( 2011 )
脱・中国依存

すでに欧米メーカーだけでなく、中国企業も東南アジアに工場場移転
雇用を支えているのは日本企業
  横暴、タカリが続くなら中国から工場を引き揚げろ


 日本企業が出資する中国現地法人は約5000社近く。 これらの企業は今回の尖閣諸島のような問題が起こるたびに、反日運動などの中国リスクに脅えてきた。 ならば、いっそのこと出ていったらどうか。 もう、この国には安い人件費のメリットも失われつつあるのだから。


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 これまで日本企業は中国に進出した際、国営企業に勤めていた人々を雇って工場を立ち上げてきた。 夜中に製品を盗み出す従業員がいれば、倉庫に鍵をかけて警備員を配置した工場内で立ち小便をしてしまう人がいれば、教育してやめさせた。 ようやく生産が軌道に乗ったと思ったら、従業員がどんどん独立して、同じ工場を建てて、同じ製品を作り始めるのである。 たとえ特許を取っていようがお構いなし。
 ある日系食品会社は山東省に工場を建て、高齢者向けに骨を抜いた魚の加工食品を製造しているが、現在ではすぐ隣に、まったく同じ加工食品を製造する中国企業の工場が建っている。
 中国がWTOに加盟する前までは、外資の出資比率は50%以下に制限され( 今も自動車など重点産業は上限50%に制限 )、必ず中国企業と合弁を組む必要があった。 しかも日本人社長と中国人社長は、給与も待遇もまったく同じにするのが条件で、無能な共産党幹部が派遣され、会社で遊んでいるだけで日本人社長と同額の給料をもらうという面妖な事態も発生した。
 中央政府や地方政府の朝令暮改も日常茶飯事である。
 王子製紙は03年から江蘇省南通市に約2200億円を投じて製紙工場を建設する計画だったが、04年に突如として認可手続きが変更され、中央政府の認可が必要になった。 しかも単独出資が認められなくなり、中国企業との合弁を強要されたのだ。 結局、工場の建設開始は07年11月までずれ込み、今年末にようやく1号機が完成する予定だが、既に日本の紙の需要は低迷し切っていたというオチである。
 中国では、 「 3年間は免税 」 という約束で工場を誘致しながら、いざ操業が始まると地域の共産党が 「 道路整備費 」 「 水道整備協力費 」 などといった新たな名目を次々に作り、外資系企業にたかるのが普通である。 広東省の東莞市にある日系の部品メーカーは、突然 「 身障者雇用義務違反 」 容疑で摘発され、数百万円の。 罰金々をむしり取られた。 周辺にこの法を守っている企業はいないのに、日系企業だけが狙い撃ちされたのである。
 ひどい例になると、中国人経営者が警察当局と組んで犯罪をデッチ上げて外国人の共同社長を逮捕・拘留し、会社を乗っ取ったケースも多々ある。 誘致しておいて、いざ会社が軌道に乗ると、原料を税関で差し止めたり、突然税務調査をしたり、嫌がらせを繰り返して外国人を追い出そうとするのである。
 




 中国では今年、広東省を中心にストライキの嵐が吹き荒れた。 ホンダやデンソー、ブラザーエ業などの工場は操業を停止する事態になり、ホンダは平均24%の賃上げ要求をのんだ。 今年5月中旬からの2か月間で、ストが発生した外資系企業は40社以上にのぼり、その内7割以上が日系企業だった。
 日系企業の賃金は他国の外資系企業より安いのかというと、むしろ逆で、賃金も待遇も上である。 日系企業はゴネればすぐに折れるので狙い撃ちされているだけだが、日系企業が賃金を上げれば、いずれ他の外資系もその余波で上げざるをえなくなる。
 昨年まで広東省では平均賃金が月額約790元( 約1万円 )だったが、今年は100O元( 約1万3000円 )を超えた。 人件費の上昇で、中国に工場を建てるメリットは薄れてきている。
 これまで多くの日本企業が中国市場の巨大さと人件費の安さに目が眩んで続々と中国に進出した。 日本のような民主主義の国家で、民間企業に対して強制的に撤退を命じることは不可能だ。 しかし、徐々に“中国リスク”の大きさに気づき、現実には日本企業自身が撤退の意思を示しつつある。
 たとえば、ユニクロのファーストリテイリングは、人件費の高騰からすでに製造の一部をバングラデシュに移し、今後は製造の3分の1を中国以外へ移転させる計画だ。 すでに欧米のアパレル企業は続々とバングラデシュに進出しており、日本企業もそれに続けとばかりに“バングラ詣で”に繰り出している。 繊維産業だけでなく、他の産業でも脱中国の動きが起きており、新たな製造拠点としてベトナムやインドも人気である。
 知人のIT機器メーカー経営者は 「 もう十分儲けたから、そろそろ撤退する 」 と言っていた。 なにしろ中国企業までもが中国の沿海部から逃げ出して東南アジアに続々と工場を進出させているのだ。 労働集約的な川下産業は、安価な労働力を求めて世界中をさまようのが宿命である。
 トヨタやホンダが中国から撤退しようとすれば、経済的な宣戦布告行為に等しいので、かなり難しいが、その下流には部品メーカーやタイヤ、ガラスなど非常に広範な裾野が広がっているのは事実である。
  退




