( 2011.01.20 )

 


 中国が20日発表した2010年の国内総生産( GDP )成長率は、前年比で実質10.3%増となり、名目金額で日本を追い抜き、世界第2位になることがほぼ確実となった。
 専門家のあいだでは10%もの成長は加熱気味との指摘が多く、ソフトランディングには2011年に8%程度への減速が必要とされており、利上げペースの加速や、それに見合った人民元の調整が不可欠と見られている。 日本経済は、過熱気味ともいわれる中国という巨大市場への依存を一段と高めており、中国経済の動向次第では景気振幅を大きくするリスクをはらんでいる。




 中国の成長率は年後半に減速したとはいえ、第4・四半期に9.8%成長と、望ましいとされる8%を超える高い成長となった。 この結果、10年暦年のGDP金額は名目で日本を抜くことが確実視されている。 伊藤忠商事・主任研究員の武田淳氏によれば、中国の名目GDPは約5.9兆ドルとなり、5.5兆ドル程度にとどまったとみられる日本の水準を大きく上回ったもようだ。

 ただ、専門家からは11年に中国の経済成長は減速するとの見通しが示されている。 渡辺博史元財務官は、欧米向け輸出が今年も弱い状況が続くもとで、国内需要への財政刺激策の継続は難しくなり、その分2%程度減速すると見ている。 一方、水野温氏・前日銀審議委員は、財政刺激効果で高めの成長率となった昨年の反動、不動産投資に対する規制強化による民間投資の減速、食料品価格上昇による個人消費の抑制などから 「 成長率は若干減速する見通しであるが、引続き内需主導型で9%を超える成長率が予想される 」 とみている。

 日本経済にとって、今や中国経済の動向が景気を左右する最も大きな要因といえる。 1月のロイター調査によれば、大企業製造業のほぼ8割が、今年最も注力する販売市場は中国と答えている。 米国の景気回復も 「 実は中国向け輸出の動向に影響されている面が大きい 」 ( 政策当局者 )との見方もある。 昨年の日本経済は、円高進行下でもアジア向け輸出の数量効果で高い成長を維持したものの、今年は中国経済がある程度減速する可能性を念頭に置いて、先を見通す必要がありそうだ。




 一方、中国経済の過熱リスク蓄積を危ぶむ声も多い。 2%程度の減速がガス抜きとなり、ソフトランディングが実現できれば、バブルの発生や景気腰折れは回避できるものの、地方政府の過度な投資行動が続いていることに加え、中央政府も国家主席の交代を控え、政治的な側面から景気減速に消極的な姿勢という。

 金融面では、中国人民銀行が金融引き締めのペースを加速させ、景気過熱を抑制しソフトランディングをめざすとみられるが、現状では、預金準備率の引き上げなどに頼った不十分な対応になっている面は否めない。 「 インフレ抑制には昨年中に0.75%程度の利上げが必要だったはず 」 ( 渡辺氏 )と指摘されるように、今後、2~3回の利上げが実施される可能性がある。 武田氏も、12月のCPI上昇率はやや鈍化したとはいえ、住居費や家庭用品・サービス価格、衣料品などで需給タイト化や、賃金上昇に起因するインフレ圧力がむしろ高まっていると指摘する。

 しかし、同時に利上げに見合った人民元相場の上昇がなければ、海外からのマネーの流入は続き、国内の資金量は減少しない。 中国は19日の米中首脳会談で 「 人民元相場の弾力性を強化する 」 と表明。 「 1ドル / 6元を割るような人民元高にならないと諸問題に対応できない 」 ( 渡辺氏 )との指摘もあり、一段の人民元相場の上昇が不可欠だ。

 日本経済は1 ― 3月に踊り場を脱却して持ち直しに転じることができるかどうか、正念場を迎えているが、欧米経済が不安定な状況にあるだけに、けん引役として引き続き新興国需要に対する期待が大きい。 中国が経済規模で日本を抜いたことは、隣国の巨大市場を 「 日本経済の原動力として生かしていく 」 ( 枝野幸男官房長官 )チャンスでもある。 一方、過度の依存は巨大市場の動向に大きく振り回される危険性もはらんでいる。