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中国新幹線

 中国で新幹線の導入問題が大きな話題となっているのをご存知だろうか。

 中国では北京五輪( 08年 )、上海万国博( 10年 )を控え、北京 ― 上海間に、高速交通手段の建設が計画されている。 もともと国産技術では建設が難しく、ドイツや日本などの海外のリニアモーターカーや高速鉄道の技術の導入が検討されてきた。 いよいよ決断の時期に入り、日本の新幹線も有力視されるようになった。 この夏、扇千景国土交通大臣も売り込みのため、訪中した。

 しかし、歴史問題などをめぐって中国の一部には根深い対日不信が存在し、中国のメディアでは、新幹線導入反対の動きがけたたましく繰り広げられている。

 例えば、国営通信社の新華社のHP、「新華網」 は2003年7月15日、ローンの貸与、技術移転など面から日本の新幹線が有力になりつつあるとの記事を掲載するとともに、読者に意見を求める書き込み欄( ネット論壇 )を設置した。

 紹介記事は非常に冷静な内容だったが、いざ書き込みが始まると、反日感情むき出しの議論が書き込まれた。 1週間で249本の書き込みがあり、そこで打ち止めの措置が取られた。

 20本目までを見てみると、積極賛成1、消極賛成2以外はすべて猛反対。 「倭寇にほしいままにさせたら中国に災難がやってくる。 安易に国を売る輩に抗議する」 「数十年前の技術などすぐゴミになる」 「絶対反対! 鉄道省を打倒せよ!」 といった激しい言葉が踊る。

 別のサイトでは、「愛国」 を名乗る団体の呼びかけで新幹線導入反対の署名が繰り広げられ、8万人の署名が集まったという。

 中国のマスメディアやプロバイダーのHPには、こうした読者の書き込み欄が設置され、盛んに利用されている。 従来の官製メディアと違って、書き込みがそのまま掲載されるところが特徴だ。 一種の世論の芽生えでもある。

 しかし、中国のネット論壇ではしばしば民族主義、愛国主義、さらには排外主義的な言論に陥りがちである。 ネット空間は匿名だから、無責任な言論が幅を利かせるのだ。 とくに90年代、中国では「反日」 ムードが広がっていたことから、日本に関しては、過剰な反日言論が繰り返されてきた。

 日本国内では、JRの中にも、新幹線売り込みに消極的な声があるし、読売新聞などは無理に売り込む必要はないといった社説まで掲げている。






ニュ


 
中国高速鉄道事故 姿
 






( 2012.09.02 )

 



試験走行する超電導リニアモーターカー=2010年5月11日午後、山梨県都留市


 高速鉄道をめぐる中国の姿勢には、謙虚さを微塵みじんも感じない。

 浙江省温州市で2011年7月23日夜に発生した高速鉄道列車の追突・脱線事故では、車両4両が脱線後に高さ約20メートルの高架から落下。 40人が死亡、約200人が負傷した。

 これだけの事故にもかかわらず、当局側は翌日には事故車両をすべて撤去、一部は土に埋めた。 半日後には営業運転を再開した。 中国政府は同年12月、 「列車制御システムの設計不備に加え、落雷後の緊急措置が不適切だった」 とする原因調査結果を発表。 「人災」 を認定し、前鉄道相ら関係者54人を処分し、早期の幕引きをはかった。

 事故は、世界各国からかき集めた技術で建設を急ぎ、基礎からの開発をおろそかにしてきた 「寄せ木細工」 のツケが原因だった。

 中国の高速鉄道は、日本やドイツなどからの技術供与をベースに05年から建設が始まり、07年4月に開業した。 事故直前の10年末の営業距離は8千キロを超え、15年までに1万6千キロまで延伸する計画とされる。

 だが、北京~上海間のように専用の高架軌道で運行する区間もあるが、在来線に高速鉄道車両を走らせる区間は多い。 日本は技術供与に当たり、車両だけでなく、コンピューター制御による運行システムを含めた一体採用を働きかけたものの、この忠告を、中国側は無視した。

 しかも、悲惨な事故から約1年しか経っていないのに、中国はその教訓を省みることなく、早くも高速鉄道の輸出を計画し始めた。 今年に入り、国有の鉄道車両大手、中国北車がバングラデシュから高速鉄道の車両60両( 20編成 )を受注したことが判明。 中国による高速鉄道の輸出は初めてで、同社公式ホームページによると、バングラデシュから受注したのは、車両のほか列車の制御や運行システムなど関連設備も加えた 「核心技術」。 同社は独シーメンスや仏アルストームなどから技術導入し、鉄道車両や設備を製造している。 輸出車両は同社の大連電牽研究センターで製造するという。

