報道されないチベットとトルキスタン
中国共産党と人民解放軍によって地図から消された2つの国
そこでは地獄のような人権弾圧が今なお続いている

消滅した2つの国

 中国について、日本のマスコミが報道しない惨状があります。 それはチベットと東トルキスタンの実状です。 チベットの名称はともかく、東トルキスタンという名前に馴染みがある人はそう多くはないでしょう。 この2つはともに、かつて中国の隣に実在した独立国でした。
 第二次世界大戦後、東トルキスタンはソ連の思惑に振り回される形で解体され、1949年中国国民党政府との内戦に勝利した中国共産党 現在の中国によって侵略されました。 またチベットも1951年に中国の武力侵攻を受け消滅してしまいます。
 問題は国が消えて無くなっても、そこに生きる人々が一人残らず消えてなくなるわけではないということです。 この2つの地域に住む人々は、50年以上 半世紀という長い時間が経過した今現在も、中国支配の下で地獄の苦しみを味わっているのですが、その事実を日本のマスコミは伝えようとはしません
 これは 「 日中記者交換協定 」 の影響があるのでしょうが、中国から聞こえてくるニュースは日本との歴史認識問題を別にすれば、経済や北京オリンピックといった景気の良い話ばかりです。 耳慣れない 「 東トルキスタン 」 と違い、ニュースやクイズなど教養系番組でよく耳にするチベットについていえば、チベット仏教やその寺院、少数民族にカテゴライズされたチベット人たち独特の文化や風習が牧歌的に紹介されるがゆえに、一見平和的な治世が中国の手によってもたらされているとテレビを見ている視聴者たちは錯覚しがちです。

チベット仏教への弾圧

 チベットはいまだ多くの地域で外国人の立ち入りが禁止されており、チベット仏教やその風習はテーマパーク 観光という外貨獲得の手段として残されているにすぎません。 ハリウッドスター、ブラッド・ピッド主演の映画 「 セブン・イヤーズ・イン・チベット 」 のラストで、チベットを侵略した中国軍の指揮官がチベット僧が描く砂の曼荼羅を踏みつけ 「 宗教は毒だ! 」と吐き捨てるシーンがあります。 宗教を侮蔑する共産主義国家の実態を一言で表した名場面です。
 そんな中国の軍政下でかつて約4千5百もあったチベットの寺院の99%が破壊されました。 中国の発表によると寺院の現存数はわずかに45。 59万人はいたとされるチベット僧は現在その人数が制限され3千3百人を残すのみです。 11万人以上の僧侶たちがその信仰を捨てなかったために逮捕され、酷い拷問を受けたあげくに自殺、もしくは殺されました。 刑務所に収監された者は日常的に看守からの暴行を受け、ある僧は目に釘を打たれ、またある僧は生きたまま解剖されたといいます。
 チベットにおけるチベット仏教への信仰はとても厚く、その僧侶は民衆からとても尊敬された存在です。 また17世紀以来、チベットの最高指導者として民衆に支持された人物は 「 転生活仏 」 として知られるダライ・ラマただ一人だけでした。 チベット仏教の頂点に立つ法王が治める宗教国家がチベットなのです。
 ゆえにチベットを 「 不可分の中国領土 」 と自認する中国共産党にとって、チベット仏教は侮蔑の対象以上に厄介、それでいて危険な存在と見なされました。 反乱や独立運動の象徴として、民衆がその信仰心の下に結束するのではないかと恐れたのです。
 チベット人たちの心の拠りどころである信仰心を無くすため、また僧侶の権威を貶めるために、衆人環視の中で小便を飲ませるなどの嫌がらせが頻繁に行われ、女性の僧侶 尼僧は中国の男たちによって陵辱されました。 僧籍にある者に限らずチベット人に対する人道的配慮や人権などは初めから無く、反抗する者や不満を口にする者には容赦ない弾圧がくわえられました。

チベットにおける中国軍の蛮行
 1949年から1979年の30年間だけでも、処刑されたチベット人の数は最低でも15万人。 拷問による犠牲者はさらに多い17万人を越えるといいます。 チベット亡命政府の発表によると、1949年以前には約600万人を数えたチベットの全人口、その5分の1に当たる120万人以上の人々がこの時期に亡くなっています。 亡くなった理由には傷害致死( 9万人 )。 餓死者( 34万人 )。 蜂起した市民の戦死者( 43万人 )なども含まれますが、いずれも中国の圧政が引き起こした人災なのです。
 1959年にチベットから脱出した法王ダライ・ラマはあくまで中国との対話を望み、 「 チベット人民の基本的人権と、その独特の文化的ならびに宗数的生活を、尊敬することを要求する 」 活動を行ってきました。 国際連合でもその決議が3度なされ、ヨーロッパ各国やアメリカでもチベット人の人権を中国が尊重するよう、たびたび決議がなされていますが中国は応じません。
 チベット人は今なお厳しい監視下に置かれ、ダライ・ラマを容認する発言や中国への批判を行った者への強制労働や拷問が行われています。 酷い拷問にも耐え、生きて収容所を出た人たちが、現在のチベットの内情や実態を国際社会に訴えることがあるのですが日本のメディアの反応は冷たいものです。
 ただノーベル平和賞( 1989年度 )受賞者でもあるダライ・ラマには国際的な影響力があるせいか、法王が訪日された場合などには、例外的に、その活動の目的や背景がメディアで説明されることがあるのみです。

