簿


2006.12.15 )

 
  



 2006年8月2日夜、浙江省台州市衛生監督所は、温嶺市新河鎮塘下村にある 「繁昌油脂廠」 を急襲して立ち入り検査 を行った。 衛生監督所の執行官たちは、工場に足を踏み入れると同時に強烈な腐敗臭に襲われた。 原料油工場は特にひどく、その臭さは並大抵のものではなかった。 油脂が腐敗した後の居たたまれない悪臭が工場全体に濃厚に漂っていた。 執行官たちは工場の検査と同時進行で同廠の経営者である應富明に事情聴取を行った後、同廠の製品である食用ラード5300キロ、原料油3万7600キロ(ドラム缶で264本)、ヤシ油1800キロ、原料油の輸送用トラックなどを押収した。

 繁昌油脂廠は豚油加工企業で、2005年9月20日に営業許可証と食品衛生許可証を取得、試生産を経て、2006年4月から正式に 「 食用ラード 」 の生産を開始した。 日産能力は6トンであったが、最高日産量は10トンを超え、台州地区では唯一の、浙江省でも比較的規模の大きな豚油加工企業であった。 繁昌油脂廠が試生産から立ち入り検査までの約10ヶ月間に生産した食用ラードは100トン以上で、これは上海、杭州、温州などの各地から購入した原料油が170トン前後であったことからも裏づけられた。

下水溝に溜まった油を原料として食用ラード

 繁昌油脂廠の立ち入り検査は、台州市衛生監督所が 「下水溝に溜まった油を原料として食用ラードを生産している」 という通報を受けたことに端を発した。 衛生監督所の執行官たちは繁昌油脂廠に対する調査を徹底的に展開、台州市の地質監督部門が先ごろ同廠を検査した際に、ラードの包装缶にマークが入っていないことを発見し、関連規則違反として生産の一時停止命令を出していたことが判明した。 ところが、通報者からの情報で、生産一時停止命令を受けた繁昌油脂廠は、操業時間を夜間に切り替え、監督部門が退勤してから早朝まで操業し、昼間は生産停止を装っていることも判明した。

製造中の危ない食用ラード

 執行官たちは、繁昌油脂廠の監視と製品の追跡という両面作戦の実施を決定、一方は油脂廠の動静を探り、他方は市場から製品品質と流通を探ることとした。 執行官たちは台州市椒江区で販売店を探り出し、繁昌油脂廠の製品20数缶を発見した。 販売店主によれば、應富明が品質は100%合格品だと保証したので、数ヶ月前から繁昌油脂製品を購入しているが、値段が他社製品と比べて半分以下であるという。 そこで、執行官は製品のサンプルを台州市疾病予防センターへ送って分析を依頼し、食用ラードの酸価値( 油の酸化の指標 )が1グラム当たり17ミリグラムを超えている ことが判明した。

 これは、国家基準である 「食用動物性油脂衛生標準」 で要求されている1.5ミリグラム以下の11倍もの数値であり、食中毒のみならず、遺伝子に影響を与える危険性すら想定された。 そこで、別の販売店2ヵ所から採取したサンプルを浙江省疾病予防センターへ送り、高精度の分析を依頼した。 この結果は驚くべきもので、サンプルからは何と劇毒の農薬である 「666」 と 「DDT」 が、1キロ当たり0.027~0.088ミリグラム検出された のであった。





2010.03.20 )

 


 17日、医学博士の苑嗣文ファン・スーウェン氏はブログ記事 「リサイクル食用油と腫瘍」 を発表。 残飯や廃油から作るリサイクル食用油が年300万トンも消費されている というニュースに怒りを露わにした。 写真は03年11月、福建省福州市で摘発されたリサイクル食用油の加工場。

 2010年3月17日、医学博士で山東省政治協商会議委員の苑嗣文氏は中国のブログサイト・新浪博客に記事 「 地溝油と腫瘍 」 を掲載した。 国営ラジオ放送サイト・中国広播網が報じた 「中国人は下水道の汚水から作られたリサイクル食用油( 地溝油 )を年間300万トンも食べている」 との衝撃的なニュースについて論じている。 以下はその抄訳。
 リサイクル食用油のニュースは全ての中国人の怒りと驚きを招いた。 われわれは豊かになった。 しかし病気、特にがん患者はその数を増している。 リサイクル食用油は高温で精製されるために細菌やウイルスの心配はないかもしれない。 しかしその中にはヒ素の百倍も毒性が高く、地上最強の発がん性物質とも呼ばれるアフラトキシンが含まれているのだ。 なるべく外食は避けること。 特に揚げ物や水煮魚( 油で川魚を煮る料理 )はリサイクル食用油が使われることが多い料理だ。

