「監禁レイプ」 など恥ずべき事件の続発で強引な隠蔽工作に走る市当局の腐敗ぶり

 河南省洛陽は中国の古代王朝が都を置いた都市の1つ。 このところその歴史にふさわしくない不祥事が相次ぎ、国中の関心を集めている。
 最初に問題になったのは、市内の工場が飲食店近くの下水から回収した廃油を再処理して、食用油として販売していたこと。 9月半ばに地元テレビがこの事実をすっぱ抜き、世論に大きな衝撃を与えた。 数日後、この 「 地溝油 」 のことを中国版ツイッターの微博に書き込んだテレビ局の記者、李翔は無惨な死体となって発見された。
 同じ頃、洛陽の警察は市の質量技術監督局の職員、李浩を逮捕し、取り調べていた。 容疑は自宅地下室に性の奴隷として6人の女性を監禁し、うち2人を殺害したというものだ。
 警察によれば、李は女性たちを繰り返しレイプし、わいせつな映像を撮ってインターネットで売り、2人に売春を強要してカネを巻き上げていた。 生存者一の話では、李の要求を拒んだ2人は殺された。 遺体は地下室の床下に埋めてあった。
 警察が監禁の事実を知って李を逮捕したのは9月初旬。 「 中国文明都市 」 指定に不利になると考えたのか、市当局は地元メディアに圧力をかけて事件の報道を禁じていた。
 だが、調査報道で実績のある広東省の有力紙 「 南方都市報 」 の記者が洛陽の警官から話を聞いて記事を書き、事件は国中に知れ渡った。 洛陽の警察署長は不名誉を恥じたのか、監禁を見逃していたことを謝罪した。


中央の言論弾圧とは違う

 話はこれだけで終わらない。 事件を伝えた南方都市報の記者、紀許光も脅迫された。 2人の男がホテルの部屋に入ってきて、取材から手を引けとすごんだという。 紀によると2人は政府当局者を名乗り、おまえは 「 国家機密 」 を漏らしたのだと言って情報源を教えるよう迫った。
 身の危険を感じた紀は微博と南方都市報を通じて、この経緯を公表し、夜陰に乗じて洛陽を逃れたという。
 この一件が全国メディアに報道されている最中にも、洛陽市当局はさらなる不祥事を起こした。 北京に観光に行った洛陽市民を中央政府に告げ口をしに行った陳情者と思い込み、拉致して殴ったのだ。 中国では地方政府が中央への陳情者を拉致することは珍しくない。 だが、この事件では旅行者が誤認で暴行を受けたため、洛陽市当局は批判の嵐にさらされた。
 一連の不祥事が物語るのは、中国の地方当局のモラルの低さだ。 洛陽は人口150万人。 外国人観光客も訪れる、まずまず開けた中規模都市だ。 その洛陽でも報道の自由が平然と踏みにじられている。
 欧米のメディアは、紀記者の事件を中国政府の言論弾圧の一例のように伝えているが、それは違う。 市当局が不祥事の発覚を恐れて、手段を選ばず隠蔽工作をしたとみるべきだ。
 人民日報など全国紙と国営通信社である新華社は、洛陽で起きた一連のスキャンダルを報じている。 国家レベルの検閲で報道を規制するには、政府高官の口添えが必要だ。 不祥事に関与した洛陽の当局者には、そうした後ろ盾が付いていないようだ。
 中国の現状を理解するには、中央と地方を分けて考える必要がある。 洛陽の報道機関は露骨に圧力をかけられ、李浩の事件は逮捕後2週間も報道が禁じられていた。 だがそれは地元レベルの問題であって、南方都市報のような全国レベルのメディアは規制対象にならなかった。
 問題は地方当局の体質だ。 中国の多くの都市は、市民だけでなく中央政府に対してもまともに責任を果たせない、前時代的な当局者に牛耳られている。