( 2010.05.24 )
中国、収入格差が拡大


 人民日報( 電子版 )は、中国では収入格差が広がる一方で、その主な原因は 「 地域 」 「 戸籍 」 「 出身 」 「 企業の性質 」 などにあると指摘した。

 国営金融持株グループで部門責任者を務める趙剛ジャオ・ガンさんの年収は80万元( 約1040万円 )以上で、これに住宅手当、車両手当などの各種手当および臨時の福利を加えると、実際の年収は100万元( 約1300万円 )以上になる。

 趙さんの高校時代の友人・張さんは、地方都市にある民間の加工企業に勤務している。企業業績は好調で、年収は4万元( 約52万円 )以上あり、現地では高所得者に属する。 しかし、収入の3分の1は住宅ローンの返済に、3分の1は子供の教育費と両親の医療費に消えてしまい、生活は苦しい。

 趙さんの小学校の同級生・王さんは、暖かい時期は畑仕事や魚の養殖、冬になると出稼ぎに出るなど、1年中働き詰めで年収は約2万元( 約26万円 )。 趙さんの1週間分の収入にも満たない。

 こうした収入格差拡大の原因について、北京師範大学収入分配・貧困研究センターの李実リー・シー主任は次の4点を指摘する。
(1)地域による格差
都市部と農村地区の住民の収入格差は、1997年に2.6:1だったものが、今年は3.33:1に拡大している。
(2)独占企業と一般企業との格差
電力、電信、金融、保険、たばこなど、独占企業の従業員の平均収入はその他の業界の2~3倍に達している。 加えて住宅手当などその他の収入や福利待遇を加味すると、実質的な差は5~10倍になる。
(3)権利独占による正規収入以外の “灰色収入” の存在
資本、土地、天然資源などに関する権限は、政府各部門が握っているため、市場原理が働きにくく、また制度に未整備なものが多く、価格などに対してバイアスがかかりやすい。 こうした隙をついて関連部門がグレーな収入を得ている。
(4)所得や福利が少人数に集中している
中央政府各管理委員会が管理する国有企業の08年の1人当たりの福利費支出額は3387元( 約4万4031円 )だったが、うち最高は4万4600元( 約57万9800円 )、最低は149元( 約2000円 )と300倍近い差が生じていた。
 これ以外に、都市の戸籍を得るための代行手続き料や、国有企業に入社するための 「 口利き料 」 などとして、数万~数十万元( 数十万~数百万円 )の賄賂が必要となったり、政府幹部や国有企業幹部が子供を優先的に入社させるなどのニュースは各地で後を絶たない。

 李主任は 「 富める者はさらに富み、貧する者は永遠に貧しい 」 と現状を評している。






   

  

 経済成長著しい中国で発展から取り残された農民らによる 「 反乱 」 の発生が10月以降、相次いで伝えられている。 土地収用をめぐる地方政府への不満などをきっかけに当局や警官隊と衝突、死傷者が出るなど事態は尾を引いている。 背景には根深い役人の腐敗や一向に縮まらない貧富の格差への反発が横たわり、発展の陰で広がる社会不安が顕在化しつつある。

 香港紙の報道などによると、 「 反乱 」 は主に内陸の農村部で発生。 四川省では水力発電所、陝西省では経済開発区建設をめぐり、それぞれ立ち退きなどに不満を持つ農民多数が現場を取り囲むなどして警官隊と衝突、農民側に死者が出た。

 重慶市では役人の特権に反発する住民1万人以上が地方政府庁舎を取り囲んだほか、安徽省では年金に不満を持つ数千人が幹線道路を封鎖。 広東省では橋の通行料徴収をめぐって数万人が暴動、河南省では漢族とイスラム教の回族が衝突、7人が死亡したとされる。

 胡錦濤政権は農民保護を重点施策に掲げているが、地方では農民から安値で土地を買い上げ、転売して収益を上げる強制的な収用、乱開発などが横行。 中国誌によると、土地収用に絡む苦情の訴えは今年上半期だけで4千件以上にのぼる。 都市と農村では所得格差がなお3倍以上、地方では役所が種々の名目で手数料を徴収する 「 乱収費 」 が後を絶たない状態だ。