 なぜリサイクル食用油が作られるのか。 それには中国人の飲食習慣が関係している。 食べきれないほどの料理を出すのがおもてなしという文化があり、客も料理を食べきっては失礼にあたる。 特に接待ではこうした問題は驚くほど深刻だ。 こうして余った食料からリサイクル食用油は作られている。 昔は 「 金持ちは余った肉を腐らせ、道には餓死者がいる 」 世界だったが、科学技術が発達した今では、腐った肉はハムとなり、リサイクル食用油となっている。

 また、この問題の背景には中国人が拝金主義になったことがある。 金が全て。 そのほかは、正否も信仰もなければ、美醜も善悪もない。 こんな民族は本当に恐ろしい。 社会的責任が全くないのだから。 「 人にやられたくないことは、人にしてはならない 」 というが、今や農薬漬けの野菜を作り、リサイクル食用油を使った食品を売り、メラミン入りの粉ミルクを作るようになった。 自分では食べられなくても人に売ればいいという考えだ。




2010.03.24 )


 


 23日、 「中国では汚水を原材料にしたリサイクル食用油が食べられている」 というニュースに寄せられた日本人の厳しいコメントに、ネット上では多くの中国人が 「そう思う」 と共感している。 写真は04年11月、江蘇省蘇州市で摘発されたリサイクル食用油製造拠点。

 2010年3月23日、 「中国人は下水道を流れる汚水や生ゴミを原材料にしたリサイクル食用油( 地溝油 )を年間300万トンも食べている」 という衝撃的ニュースは日本でも大々的に報道された。 このニュースに関して日本人ユーザーは 「中国人の生存力はゴキブリ並み」 とネット上で痛烈に批判。 中国のニュースサイト・環球網が実施した調査によると、中国人ユーザーの多くはこうした日本人の反応を 「もっともだ」 と考えていることがわかった。

 リサイクル食用油のニュースが日本でも報道されると、 「もし核戦争が起こったら、この地球上で生き残れるのはゴキブリと中国人だけ」 といった痛烈なコメントが殺到。 「中国食品を輸入するな」 という過激なものまで寄せられた。

 こうした日本人の反応について環球網が23日午前11時までに実施したネット調査によると、69.2%のユーザーが 「日本人の非難は理解できる」 と回答。 「日本人のコメントは確かに痛烈。 だが真実をとらえている」 「スーダンレッド( 発がん性着色料 )にメラミン( 毒ミルク事件 )、そしてリサイクル食用油! ゴキブリより我々のほうが断然強いぞ!」 という意見もあり、 「今回ばかりは日本人のコメントに反論する気にならない。 彼らの言うことは間違っていないからだ」 と認めた形に。

 さらに81.9%の中国人ユーザーが 「中国は食の安全性に問題があり不安だ」 と感じており、 「 当局の安全管理体制に問題がある 」 との日本人の指摘や 「 汚水や生ごみをバイオ燃料にリサイクルしてはどうか? 」 という日本人の提案も 「 当局は真剣に取り組むべきだ 」 としている。





2011.09.08 )


 


 2011年9月7日、食品安全問題が中国で頻発する中、特に問題視されているのが食用油。 使用済みの油を “リサイクル” したものなどが市民の不安をあおっているが、雲南省昆明市では、名もないメーカーの油を大手メーカー製かのように偽装した商品が発見された。 こうした “偽装油” を生産する闇工場を取材した。 春城晩報の報道。

 彼らは卸売市場で個人生産の店舗から購入した量り売りの食用油をボトルに詰め替え、有名メーカーのラベルを添付して販売していた。 1箱は4~6本入りで、1日60箱ほどを出荷していたという。

 地元の卸売市場で調べたところ、食用油の相場はサラダ油が1kg当たり9.4元( 約110円 )。 それを5リットルの瓶詰にすると原価が約45元( 約550円 )。 有名メーカーのラベルをつければその売値は70元( 約850円 )。 つまり、1瓶あたり20元( 約240円 )以上の利益が出る計算だ。