 他国の忠告をまったく聞かず、先を急ぐ中国。 世界各地で進む高速鉄道建設計画への参画に鼻息が荒く、今後の動きを注視していく必要がありそうだ。





( 2015.06.29 )

 


中国初の高速鉄道の死傷事故となった中国温州市の現場 = 2011月7月24日
 50年以上にわたり、乗客の死亡事故を1人も出していない 「安全神話」 を打ち立てている日本の新幹線。 この日本の新幹線に対抗しようとしているのか、中国メディアが中国の高速鉄道も 「いまだかつて高速鉄道の死亡事故は起こしていない」 という “仰天ニュース” を報じている。 中国の高速鉄道事故といえば、死者40人、負傷者約200人を出した2011年の中国浙江省温州市の追突脱線事故の記憶が新しい。 救出作業よりも車両撤去と運行再開が優先されたあの事故だ。 だが、記事は今になってこのときの車両は 「高速鉄道ではなく、特別快速列車だった」 と主張、あくまで死亡事故は1件もなかったと強弁している。 中国は国を挙げて高速鉄道の輸出に力を入れているが、タイの高速鉄道受注を事実上日本に獲られるなど苦戦している。 こうした焦りが 「死亡事故はなかった」 に結びついているとの見方も出ている。


 時速250キロ以上が高速鉄道!?

 問題の記事は、ニュースウェブサイトのサーチナが、中国メディアの環球網の報道として伝えた。

 それによると、中国における 「高速鉄道」 の定義は、 「時速250キロメートル以上で走行する鉄道」 だと主張。 温州市で11年に起きた事故は、高速鉄道の定義を満たしていない 「特別快速列車」 による事故だったと論じている。

 同時に日本では 「新幹線はいまだ死亡事故が起きていない」 という 「安全神話」 なるものも存在すると紹介。 さらに、新幹線の安全神話を裏返して読み取れば、 「フランスやドイツ、中国では高速鉄道の死亡事故が起きている」 という意味だとし、 「中国高速鉄道の死亡事故は起きていないため、これは誤った主張だ」 と論じた。

 その上で、中国は国際社会に向けて 「高速鉄道の開通以来、死亡事故は一度も発生していないことを胸を張って宣言すべき」 とし、中国は今後も高速鉄道の死亡事故が起きないよう努力し続けるべきとしている。

 温州市で起きた高速鉄道事故を念のため、おさらいをしておこう。

 2011年7月23日午後8時半( 日本時間同9時半 )すぎ、高速鉄道列車が別の列車に追突、車両4両が脱線後に高さ約20メートルの高架から落下。 40人が死亡、約200人が負傷した。


 信頼失墜した温州市の高速鉄道事故

 2007年に運行を開始した中国高速鉄道で初めての大事故となり、中国政府は 「列車制御システムの設計不備に加え、落雷後の緊急措置が不適切だった」 とする原因調査結果を発表。 高速鉄道の安全性への信頼を失墜させる事故になった。

 事故の記憶が残っているのは、無残な事故映像もさることながら、事故後の不適切な処理も大きい。 中国当局は事故翌日には事故車両を地面に産めるなどして撤去し、すぐさま営業運転を再開した。 このため、救助活動は短い時間で打ち切られたが、打ち切り後に生存者が発見され、運転再開を優先した当局の姿勢に 「人命軽視」 「証拠隠滅」 などと国際的に非難が集中したのだ。

 このとき追突した車両は、日本の川崎重工業が技術供与したCRH2型と呼ばれ、東北新幹線の 「はやて」 をベースにしている。 CRH2は、安全性を確保できる最高速度を時速200~275キロに定めているが、中国側は一部区間で同350キロで運航していたとされる。

 当時の新華社通信は、乗客の話として、列車は時速約100キロで前方の列車に突っ込んだと伝えている。 業界関係者は 「『はやて』 をベースにした車両での事故は、やはり高速鉄道の事故といっていい。 今さら特別快速列車というのは言い逃れに聞こえる」 と中国メディアの主張をバッサリ切る。


 つまずき目立つ中国の高速鉄道ビジネス

 中国メディアが 「死亡事故はなかった」 と強弁するのは、世界で激化する高速鉄道受注競争を有利に進めたいとの思惑がにじむ。

 以前 「ビジネス解読」 でも取り上げたが、昨年11月にメキシコから受注した高速鉄道が “白紙撤退” の憂き目にあっている。 中国初の高速鉄道輸出として喜びに沸き返っただけに落胆も大きく、メキシコが中国に賠償金を支払う事態に陥っている。