 1978年に始まった中国の開放・改革路線。 それ以来、都市部と農村部の経済格差は劇的に開き、今や2002年の統計で、都市住民は平均年収入は7703元( 約11万5500円 )。 一方の農村部は2467元( 約3万7千円 )。 実に3倍の格差となっている。

 貧しい農村では就業機会も無い。 中国政府の発表によれば、農村から近隣及び遠隔地への出稼ぎ人口は1億2千万人。 このうち省の境を越えて移動する遠征組は4千万人に達する。 要するに、これが農村部の失業人口というわけ。

 もともと革命後の中国では農村は人民公社方式による全員就業が基本だった。 厳しい住民登録( 戸籍 )制度があり、当局の許可なしに農民が都市に住むことを禁止されており、 「 流動人口 」 なる概念が存在しなかった。

 それが1982年、憲法改正によって人民公社制度が廃止。 ここから中国農村は弱肉強食の市場経済に呑まれていく。 開放路線当初は農村を起点とした郷鎮企業の振興で農村も潤うと期待されたが、市場経済の現実はそんなに甘くない。 優秀な企業は残り、劣る企業はつぶれる。 多くの郷鎮企業はあっという間に淘汰されてしまった。 残ったのは過剰労働力。 そして 「 民工 」 と呼ばれる出稼ぎ人口の大移動である。

 歴史をひもとけば、たいていの歴代中国王朝は、失政と飢餓とそれに伴う流民で滅んでいった。 流民団の首領が次の王朝の始祖となる。 このパターンの繰り返し。

 かつての中国の人民公社方式を手放しで礼賛する気など無いが、この構想の根には、農村問題が中国の死活を制するという発想があったと思う。




 中国農村の激変を促したものは、改革開放路線による人民公社の解体と、1980年代から始められた村民委員会主任の選挙。 村民委員会主任、要するに村長のこと。 村民が投票で村長を選ぶ。

 これを中国政府は 「 中国における基層民主主義 」 と宣伝し、世界に向けてアピールしている。 その 「 民主化 」 についてあれこれ論じる気は無いけど、中国政府の発想として、古来からの 「 村落の自治 」、 「 王権は村落の垣根を越えず 」 などの歴史的なパターンに従ったものだろう。

 ただ、この村民委員会選挙により、共産党の地方に対するコントロールは弱体化した。 選挙制度開始直後は、選ばれるのは村落の共産党幹部がほとんどだったが、最近では一割に満たないという。 では、誰が当選するのか?

 中国農村では 「 宗族 」 が復活しつつある。 宗族とは、有力な家族・家系を軸とした土俗的な血縁集団。 選挙も 「 ~家 」 と 「 ~家 」、宗族と宗族の争いと化しつつある。

 現実問題として村の村民委員は、有力な宗族出身の人間が当選した方が丸く収まる。 弱小の家の者だと村中が言うことを聞かないという。

 宗族の内部は家父長的なピラミッド構造で、 「 族長 」 と呼ばれる長老を頂点とし、 「 族規家法 」 という、家族内の秩序や資産管理を定めた規則を持っている。 これは一種の私法であり、私的制裁法であり、この規則に従って山林の伐採権から治安に至るまで、宗族内のルールと罰則を定めている。

 これら宗族同士が利権を巡って相争うこともあり、これを 「 械斗シエトウ 」 と呼ぶ。 これら械斗は中国各地で発生している。 たとえば1990年から96年にかけて、江西省で発生した械斗は実に1392件とのこと。

 大規模なものは1991年5月に広東省遂渓県で起こった械斗。 揚家 vs. 王家の争いで、6千人が7日間に渡って戦った。 双方は手製の小銃の他に、近隣の民兵工場から奪った高射機関銃を使って、相手の村を掃射するという内戦まがいの争いだった。 結局、人民武装警察に鎮圧されるまでこの争いは続いたとのこと。