 しかし、こうした 有害食品の生産にかかわった場合でも、その販売額が5万元以上あるいは消費者に重大な被害を及ぼさない限り、刑罰の対象にはならないという。 ちなみにこの闇工場は地元当局の摘発を受けることになるのだが、その際に106箱の偽装油が押収されたという。





( 2011.10.07 )

  



 2011年8月19日付の広州紙 「 南方都市報 」 は、広州市政治協商委員会が開催した世情情報提供活動において、市政府が派遣した180名からなる部門責任者および担当者に対して市政治協商委員の宋川が次のように述べたと報じた

 自分の運転手は以前ファストフード店で働いていたが、その運転手によれば、彼が働いていた店の店主は50キログラムで価格がたった1元( 約12円 )という安価な食用油を使っていたという。 このため、この食用油を使った料理は店主を含めて店の人間は誰も食べなかったそうだ。 従い、レストランが使う油には注意が肝要であり、自分は車にいつも食用油のボトルを2本載せてあり、レストランで料理を注文する際に自分の食用油を渡して、その油で調理してもらうようにしている。


女性の手荷物に食用油の小瓶

 8月21日付の 「 人民ネット 」 はこの 「 南方都市報 」 の記事を引用して、宋川委員は 「 食用油を持参してレストランに行く 」 最初の人ではなく、レストランの使う油が心配だという理由で食用油をレストランに持参する広東省のホワイトカラーが増大しているというニュースは数年前にもあったと報じた。

 さらに加えて、広東省珠海市食品薬品監督局の陳昌亮局長が、 「 不衛生な食用油が市場に氾濫するというみっともない現象は当面なくならない。 自分も外のレストランで食事をするのが怖い。 自分も順徳薬品監督局に勤務していた時は、局内に食堂がなかったので、毎日昼食は数人の同僚と決まったレストランで食べ、食用油をそのレストランに預けて、コックにはその油を使って調理してもらっていた 」 と述べたと報じた。

 こうした報道を裏付けるかのように、9月22日付の広州紙 「 羊城晩報 」 は、9月21日に広州市の白雲空港から重慶行きのフライトに乗ろうとしていた女性が手荷物のカバンに食用油の小瓶を入れていて摘発されたと報じた。 女性は業務出張で重慶に1ヵ月程度滞在する予定だが、外食の食用油が心配で、100cc以下なら問題ないと考えて自炊用の食用油を小瓶に入れて持参しようとしたもので、食用油の小瓶は航空会社に託送してもらうこととなった。 白雲空港では同日に陝西省西安へ向かう女性、湖北省武漢へ向かう女性も食用油を手荷物に入れていたのが摘発され、同様に航空会社による託送で解決したという。

 旅行先にまで食用油を持参するとは尋常ではないが、中国の人々がレストランなど外食の食用油が不衛生だと心配しているのはなぜか。 その理由は “地溝油” である。 “地溝油” とは 「 調理場から排出された食用油が下水溝にたまった物 」 を意味する。 これを下水溝から回収して精製・加工することにより再生して 「 油 」 や 「 ラード 」 を生産し、それを食用として販売する悪徳業者が多数存在するのだ。 この下水溝から作られる 「 再生食用油 」 が市場に氾濫して、中国社会に混乱を巻き起こしている。 それは、 「 再生食用油 」 にはその毒性がヒ素の100倍にも及ぶと言われる発がん性物質 「 アフラトキシン 」 をはじめとする危険な物質が大量に含まれているからである。


年間消費量の20%が再生油

 2011年9月15日付の武漢紙 「 長江日報 」 によれば、油脂加工の専門家である “華農食品科技学院” の王承明教授は “地溝油” から作られた再生食用油の規模について次のように述べている

 食用油の全国消費量から食用油の国内生産量と輸入量を引くと、その差が再生食用油の使用量となる。 この数字は正確なものとは言えないが、 “地溝油” から作られた再生食用油がどれだけ食卓に戻されているのか、そのおおよその規模を推し量ることはできる。 2009年にはこの差が400万~500万トンになった。 中国の食用油の年間消費総量は約2250万トンであり、この数字は極めて重大である。 毎年食卓に戻る “地溝油” の量は200万~300万トンであると言う専門家もいるが、それは比較的控え目な数字である。

