( 2012.11.23 )

 



 日本企業の最先端技術が中国に狙われている実態を裏付ける事件が後を絶たない。 10月には、軍事転用の恐れがある東レの炭素繊維が不正に中国に持ち出された疑惑が浮上した。 スパイ行為を包括的に取り締まる法律のない日本は 「 スパイ天国 」 と揶揄やゆされるが、手をこまねいていれば、中国は非合法に手に入れた技術で軍事や経済を発展させるだけでなく、日本発の技術をも沖縄県・尖閣諸島のように公然と所有権を主張しかねない。


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 「 かなり悪意を持ってやられた 」

 7日の決算会見で、東レの田中英造副社長は苦渋の表情を浮かべた。

 関係者によると、中国の軍事関係者が東レの最先端の炭素繊維を入手するよう大阪の商社に依頼。 この商社に依頼された静岡県内のベンチャー企業が東レの子会社に 「 水素発生装置のボディーに使う 」 と虚偽説明を行い、平成21年にサンプル約1キロを確保し、経済産業省の許可を得ないまま中国に持ち出したとされる。

 米戦闘機の機体に採用される炭素繊維は、ミサイルやロケットの複合材に使われる恐れもあるとして、外為法で輸出が厳しく規制されている。 東レによると、このベンチャー企業は実際に炭素繊維を使用するとした工場を準備する周到さ。 サンプルを渡した後に社員が行くと、跡形もなくなっていたという。 田中副社長は 「フェイクの工場は水素発生装置も準備され、よほど仕組まれていたようだ。 これほど巧妙に偽装されると今後も危ないかもしれない」 と打ち明ける。




 約10年前、中国による日本の先端技術情報の流出工作を取材したことがある。 兵庫県警が別容疑で逮捕した中国人の関係先を家宅捜索したところ、中国の政府系企業にファクス送信された中国語のメモを押収、半導体の生産時に排出される廃液の処理薬品を売り込む内容で、 「 この種の薬品は税関に申告すると面倒なことになるため、実物を手荷物として持ち込む 」 と書き込まれていたという。

 中国人民解放軍の関連企業の専用封筒も押収され、パソコンに保存されていた取引先リストにはこの企業と担当者名が記載されていた。 この中国人は神戸で在日中国人組織の幹部や経営コンサルタントの肩書を持ち、最先端技術の研究開発で知られる日本企業で中国語の講師や通訳を務めながら技術情報を狙っていたとされる

 同時に、中国人留学生や就学生を企業に紹介する事業を手がけ、情報流出工作を裏付けるように、 「 中国では文系の留学生より、先端技術を持ち帰った理系の留学生の方が優遇される 」 「 日本は軍事転用が可能な技術管理が米国ほど厳格でないため、日本で学んだ学生が成果をあげている 」 などと関係者に語っていたという。




 これら非合法の工作が関税法や外為法に触れる事件として発覚するのは氷山の一角で、水面下で日本の最先端技術を狙った活動が横行していることを浮き彫りにしている。 日本の防衛産業を標的にしたサイバー攻撃も中国がミサイルや潜水艦などの機密情報を狙った組織的犯行の可能性が濃厚とされ、日本が産業スパイの取り締まりだけでなく、防衛や外交機密の漏洩ろうえいにも無防備なことが指摘されている。

 日本の技術を狙っているのは中国だけではなく、 10月には、東京地裁で高機能鋼板の製造技術を不正に取得したとして新日本製鉄( 現・新日鉄住金 )が韓国鉄鋼最大手ポスコを訴えた訴訟が始まった。 韓国企業などは日本企業のリストラされた技術者を好待遇で雇うことで技術力を向上させたといわれる。 情報漏洩の積み重ねが、日本経済の競争力を低下させていることも考えれば、早急な対応が必要だ。