 宗族の復活は共産党のコントロールの低下をもたらす。 宗族は血縁による利益共同体。 内部の人間は国法よりも共産党よりも宗族の私的ルールを優先する。

 彼らが共産党を押しのけて村の実権を握る現象が中国各地で見られるという。 これを 「 村覇ツンパー 」 と呼ぶとのこと。

 あれこれと書いてきましたが、総じて言えるのは 「 中国の先祖返り 」 ですな。

 かつて毛沢東は、 「 農民を縛る4本の大きな縄 」 として、

  政権
  族権( 宗族の族長支配 )
  神権( 宗教や迷信による支配 )
  夫権( 男尊女卑 )
 この4つを挙げた。

 このうち、族権は息を吹き返し、共産主義理念の後退により宗教は勢力を拡張しつつある。 また、農村における女性蔑視の風潮は根深い。
 これに上記の 「 農村の過剰人口と人口移動 」 を付け加えてみれば、なんのことはない、過去の歴史の再現ではないか。
 そう、中国は昔に戻りつつある。






 




 

 香港紙、明報によると、中国共産党中央宣伝部は、同国各地で相次いでいる地元当局と住民の衝突や抗議活動、ストライキなどが拡大することを警戒し、各メディアが独自に報じることを禁止する通知を出した。
 同紙によると、通知は 各地のメディア管理部門に向けて出され、四川省や河南省、重慶などで起きた最近の事件を 「 悪性衝突事件 」 と位置付け、勝手に報道することを禁止。事件を伝える場合は国営通信社、新華社の原稿を用いることとし、違反した場合は厳しく処分するという。
( 共同通信 )
   





四川省の農民抗議 水力発電所建設工事を中断へ
河南の民族衝突、28人死亡 実態隠しで現場封鎖
重慶市で騒乱、警官が鎮圧 胡錦濤政権に打撃
特に10月27日に四川省漢源県で起こった農民暴動は、世界中に報道された。




 中国国内はもちろん、外国でもあまり報道されなかったが、04年に四川省漢源県で10万人規模の農民暴動が起き、四川省トップである党書記が農民たちの人質にされるという事件が発生した。

 暴動のきっかけは、漢源県の発電所建設計画のため、農民たちが立ち退きを迫られたことにあった。 立ち退き補償金は農民を満足させる額ではなかったため、一気に不満が爆発した。 さらに、補償金の一部を腐敗幹部が横領していたこともわかり、10万人規模の暴動に発展したのである。

 事態打開のため、張学忠・省党書記が自ら現場に駆けつけ、説得調停に乗り出した。 しかし説得に失敗し、張書記の身柄は農民たちに拘束された。

 中央政府は急遽、汪洋・国務院副秘書長( 当時、現広東省書記 )をトップとする中央工作組( 特別チーム )を現場に送り、処理を命じた。 中央工作組は発電所建設を一旦中止し、腐敗幹部3人の即免職、補償金の引き上げなど、農民たちの要請をある程度満足させ、その結果、暴動は沈静化された。

 農民が地方政府トップを人質に取るという事件は新中国樹立後初の出来事であり、中国政府に大きな衝撃を与えた。 そして、農民たちがどれだけ追い詰められているかを浮き彫りにしたのである。

 四川省のケースは決して例外でない。 いま、中国各地の農村部には暴動の火種がくすぶっている。 05年だけでも暴動や抗議行動は8万7000件にのぼった。 将来、何らかの問題が起こり、政府の対応があまりにも農民を無視したようなものになれば、一触即発の恐れもある。

 ただし、いますぐに国家を転覆させるような大規模の農民暴動が発生する可能性は極めて低いとみるべきだ。 全国的にみれば、農民たちはまだ絶望的な状況にまで陥っていない。 都市部住民に比べて収入の上がるスピードは遅く、格差は広がるばかりだが、急速な経済発展に伴い、彼らの収入も上がってきている。

 不満を感じている農民がいるのは事実だが、豊かになったと感じている農民たちも実際には多いのだ。 農民工( 出稼ぎ単純労働者 )として都市部に出れば、確実に収入は増える。 働きが認められれば正規労働者として雇用されるチャンスもある。 働きながらお金を貯め、才能がある人たちは自らビジネスを起こして個人経営者になるという望みもあるのだ。 希望がある限り、農民たちは暴動を起こすより、豊かな生活を目指して働くほうを選択する。