 すでに外資系企業からは必要な技術を吸い取ったから、もう外資はいらないと考えているとしたら、それも甘いと言わざるをえない。
 中国は09年の粗鋼生産量が5億6800万tで世界一になったが、製造できるのは付加価値の低い単純な製品だけで、ようやく最近になって橋梁に使える高性能なL形鋼やT形鋼、H形鋼を製造できるようになったばかりである。
 高付加価値な自動車用鋼板を製造できるのは、日本と韓国、ドイツだけで中国に技術はなかった。 新日鍼は上海の宝山鋼鉄と合弁で設立した宝鋼集団に3年ほど前から100名単位の技術者を送り込み、自動車用鋼板の技術指導にあたっている。
 中国共産党は、自動車産業を産業育成の核と位置づけているが、もし新日鍼が技術者をすべて引き揚げたら、中国はお手上げだろう。 「 日本での研修 」 と称して帰国させ、そのまま再び中国へ帰さなければいい。
 





( 2011.10.24 )

 


 

 中国で7月に施行された 「社会保険法」 をめぐって、中国にオフィスや工場を置く数万社の日系企業が頭を抱えている。 規則の細部があいまいな上、大幅な負担増に直結するためで、 「これでは中国から撤退せざるを得ない」 との悲鳴もあがっている。




 今月15日、同法に基づき外国人就労者に社会保険への加入を義務付ける暫定規則が公布された。 だが、地方ごとに定める保険料率などの細則は北京市など一部の都市を除き、大半の自治体では検討中のままで、発表のめどすら立っていない。

 「 納付はいつからか、どの程度のコスト増になるのか。 加入すべき対象範囲や保険料率の基数などが決まらないと、本社に報告もできない 」 ( 日系メーカー上海法人社長 )

 上海に派遣された日本人駐在員の場合、会社負担分と個人負担分を合わせ、社会保険料は最高で月7万円近く、年間約82万円との試算もある。 一方で、遼寧省大連市では、会社負担分について上限を撤廃する独自の規則を出し、さらなる混乱を招いている。

 新法では、医療保険などが日本との二重払いになる。 にもかかわらず、外国人が中国で保険の適用を受けられるチャンスはかなり限られる。

 日本政府は今月、中国側と二重払いを防ぐ社会保障協定の締結交渉を始め、発効まで加入を猶予する経過措置を中国側に求めるなど対応に乗り出した。

 ただ、日中協定締結と実施までには早くとも3年はかかるとみられる。 不透明な制度の上で当分の間、企業と駐在員は翻弄されることになる。




 「 就業外国人社会保険加入暫定規則 」 によると、加入が義務づけられるのは、中国で外国人就業証、外国専門家証、外国常駐記者証、外国人永住居留証を得て就業している外国人。

 加入する必要があるのは、中国で 「 5険 」 と呼ばれる (1)養老 (2)医療 (3)失業 (4)生育 (5)労災 ―― の5つの保険。 雇用主にはこれらの5険すべてに企業負担分が課せられ、就業する外国人にも養老や医療、失業の3つの保険で自己負担分の納付義務が生じる。

 しかし、首をかしげるような内容もある。 このうち、いわゆる退職後の年金となる 「 養老保険 」 は、数年間の駐在期間を経て帰国する外国人にとって、原則として掛け捨てだ。

 「 医療保険 」 は、中国人向けの地場病院では適用が可能だが、英語や日本語が通じる外国人向け病院は対象外。 「 失業保険 」 にいたっては、もし失業すれば同時に駐在員は中国での滞在資格を失うことになり、受給のチャンスは皆無だ。

 現地採用の外国人は明らかに加入義務が生じるが、就業証を得ずに長期出張ベースで中国で業務を行っている人も含むかどうか、線引きもあいまいだ。 日本に限らず、中国とすでに二重払い防止の社会保障協定を結んでいるドイツと韓国以外の国も情報の収集に追われている。


退

 保険料算定の基数として、原則は省や市など地域ごとに月額平均賃金の3倍を上限としている。 このため、仮に日本円で月額40万円の給与を受け取っている人も、平均賃金が3896元( 約4万7000円 )の上海市のケースでは、その3倍の約14万1000円が基数の上限になる。

