中国、3400万人 「余剰男」 の行方 

 中国南開大学人口発展研究所は最近、中国における男女人口の不均衡にかんする調査結果を発表した。
 2006年時点で中国の0~26歳の若年層は男が女よりも3402万人多いという。
 一般的に出生比率は女100に対し男103~107とされるが、中国では2008年のサンプル調査で100対120.56だった。
 若年層の中で、男性は女性より人数は断然多いというのはれっきとした事実なのである。
 それは言うまでもなく、 「一人っ子政策」 が長く実施されたことの副作用である。
 特に農村部で男の子を求める傾向が強く、女の胎児の中絶の氾濫が男女比率の不均衡を引き起こしたわけである。
 問題は、この3400万人の男は今後どうなるのか、である。
 少なくとも中国国内の範囲内に限定して考えてみれば、この3400万人は将来、結婚する相手が絶対見つからない

 中国の経済が繁栄しようとどうなろうと、彼らの結婚相手となる女性は最初から、3400万人分が足りない のである。
 中国政府としてはこの問題を当然看過することができない。 看過してしまえば、結婚できない3400万人の男たちの動向は、犯罪の多発にも騒乱の発生にもつながってくるからである。
 彼らはいつか、 「 嫁強奪 」 のための暴動でもやってしまえばもはや収拾がつかない。 彼らの存在は、政権にとっては危険な 「 時限爆弾 」 である。
 そうすると、中国政府としては何としてもこの問題を解決しなければならないが、そのための方法は一つしかない。
 問題を中国の外部に転嫁させることである。
 要するに、中国国内では男女比率の不均衡で 「 嫁不足 」 は決定的なものとなっている以上、この余った3400万人の男たちを外国に出してしまい、滞在国の女性と国際結婚をさせることによって彼らの悩みを一挙に 「 解消 」 してしまうのである。

 その際のやり方は二つがあろう。
 一つは 日本などの諸先進国が直面していく労働力不足の問題につけ込んで、それらの先進国への大量移民を組織的に行い、 「余った」 男たちをどんどんと送り込む戦略 である。
 その際、相手国の政府からの協力は必要不可欠だが、たとえば 日本の場合、大政党の中でも 「一千万人外国移民の受け入れ」 を提唱している政治家がいる から、中国にとってとりわけ好都合 であろう。
 この方法でも問題の根本解決につながらない場合、中国は次のような方策をとってしまう可能性もある。
 十九世紀に流行った植民地政策の真似をして、軍事力を背景にした正真正銘の 「植民」 戦略 を推進するのである。
 つまり理論的には、どこかの周辺国を占領して自国の余った男たちをそこに送り込み、 「 植民地 」 となった国での強制的な 「 通婚政策 」 の推進によって問題の最終解決を図るという最後の選択肢が残されているはずである。
 それはあくまでも、一種の理論上のシナリオの想定ではあるが、自らの抱える問題を自ら解決できない中国という存在は潜在的に、周辺国( とりわけ日本 )にとっての大いなる脅威であることがこの一例からも分かるのであろう。

 実は、問題は上述の3400万人の 「 剰余男 」 に限られたものでもない。
 さる3月11日、中国社会科学院学部委員、世界政治経済学学会会長の程恩富氏は、中国の人口問題にかんする重大な発言を行った。
 程氏は中国の先進国入りの見通しについて語った中で、
 「 総人口を5億人程度にまで減らさない限り、中国が今世紀中に先進国の仲間入りをすることは難しい 」
 との見方を示した。 程氏はその理由として
 「 GDPの総額の問題でなく、国民1人あたりの国力や資源占有量の問題である 」
 と説明し、
 「 今世紀末までに先進国並みの生活水準に達することは非常に難しい 」
 と結論付けている。
 こうしたうえで程氏はさらに、 「 厳格な計画出産政策によって 」、総人口を5億人にまで減らしていくことを提言しているのである。
 要する程氏は、まもなく15億人に達するはずの中国の総人口を、その三分の一に減らすこと、つまり10億人の人口を実際に減らしていくことを提言している。

 しかしどう考えても、 「 厳格な計画出産政策 」 を取っただけではそれほどの人口削減ができる訳はない。
 程氏自身もこの同じ談話の中で指摘しているように、中国が過去30年間にわたってもっとも厳格な計画出産政策である 「 一人っ子政策 」 を実施してきたが、それによって減らされた人口数はせいぜい4億程度だった。
 つまり、理論的にいえば、国内で大規模な戦争でもやらない限り、10億人の人口をこの世から消して総人口を5億人に減らすようなことはまずあり得ない。
 もし中国は先進国入りを目指してこのような目標をどうしても達成したいならば、結論的には大量の人口を中国以外の土地に送り込む以外に方法はない。

 要するに、上述に論じたような 「 3400万人剰余男 」 の 「 処理法 」 の場合と同様、対外的大掛かりな 「 植民地戦略 」 の推進は結局、中国にとっての 「 人口問題解決 」 の魅力的な選択肢となってくるわけである。
 以上は、あくまでも理論的想定と一種のシミュレーションの範囲内で、中国の抱えている深刻な人口問題とそのありうる解決法を考えてみたが、とにかく、日本も含めた周辺国にとって、中国の存在と動向は、場合によって深刻な脅威となりうるということだけはきちんと覚えておくべきであろう。