 200万~300万トンという控え目な数字でも食用油の年間消費総量に占める比率は10%となるが、これが2009年の400万~500万トンという数字では20%に増大する。 すなわち、10%なら10回の食事に1回、20%なら5回の食事に1回は再生食用油を使った料理に当たる可能性があるということになる。 既に年間に流通・消費される再生食用油の量が200万~300万トンであるという話は中国の人々に広く知れ渡っており、これが上述したような食用油を持参してレストランに行くとか、出張に食用油を携帯するという話につながっているのである。


14省にわたる公安機関で摘発

 中国の各メディアは9月12日および13日付で一斉に、公安部が大規模な再生食用油の密造・密売組織を摘発して容疑者32人を逮捕すると同時に 「 再生食用油 」 100トン余りを押収したと報じた。 買い入れた “地溝油” を精製して 「 再生食用油 」 を製造・販売する組織の存在は中国国民にとって切実な問題であることから、公安部は浙江省、山東省、河南省など14省にわたる公安機関を指揮し、4ヵ月にわたる調査と累計3万キロメートルの走破を経て再生食用油の秘密組織を摘発したというものであった。

 特筆すべきことは、これが全国公安機関による非合法に製造された 「 再生食用油 」 が油脂企業を通じて一般大衆に販売されているのを摘発した最初の事件であり、この事件によって “地溝油” が食卓に環流しているという風聞が事実であることが実証されたというのである。 「 最初の事件 」 だの、 「 風聞が実証された 」 などと言われると、何を今さらと言いたくなるが。

 それはさておき、今回の “地溝油” 犯罪の摘発によって、合計6ヵ所の闇の工場と販売拠点が粉砕され、 “柳立国” ほか32人の容疑者が逮捕されたのだが、その結果として、 “地溝油” の回収、粗精製、転売、加工、 「 再生食用油 」 の卸売りおよび小売りといった6段階からなるネットワークの存在が白日の下にさらされたのであった。 そして、その発端となったのは浙江省寧波市の管轄下にある “寧海県” の公安局が実施した個別訪問であった。


悪臭が漂い、地元の人間も近付かない

 2011年3月、 “寧海県” 公安局は個別訪問中に、レストランのごみ、使用済みの食用油や “地溝油” を精製して再生食用油を製造している人間がいることを聞き込んだ。 その地域は悪臭が漂い、地元の人間も近付かないとのことであった。 そこで、その現場を探索すると、市街地の下水溝から汲みだしたものを原料として直径1.5メートル前後の大鍋で煮るという粗精製が行われていること、その頻度は4~5日に1度であることが確認された。

 この事実確認に基づき、寧海県公安局は安徽省出身の粗精製した “地溝油” 専門の買付業者ほか6人の容疑者を逮捕したが、その供述から粗精製の “地溝油” がトン当たり5000元で江蘇省や山東省の業者に転売されていることを把握した。 そのうちの山東省の業者というのが逮捕された “柳立国” が経営する済南市の 「 格林生物エネルギー有限公司 」 ( 以下「格林生物 」 )であった。

 公開情報によれば、格林生物は年産4万トンのバイオディーゼルの生産企業となっていた。 業界関係者が公安機関に提供した情報によれば、バイオディーゼルと 「 再生食用油 」 の生産工程は非常に近似しているが、【1】前者は 「 酸価( acid value ) 」 の要求が高くないのに対して後者は高い、 【2】両者とも生産過程で嫌な臭いを発生させるが、後者の悪臭は格別に強烈である、 【3】後者は生産に際して 「 白土 」 と呼ばれる吸着剤を使って製品の脱色を行うが、前者は白土を使う必要がない、ということで見分けることができるのだという。 こうした前提の下で公安機関は調査を展開し、格林生物が 「 再生食用油 」 を生産して販売していることを確認して柳立国を逮捕するとともに、格林生物を差し押さえて設備を破壊したのであった。

 1997年、22歳で山東省軽工業工程学校の軽工機械専科を卒業した柳立国はアルミ工場の技術者となり、その6年後に辞職して済南市で “昌順油脂加工廠” という油脂工場を設立した。 しかし、油脂生産の経験がなかったことから開業半年で30万元( 約450万円 )以上の赤字を出した。 柳立国は友人や知人から借金して事業を継続したが、2006年には累計の負債が200万元( 約3000万円 )以上となっていた。 2006年当時、バイオディーゼル熱が湧き上がったことから、苦境の中でこれに注目した柳立国は投資によって技術を導入した上で研究を重ねた結果、独自の技術を確立した。