 日本の農協のような全国的な農業組織が、中国にはないことも全国規模の暴動が起きにくい状況を生んでいる。 中国の農村は横のつながりをもたず、分断されているのだ。 こうした事情からも、全国的な同時暴動がいますぐに起きる可能性は低いと考えられる。


 17名以上の農民の死者と40名の逮捕者がでた四川省漢源暴動は、11月8日に中央から二人の幹部、( 公安部副部長の田期玉、国務院副秘書長の王洋 )が省都の成都へ飛び、四川省の党、公安、軍、人民武装警察、警察、行政の責任者および周辺の地方政府幹部およそ数百名があつまって、緊急対策会議を開催した。

 一方、農民暴動の現場は道路が封鎖され、軍関係の車両300両が待機、一人一人の農民からID提示の検問をしている。 農民を封じ込め、補償金嵩上げ交渉をおこなう情勢という。

 大渡河ダム現場までに1万以上の軍隊が待機しているうえ、四川省および中国全土の全マスコミに対して、漢源でおきた暴動を報じないように箝口令が敷かれた。

 四川省の緊急会議では 「 農民への賠償金の積み上げ 」 および 「 暴乱 」 という解釈を突如変更して 「 緊急事件 」 と命名したとする情報などが9日深夜現在も錯綜している。



 さて、今度は広東省で暴動が発生した。
橋の通行料不公平めぐり放火 中国広東省掲陽市

 中国広東省掲陽市の榕華大橋料金所で10日夜、料金所員が不公平な通行料請求に不満の声を上げた地元婦人を殴打し、それに腹を立てた住民らが料金所にガソリンをまいて放火、駆け付けた消防車が住民を圧死させて騒ぎが拡大し、地元公安当局は武装警察隊を投入して鎮圧した。

 同事件で住民1人が死亡、1人が負傷し、消防隊も7人が負傷。騒ぎを起こした少なくとも5人が公安当局に拘束された。

 12日付の地元紙 「 掲陽日報 」 などによると、事件が発生したのは10日午後9時半( 日本時間同10時半 )ごろで、消防車がゆっくりしたスピードで住民2人をひき始め、そのうち1人を圧死させた のは地元公安当局が騒ぎを鎮圧する行動に入ったことが原因。 香港紙 「 明報 」 によると、同事件を周囲で見ていた住民は2万人から3万人に上ったとしている。

 地元住民は数年来、同大橋で強制的に通行料を取られていることに強い不満を抱いており、料金所の竹かごに料金を投げ入れるよう指示され、領収書すら発行しない不透明な徴収方法について、たびたび地元政府に抗議していた。
 バイク1台で橋を通過する場合、片道2元(1元=13円)、往復4元を強制徴収。 地元政府の規定に従い、10月になって一旦は徴収を廃止したが、11月に入って再び徴収を再開していた。

 事件は地元婦人1人が橋の通行料徴収に不満を主張して料金所員と言い合いになり、料金所員が婦人を殴打したことが地元住民らに伝わると、約1千人の地元住民がガソリンを料金所や料金所の車輌にまいて放火。
 通行料徴収ですか! これも凄いニュースですね。
 実際に中国ではこの種の関所まがいの有料道路が多く建設され、地元政府の収入や、共産党有力者の裏金に変わっているとのこと。
 地方閥・私閥が跋扈する中国。 国法の統制もなかなか地方には行き届かず、半ば独立国と化した地方ではこの種の腐敗が平然と起きる。
 東シナ海や南シナ海で対外的拡張を続ける中国だけど、このように、内部は一皮むけば、統治の腐敗と失策で不満が鬱積し、暴動が多発している。
 まあ、かの国が反日と国威発揚に走るのも、国民の不満そらしが原因の一つ。 そしてマルクス主義という統治理念を無くした中国共産党が、依って立つ新たな理念が「富国強兵」。
 内にこの種の事情を抱えてる限り、中国は対外的に強攻策を取らざるを得ないでしょう。 それは東シナ海においては日本と、朝鮮半島においては韓国と、南シナ海においてはASEAN諸国と、各地で摩擦の火花を生じさせるでしょう。