( 2010.10.13 )




 こんな見出しをみて、びっくりした。米国の外交政策雑誌 「フォーリン・ポリシー」 ネット版の報道だった。 日本がなお中国への政府開発援助( ODA )の最大額を送っているというのだ。 日本の対中援助は大幅に削減されたのではなかったのか。

 この情報の出所はAP通信が9月26日に北京発で配信した 「中国は台頭を重ねるが、なお外国から援助を得る」 という見出しの長文の記事だった。 文中には 「 いまも日本からの援助は年間12億ドルに達し、ドイツ、フランス、イギリスが後に続く 」 と明記されていた。

 記事全体は世界第2の経済大国の中国が2兆5千億ドルの世界最大の外貨保有、年間1千億ドルの軍事支出を果たしながら、諸外国から年間25億ドルもの援助を得ていることに各国の納税者や議員たちが 「なぜ?」 と問うようになった、という骨子である。 その奇怪な援助の筆頭が日本だという のは、日本と中国との尖閣諸島での衝突事件をみると、ますます奇怪だという筆致なのだ。

 このAP電は数字の根拠を経済協力開発機構( OECD )発表としていたが、わが外務省発行の 「 ODA白書 」 にも2008年の対中援助総額は確かに12億ドルと記されていた。 ただし、そのうち9億1千万ドル分の有償援助は09年度には打ち切られた。 この点を無視したAP電には欠陥ありともいえるが、日本政府が09年度の対中援助額を公表していないのだから一概に誤報ともいえまい。

 しかし08年に約3億ドル( 270億円 )に達した中国への無償援助と技術協力はなお続く。 外務省では09年には前年のこの金額から減ったことは確実だという。 だが、最近の中国への援助はODAとか援助という用語を使わず、 「日中省エネ環境基金」 「日中21世紀交流」 「新日中友好21世紀委員会」 などという公的機関のプロジェクトの形で 「基金」 や 「協力」 という呼称で出されるようになってきた。 外部からでは実態がつかみにくいのだ。

 さらに日本の対中援助は2国間は減っても、アジア開発銀行経由ではむしろ拡大している。 アジアの貧しい国の経済開発が目的のこの国際機関では日本は最大の出資国であり、昨年末までに100億ドル以上を提供してきた。

 その一方、アジア開銀は中国への支援を重点政策とし総額230億ドルを供与してきた。 この供与は有償だが普通の融資より条件のよい 「 公的援助 」 である。 平たくいえば、日本の納税者の支出がアジア開銀を通じて中国への支援となっているのだ

 とくに問題なのは、中国への巨額の資金が鉄道、高速道路、空港など大型インフラ建設に投入されることである。 この種のインフラ建設こそまさに日本政府が軍事的寄与への懸念から援助を停止した対象なのだ。

 アジア開銀では日本の出資額の巨大さから日本の財務官僚が年来、主導権を握り、現在の総裁も 黒田東彦元財務官 である。 黒田氏は、最近の 「中国は覇権主義国ではない」 という発言 でも明白なように、自他ともに認める中国好き だとされる。 だが、その中国偏重援助は日本の国民や国会の審議を経てはいない。

 日本はもう中国への援助は一切、やめるべきである。 中国自身が多数の諸国に援助を与えている一事をみても、結論は明白だろう。