 その頃はディーゼル油が不足していた時期で、多くのガソリンスタンドが価格の高いディーゼル油に安価なバイオディーゼルを添加することで対応していた。 このため、柳立国の商売は順調で、1ヵ月に純利益が20万~30万元( 約300万~450万円 )にも達することがあるほどの盛況ぶりで、2007年には債務をあらかた完済するまでになっていた。 しかし、ディーゼル油の価格が低下すると、バイオディーゼルの需要は減少し、ついには全く売れなくなった。

 2008年になると、柳立国は動物油や植物油を生産する過程で出る副産物を原料とする 「 飼料油 」 の製造に転換したが、2009年上半期までの1年半に売れた量は2000トンにも達せず、利益も1トン当たり500元( 約7500円 )に過ぎず、経営は全くの不振だった。 そこで考えたのが、儲かると言われている “地溝油” から再生食用油を生産することで、2009年下半期に社名を 「 博滙生物科技有限公司 」 に変更して新たなビジネスに打って出た。

 事業を始めてみると面白いように儲かる。 そこで、2010年には新たな工場敷地を購入し、社名も 「 格林生物 」 に変えて、日産能力30トンの設備を備えて再生食用油を生産し、1ヵ月平均で400~500トン、最高時は700~800トンを販売して、1トン当たり500元( 約6500円 )を稼いでいた。 1ヵ月500トンとしても利益は25万元( 約325万円 )。 濡れ手に粟の商売であった。


辛い四川料理が危ない

 柳立国の歩んできた道を見ると生きる為に必死の模索を続けて来たように思われるが、その背景をなすものはカネを儲けたいという一念であるように思われる。 その一念が挫折した時に悪魔が安易なカネ儲けの道へと誘い、他人の健康や生命の心配などは眼中から消え去り、カネの亡者となって違法を知りながら 「 再生食用油 」 商売に邁進することになったのであろう。 これは柳立国に限らず、同時に逮捕されたほかの31人にしてもその経歴と境遇はそれぞれ異なるものの、同じことが言えるのではなかろうか。 従って、どんなに公安機関が 「 再生食用油 」 犯罪を取り締まっても、新たな犯罪者は途切れることなく次から次へと生まれてくるので、その撲滅は至難の業と言えよう。

 さて、2011年9月18日の “中国電視台( 中国テレビ )” の番組 “毎週質量報告( 週間品質レポート )” は、寧海県公安局が押収した 「再生食用油」 10種類を現行の国家規格である 「食用植物油衛生基準( 規格番号:2716-2005 )」 に基づいて検査した結果、 何と8種類が検査をパスした と報じた。

 華中農業大学の食品科学・分子生物学教授である蔡朝霞は、 「 “地溝油” には唾液、微生物、病毒素などが含まれているばかりか、油を繰り返して使用した後は多数の酸化物や過飽和脂肪酸などが生じ、人体の健康に対して大いに問題がある。 さらに、がんを誘発物質であるベンゾピレン、多環芳香族炭化水素( PAH )などの含有量が非常に高く、人体に病気やがんを引き起こしやすい 」 と述べている。 これほど危険な再生食用油を検査する方策がないとなれば、一般庶民が再生食用油の氾濫に危機感を持つのは至極当然のことと言えるだろう。

 こうした 「 再生食用油 」 に対する危惧を反映して注目されているのが “四川菜( 四川料理 )” である。 四川料理には、 “水煮魚”、 “水煮牛肉”、 “火鍋” といった庶民が大好きな辛味の強い料理がある。 これらの料理は大量の油を使うことから、 「 再生食用油 」 が使われているのではないかという疑念が湧き上がっているのである。

 2010年3月に中国のメディアが報じたところでは、ある四川料理店のコックが 「 価格がわずか20元程度の “水煮魚” に高価な食用油を大量に使っていたら赤字になってしまうから、必然的に廉価な再生食用油を使わざるを得ない。 四川料理とか湖南料理は辛味が強いので、再生植物油の臭みを消してくれる 」 と述べたとある。 この発言が改めて脚光を浴び、四川料理店から健康志向の客足が遠ざかる状況を生んでいるという。 “水煮魚” や “水煮牛肉” は大好物であり、健康をとるか、美味をとるか、悩むところだが、やっぱり美味の誘惑には勝てないのではないだろうか。