850万人の中絶

 では、東トルキスタンの現状はどうなっているのでしょうか。 最初の方で 「 耳慣れない 」 と申しましたが、現在、新疆しんきょう( 中国語で 「 新しい征服地 」 の意 )と名を変えた東トルキスタンに対し、日本人が抱くイメージは砂漠と遊牧の民、悠久の歴史といったシルクロードのそれでしかありません。

ウイグルでの中国人による人間狩り
 しかし、東トルキスタンにおける民族弾圧と人権蹂躙もまた、その過酷さにおいてチベットに劣らず。 ウイグル人を含むトルキスタン( テュルク諸語を共通語とする民族の総称 )たちの生活、習慣、イスラムヘの信仰など、そのすべてが中国人の厳しい監視下に置かれている のです。
 冤罪や見せしめによる逮捕、拷問はこの地でも横行し、処刑されたトルキスタンは50万人。 中国による圧政の犠牲者総数は現在1千万人に達するといわれ、そのうちの75万人が放射能の影響で亡くなりました。 東トルキスタンでは過去50回にもおよぶ核実験が行われ、水源の汚染や放射性物質の飛散による被爆で多くのトルキスタン人が苦しんだのです。
 また1989年から始まった 「 計画生育政策 」 日本でいう一人っ子政策の結果、850万人もの赤ん坊が中絶させられました。 中絶に抵抗する妊婦には赤ん坊とともに殺害された者もいるといいます。 トルキスタンの女性は婚姻前から避妊リングの装着が義務づけられ、それでも避妊に失敗すると強制的に赤ん坊が殺されるという屈辱以上の地獄を見せられるのです。
 中国は現在13億を越える人口を抱えているため、計画生育政策という悪政も仕方がないのでは? そう思われる方もおられるでしょうが、トルキスタンを構成する各民族の人口はもともと多くはありませんでした。 その8割程度を占めるウイグル人さえも約1千8百万人( 1990年 )ほどしかいなかったのです。
 一応、建前として中国は少数民族の保護をうたっているため、チベット人やトルキスタンが持てる子供の数を2人までと規定していますが、子供一人を産むのさえ厳しい条件が課せられる現状では現実的とはいえません。 そもそも中国による侵略がなければ、彼らがこのようなルールに従う理由も必要性もなかったはずなのです。
 2006年のノーベル平和賞候補にレビヤ・カディールという女性がノミネートされました。 彼女は東トルキスタン( 現在の新疆ウイグル自治区 )の出身者で、中国からはテロリストの指名を受けています。
「 ウイグル民族の問題が平和的に解決することを希望する 」 とコメントする彼女に対し、中国は 「 東トルキスタン独立運動を行っているテロリストであり、中国の平和と安定を脅かしている 」 と彼女のノーベル平和賞推薦を批判しているのです。 これが、かえって中国という国の実態について世界が注目するきっかけとなると良いのですが。

実質的には植民地

 現在両地域における中国人の人口は、チベット人やウイグル人のそれを上回り、彼らは本当の意味で少数民族にされてしまいました。 これは中国による人口抑制政策と、同地への中国人の移住が推奨されたため、大量の中国人がチベットおよび東トルキスタンヘ入植したからです。 チベット( チベット自治区 )も東トルキスタン( 新疆ウイグル自治区 )も建前では自治区ですが、決定権を有する重要なポストは中国人で占められています。 彼ら少数民族の声が政策に反映されることはありえません。 広大な大地を中国人に奪われ、遊牧を主体に生きてきた多くの者がその生活を変えざるをえませんでした。
 奪われた大地は畑になりましたが、その収穫のすべてが中国へ送られ、彼らの口に入ることはありませんでした。 豊かだったチベットの森林は荒地へと変わり果て、伐採された木々は540億ドル相当の材木として中国の財産となりました。 東トルキスタンに埋まる鉱物や石油などの地下資源も中国人には豊かな生活を与えてくれますが、タダ同然の労働力としてコキ使われる彼らの心が満たされることはありませんでした。 現代における植民地。 中国人は彼らの宗教、文化、民族の誇り、そして命をも踏みにじっているのです。
 テレビで見るシルクロードの映像は美しく感動すら覚えますが、しょせんは見栄えの良いところを四角く切り取っただけの創られた世界のお話です。 そのフレームの外側にある暗い現実を伝えられない以上、日本のマスコミに期待できることはこれからもないでしょう。
 もし興味を持たれ、チベットや東トルキスタンヘのご旅行を考えている方はお気をつけください。 あなたの言動やその振る舞いは、現地の人を装った中国当局の人間に監視される可能性があります。 あなたのためにも、中国入国のおりにはこの文章を持ち込みにならないよう厚くお願い申し上げます。