 保険料率は、5つの保険を合わせて会社負担が37%( 約5万2000円 )、3つの保険で個人負担が11%( 約1万6000円 )で、約6万8000円の負担増になる。 上海に10人の日本人駐在員を派遣している企業の場合、個人負担分も含め、見返りの得られぬ保険料を年間820万円近くも当局に吸い上げられることになる。

 大連市の場合、会社負担分の基数に上限を設けないとしており、給与が40万円なら、会社負担は約14万8000円にハネ上がる計算だ。

 対中ビジネスはここ数年、優遇税制措置の撤廃や労働者の不足、労働賃金の急騰など投資環境の激変が続いている。 分かりにくく不透明な印象も残る制度に振り回されて、さらに大幅なコストアップを強制的にのまされることになるのか。

 「中国からの日系企業の撤退原因になり得る」 ( 日中関係筋 )との厳しい見方も出始めている。





( 2015.05.16 )




日立が開発したレアアースを使わない産業用モーター。
中国のレアアースに依存しない日本の経済界の動きもあって、
中国レアアース業界は赤字転落した。
 2010年9月に尖閣諸島( 沖縄県石垣市 )沖で起きた中国漁船衝突事件とその後の日中摩擦を受け、中国が制裁措置として事実上の対日輸出規制を行ったレアアース( 希土類 )。 ハイブリッド車( HV )のモーターなどハイテク製品に欠かせない素材だが、日本は欧米とも共同歩調を取って追い込んだ結果、不当な措置をとり続けた中国は5月1日に最終的に白旗を掲げた。




 中国国務院( 政府 )関税税則委員会はレアアースの輸出税を同日付で撤廃することを決めたからだ。 中国は世界最大のレアアース輸出国だが、輸出に15~25%の関税を適用するなど、規制をかけていた。 日米欧が共同で提訴した中国を調査した世界貿易機関( WTO )が昨年、レアアース輸出規制をルール違反と最終判断。 中国は今年1月、すでに輸出枠の撤廃に追い込まれていた。

 中国漁船が日本の海保の船舶に意図的とみられる動きで衝突した事件にもかかわらず、日本側に非があるとして対日感情を急激に悪化させた。 最高指導者だった鄧小平氏がかつて 「 中東に石油あり、中国にレアアースあり 」 と述べ、外交ツールと位置づけてきたレアアースの禁輸で、制裁に乗り出そうとしたようだ。

 世界の需要の90%以上を出荷していた中国は、制裁措置に音を上げた日本の経済界が政界に圧力をかけることをもくろんでいた。 同時に欧米市場向けも “売り惜しみ” で輸出を滞らせて値をつり上げるなど、姑息こそくともいえる戦術に出た。

 確かに安価な中国産レアアースに頼り切っていた日本の経済界だったが、危機感を募らせた結果、漁船衝突事件をきっかけに対中依存度を引き下げようと日本企業は、レアアースを使わない製品やレアアースのリサイクル技術を続々と開発した。 この結果、中国の対日レアアース輸出量は11年に前年比34%減となり、その後も大幅減少が続いている。 日本企業は 「 やればできる 」 ことを証明。 オーストラリアなどからのレアアース供給も本格化し、中国産の需要は減っている。




 こうした中で中国産レアアースの価格が数十%も下落した。 国内の過剰生産と過剰在庫がダブル、トリプルパンチとなって中国のレアアース業界は疲弊。 中国紙、21世紀経済報道によると、輸出減少や価格下落などを背景に、中国のレアアースは14年、業界全体として初めて赤字に転落した。 業界団体の中国稀土行業協会の陳占恒副秘書長が、重点企業18社を対象に行った調査結果として明らかにした。

 これら18社の利益合計は11年以降、年ごとに減少。 13年の合計利益はそれでも31億元( 約605億円 )だったが、14年は赤字転落したという。 赤字幅は明らかにしていないが、14年の売上高合計は前年比21%減の260億万元に止まった。

 中国当局は14年からレアアースの資源管理を強化して国際競争力を再びつけるとして、業界の再編を加速させている。 レアアース業界は最終的に北方稀土、5鉱集団、中国アルミ、カン州稀土、広晟有色金属、厦門●業( ●は金へんに烏 )の6大企業グループに統合される見通しだ。

 過剰在庫も足かせだ。 山西省の大手ネオジム磁石メーカーの場合、工場の稼働率はピーク時の6割減という。 日本の業界関係者によると、中国のレアアース業者は 「 日本企業にもっとレアアースを調達してもらいたい 」 などと取引拡大を懇願してきているという。




 拳を振り上げて制裁しようと意気込んだものの、 逆に国内のレアアース業界がガタガタになってしまった中国。 中国がチラつかせる外交の切り札にどう対処すべきか。 日本はこのレアアース問題でいい経験も積んだ。 だが白旗を挙げたように見せかけて、 次なる攻撃材料を用意しているのが中国の常。 油断は禁物だ。