 さて、上述の寧海県公安局の戸別訪問を端緒として公安部指揮の下で展開された “地溝油” 犯罪の摘発によって、中国では 「 再生食用油 」 を非難・警戒する世論が盛り上がりを見せている。 そうした最中の9月19日午前1時頃、河南省洛陽市でテレビ局の記者が殺害されるという事件が発生した。 殺害されたのは “河南電視台” 記者の李翔( 30歳 )。 彼は18日夜に友人たちとカラオケに興じた後、テレビ局の裏にある自宅へ戻ろうと社員用住宅の入口の大門にさしかかった所で何者かによって刃物で十数カ所刺されて死亡したのだった。


屋台や低級なレストランには近づかない

 殺害現場からは犯人を特定できる証拠は何も見つからなかったのだが、9月15日夜に李翔が最後に更新した “微博( マイクロブログ )” に 「 ネットユーザーが “欒川県( 河南省西部の県 )” に再生食用油の拠点があると告発してきたが、食品安全委員会はまだ発見できていない 」 と書き込まれていたことが判明した。 このため、李翔は 「 再生食用油 」 の拠点を調査していたために、関係者によって殺害されたのではないかという推測が生まれ、熱い世論が公安局に対して犯人の早期逮捕による事件解決を強く迫っている。 李翔が10月1日にガールフレンドと結婚する予定であったことも、世論の同情をより強いものとしている。

 「純粋の食用油」 か 「再生食用油」 かの判別ができない以上、中国で外食する時には運を天に任せるしかない。 また、我々日本人としては、中国ではどんなにおいしそうに見えても道端の屋台や低級なレストランには近づかないに限る。 中国の友人たちは、最近では外食を極力控えて自宅で調理して食べる人が増えていると言うが、四川料理店を含めてどこのレストランも盛況に見え、表面的には 「 再生食用油 」 が中国の飲食業界に大きな影響を与えているようには思えない。

 しかし、 こうした 「再生食用油」 の氾濫を野放しにしておけば、 庶民の反発は否が応でも大きくなり、 その不満が社会不安の増大につながることは間違いない。 早期に 「再生食用油」 の鑑別方法を開発すること、 さらにカネ儲けに走る拝金主義を倫理の道に導く道徳教育の拡充を図り、 年少の時期から徳育を推し進めることが望まれる。





2011.12.14 )

  


 12日、中国公安部ウェブサイトは、 「 下水油 」 取り締まりキャンペーンの成果を発表した。 写真は廃油処理工場。 「下水油」 製造業者が廃油をより高値で買い集めるため、正規業者は処理する原料の不足に悩まされている。

 2011年12月12日、中国公安部ウェブサイトは、 「 下水油 」 取り締まりキャンペーンの成果を発表した。 中国新聞網が伝えた。

 「 下水油 」 とは残飯やどぶの汚水などを処理して精製した油、あるいは劣化した油を処理して見栄えをよくした油を指す。 もちろん 「 下水油 」 の製造、販売は違法だが、現実には相当量が流通しているとも伝えられる。

 今回の取締キャンペーンでは700人あまりが逮捕された。 押収された 「 下水油 」 は6万トン超。 28省・市にまたがる60もの犯罪ネットワークが摘発されている。 警察は全国10万社の油脂関連企業をローラー作戦で調べ上げ、 「 下水油 」 製造業者を見つけ出していったという。





2012.02.25 )

 


 23日、中国の最高裁、最高検、公安部は合同で、下水道の廃油や残飯などを原料とした 「地溝油」 ( 下水油 )を 「食用油」 として生産・販売した業者に対し、最高で死刑を適用するとした通知を公布した。 写真は昨年9月、貴州省で摘発された違法工場。

 2012年2月23日、中国の最高人民法院( 最高裁 )、最高人民検察院( 最高検 )、公安部は合同で、下水道の廃油や残飯などを原料とした 「 地溝油 」 ( 下水油 )を 「 食用油 」 として生産・販売した業者に対し、最高で死刑を適用するとした通知を公布した。 24日付で京華時報が伝えた。

 中国公安部、国務院食品安全弁公室など各部門が合同で昨年8月から、 「 地溝油 」 の取り締まりキャンペーンを展開、計135件を摘発、800人近い容疑者を拘束している。 今回の通知では初めて、 「 地溝油 」 に絡んだ違法行為とその罰則に関する定義が示された。

