍋などが人気となり、食材がスーパーから消えた。

 大学教授や医師ら専門家が 「 ネット情報はデマです。 豚の血は肺をきれいにしません 」 と発表しても人々は信じず、買い占めパニックは拡大中だ。 ひどいケースでは屋台が襲われ、材料が奪われているともいう。

 さらに、直接大気を吸わないようにするマスクもバカ売れしている。

 実は大気汚染は10年以上前から深刻化していた。 中国事情通は 「 5年前、都市部に勤務する交通整理のおまわりさんの平均寿命が43歳と発表され、国民が仰天した。 そして約3000人のおまわりさんを病院で検査すると、9割が鼻やのどの感染症を抱えていた。 それでも、交通係はずっとマスク着用禁止だった。 ところが、2月1日になって公安部がマスク着用を許可したんです 」 と語る。

 できる限り外出を控えさせる最高レベルの 「 オレンジ警報 」 を発令したのは1月13日だったが、人々はこれまで以上にマスクを買い求めるようになった。

 「 日本製マスクが特に売れていますが、偽マスクも出回っている。 『 12層構造で微小粒子状物質 』 といいながら、実際は汚い綿を入れてあるだけとか。 捨てられたマスクをリサイクルして売るヤツまでいる 」 と同事情通。

 中国では2003年のSARS騒動、09年の新型インフルエンザ騒動時にもマスク需要が高まり、偽マスクが大量に出回った。 「 SARS騒動の時はトータルで500万個の偽マスクが当局に押収されました。 今回はその時よりマスク需要が高いので、より多くの偽マスクが出回るでしょうね 」 ( 同 )

 さすが中国というほかない。