 「 地溝油 」 を 「 食用油 」 として生産・販売するなどした業者に対し、刑法第144条の 「 有毒、有害食品罪 」 の規定に従い、刑事責任を追及するというもの。 死亡あるいは人体の健康に特別に深刻な危害を与えた場合、最高で死刑を言い渡すことができるとしている。

 このほか、国の職員が食用油の安全に対する監視・管理業務において、職権を濫用したり、職責をおろそかにしたり、私利に惑わされて不正を働いたりしたことで犯罪を構成する場合も、刑法に基づいて刑事責任を追及していくとしている。

 「地溝油」 はヒ素の百倍も毒性が高く、地上最強の発がん性物質とも呼ばれるアフラトキシンが含まれている。 レストランなどで違法に使われているだけでなく、家庭用の食用油としても流通していることが分かっている。





2012.04.03 )

 


 中国公安省は3日、廃棄後の油脂から抽出した再生食用油 「 地溝油( どぶ油 ) 」 を販売していたとして、浙江省の業者ら100人余りを拘束し、約3200トンの地溝油を押収したと発表した。 密造グループは主に食肉処理場で廃棄された牛や豚、羊の内臓や皮から油を抽出しており、中国メディアは 「新たなタイプの地溝油」 と伝えている。

 発表などによると、浙江省金華市の警察が昨年10月、住民からの異臭の訴えを受けて捜査を開始し、13ヵ所の製造拠点を摘発。 地溝油は上海市や重慶市、安徽省、江蘇省などの業者に販売され、市場に出回っていた。 グループは昨年1月から11月までに1000万元( 約1億3000万円 )余りを売り上げていたという。

 中国では、残飯や下水溝の廃油から抽出した地溝油の流通が社会問題となっている。 司法当局は今年2月、 「地溝油に絡む犯罪は民衆の健康に重大な損害を与え、国家のイメージに多大な影響を及ぼし、共産党と政府の信用を損なう」 として最高刑を死刑にする通知を出している。





2012.04.08 )

 


 中国公安当局は3日、食肉処理場で廃棄された内臓などから抽出した油を食用に販売したとして1000人以上を拘束したと発表した。 下水や生ゴミから取り出した 「 下水油 」 は中国全土に流通、健康への害も指摘され、社会問題化。 中国メディアは今回のケースをその 「 新型だ 」 と伝えている。 屎尿しにょうから採取した油まであるとされるが、 「 リサイクルだ 」 との主張も。 中国4000年の食を揺るがす 「 下水油 」 はなぜここまではびこったのか。


腐った肉が食品原料に、売上高1億円超

 「 我慢できないほどの悪臭を出し続ける建物がある 」

 中国国営新華社や通信社の中国新聞社、各地方紙の電子版によると、今回の摘発は昨年10月、中国浙江省金華市の農村に住む農民からの通報がきっかけだった。

 公安当局は、食肉処理場から安値で引き取った動物の肉や皮、内臓から油を抽出し流通させていた業者を突き止め、一斉摘発に踏み切った。

 押収された 「 下水油 」 は3200トン余り。 摘発した際、原料の肉や内臓は古くなり、腐臭を放っていたという。

 製品としての 「下水油」 は、同省や安徽、江蘇両省のほか、上海、重慶両市の油脂業者を通じて食品加工会社に販売され、最終的には調味料など食品原料に使われていた グループの売上高は昨年1~11月だけで1000万元( 約1億3000万円 )を超えたという。


屎尿だけから採取も、屋台や加工品で中国全土に

 「下水油」 は、中国で 下水溝や排水溝にたまった油成分を含む浮遊物から抽出した油を販売する商売 が生まれたことからこの名が付いた。

 その後、飲食店から出た生ゴミから抽出する手口が広がった が、この場合もひっくるめて違法リサイクル油を中国語で 「 地溝( 下水 )油 」 と呼ぶ。

 屎尿だめに浮く油を抽出するケースもあるとされ、中国新聞社によると、昨年4月には、重慶市で屎尿だめから下水油の原料を収集していた男が拘束された。

 食肉処理場から原料を調達する今回のケースは、下水油の中でも 「 進化型 」 とみなされ、原料から販売まで組織化した手口に発見、摘発の難しさが指摘された。

 中国の食品問題に詳しいジャーナリスト、周勍氏の著書によると、下水油の多くが朝食として広く愛されている中国式揚げパン 「 油条 」 ( ヨウティアオ )などの屋台に流れているとされ、油条を口にしなくなった中国人までいるという。

 その他は、食用油として今回摘発されたケースのように食品加工会社に回され、加工品としていつのまにか口にすることになる。

 濁りや粘つき、酸っぱさ、苦みに正規の食用油との違いがあるとされるが、ほとんどが加工された後のため、判別が難しい。 その結果、懸念されるのが健康被害だ。

 周氏の著書や中国メディアによると、食べると消化管の粘膜などが破壊され、発癌はつがん性も指摘されている。


「誰もが口に」
   市場規模は200億円超 … 記者殺人まで?


 中国新聞社などによると、下水油販売をめぐって昨年下半期で9万人以上が摘発され、下水油約6万トンが押収された。 中国政府は事態を深刻に受け止めており、司法当局は今年2月、下水油に関わる犯罪に対し 「 最高刑は死刑も辞さない 」 との通知を出した。

 一向に収まる気配のない下水油の蔓延まんえん。 中国の専門家は、中国の食用油の年間消費量2250万トン( 2009年 )から国内生産と輸入量を差し引いた量が400万~500万トンにのぼると試算。 少なくとも200万~300万トンの下水油が食用油として全国に流通し、15~20億元( 約200億~260億円 )の市場規模を持つとみられている。

 「 中国人なら誰しも口にしたことがある 」との見方もあるほどで、深●( =土へんに川 )市では昨年11月、政府機関の食堂で使われていたことが発覚した。

 「 下水油 」 をめぐって笑えない現象まで起きた。

 中国河南省洛陽市のテレビ局記者が殺害される事件が昨年9月起きた。 この記者が事件直前、インターネットに 「 下水油 」 に関する投稿をしていたことから 「 下水油業者を取材していて報復された 」 との憶測がネットを通じて瞬く間に広がった。

 結局、事件は強盗殺人だったと判明したが、中国の一般の人々から、そのほど下水油をめぐる闇のネットワークが底深いとみられているのだ。


食のひずみが生んだ闇ルート
   飲食店、売り手、買い手が 「ウィンウィン」


 当局が取り締まりに躍起になっているのになぜ、下水油の蔓延はとどまらないのか ―。

 最も流通している下水油が生ゴミから抽出したものであることから、原料供給源である飲食店側の問題が最大の原因に挙げられている。

 周氏は大連市の過去の例に触れ、 「多くのレストランでは、こうした油さらい( 下水油 )業者を歓迎している。 彼らに引き取ってもらえば、ゴミ出しをしないですむし、下水道が詰まるトラブルもなくなるからだ」 と記している。

 泥の中からカネになるタネを見つけ出すことから周氏は 「砂金掘り」 とも表現している。

 急速な経済発展に伴い、13億人の胃袋を満たす外食産業も急激に発達した。 その陰で後回し、もしくはなおざりにされてきたのが生ゴミ処理だった。 その隙間に目を付け、当局が問題を深刻に受け止める前に流通ルートまで構築していったのが 「 下水油 」 業者たちだった。

 飲食店にとって生ゴミがカネになるメリットがある。 下水油業者にとってはタダ同然で買い取った生ゴミを少し加工するだけで売り物になる。 屋台や食品加工業者は正規品に比べ極端に安い値段で “食用油” を手に入れることができる。

 倫理さえ無視すれば、3者にとって 「 ウィンウィンの関係 」 になる。 バカをみるのは消費者だけという構図だ。


「ゴミから宝」
   バイオ企業認定業者まで … 現代中国の縮図


 廃棄物処理の未整備が下水油を生んだことを認識した行政当局によって、生ゴミ回収が無料化された地域も出始めた。 しかし、飲食店側から 「 買い取る業者がいるのになんでタダで渡さなきゃいけないの 」 と反発され、うまく機能していないともいう。

 「 ゴミから宝を生み出す、これぞリサイクルだ 」 と豪語する識者までいる。

 中国語で 「 向銭走 」( =カネに向かって邁進まいしんする )という現代中国の風潮の縮図が 「 下水油 」 問題に現れているといって過言ではない。

 「コネがなければこんな仕事はできない」 と背後に有力者がいることをほのめかす業者もいる。 摘発された業者の中には、品質安全を保証する国家認証や、行政当局から 「バイオ企業」 の認定を受けていた会社まであった。

 下水油が一掃され、食の安全を取り戻したときこそ、中国が本当に発展したといえるのではないだろうか。