 そして最近中国が衝撃を受けたのは、日本に狙っていたタイ初の高速鉄道を日本に事実上奪われたことだろう。

 先月27日、来日したタイのプラジン運輸相は太田昭宏国土交通相と会談し、バンコク-チェンマイ間の高速鉄道について、日本の新幹線方式導入を前提に調査を始める覚書を締結した。 新幹線導入で事実上合意した形とみられている。 実現すれば、日本にとって台湾新幹線に続く新幹線輸出となる。

 バンコク-チェンマイ間の高速鉄道は、日本の新幹線と同じく専用軌道を建設。 総延長670キロ、時速250キロで総工費は2730億バーツ( 約1兆円 )規模になる。


 日本の新幹線を見くびるな

 中国網日本語版は、タイ受注を日本に事実上奪われた後に 「日本新幹線の競争力を見くびってはならない」 との記事を掲載。 この中で 「なぜわれわれが確実視していたプロジェクトが空振りに終わったのだろうか?」 とした上で 「日本の新幹線は中国高速鉄道の最も主要なライバルになる。 ( 日本の )新幹線の最大の特長は質と安全だ」 と “敗因” を分析している。 中国が得意とする低コストだけでは受注を勝ち取れないと気づき始めたといっていいだろう。

 つまずきが目立つ中国の海外鉄道事業だが、国有大手の中国北車と中国南車が経営統合し、 「中国中車」 が6月に誕生。 世界最大の車両製造会社になり、虎視眈々こしたんたんと新興国市場開拓などを狙っている。 政府を挙げてのインフラ輸出に一層力を入れてくるとみられ、低コストに加え、今後は質と安全にも十分気を配ってくることが予想される。 日本も引き続き負けない努力が求められることになりそうだ。





( 2015.10.01 )

km

 中国に 「リスクマネジメント」 という言葉は存在しない。 トップの責任が問われようものなら真相にフタをされる。 2011年の高速列車追突事故では、事故車両が深い穴底に放り込まれた。 このたび天津で発生した大規模爆発もそうだ。 共産党の都合次第で事実はいくらでもねじ曲げられる。 中国経済発展の象徴、リニアモーターカーでも、恐ろしい事態が起きていた。


 まずは下の写真をみてほしい。 これは7月某日、営業運転中の上海リニアモーターカーの運転席を撮影したものである。
 右側の写真は亀裂が入っている運転席のフロントガラスである。 鳥などの飛行物が不意に接触した場合、こうしたひびが入ることは 「日本の鉄道列車でも起こりえる」 ( 鉄道関係者 )。
 しかし、異変が発見された場合、当然ながら緊急メンテナンスの対応がとられる。
 ここ上海では安全上、問題あるとは思われてはいないのだろうか。
 次に左側の写真を見てほしい。
 フロントガラスの異変に何の注意を払うことなく、20代後半と思しき女性乗務員は、手元のiPhoneに興じていた。 それも走行中ずっと ……。




 実質的な運転は、彼女が行っているわけではない。 遠隔操作の自動運転である。 ただし、不慮のトラブルが起きた場合、監視役としての役割が問われるが、スマホ閲覧中の彼女にはとても期待できない。
 これが中国政府ご自慢の上海リニアの運行実態である。
 同線は04年、世界初の営業用リニアとして開通した。 技術はドイツから輸入し、最高時速は約430㎞に達する。
 上海の “空の玄関口” 浦東国際空港のターミナルビルから、約30㎞先の地下鉄駅を結ぶ。 総工費は、およそ89億元( 当時1335億円 )だという。
 10分弱しかない運行時間を考えると乗車料金50元( 約1000円)が高いか安いかは判定しづらい。 が、これは採算性を度外視した中国の技術力を世界にアピールするための国家プロジェクトなのである。

中国で発生した
主な列車・客船・飛行機事故
2004年
11月
中国東方航空5210便が内モンゴル自治区包頭で墜落。乗員・乗客53名と落下地点にいた2名の55名が死亡。
2008年
4月
山東省・涸博市で、青島行きの列車が脱線したところに、徐州行きの列車が正面衝突。約70名死亡。
2009年
6月
湖南省・榔州市の栂州駅で、深圳駅行きの列車と深圳西駅行きの列車が衝突。死者3名。
2011年
7月
浙江省・温州市で落雷により停車中の福州南駅行きの高速列車に、福州駅行きの高速列車が追突。死者40名。
2011年
9月
上海市で信号機故障中だった地下鉄において追突事故が発生。260人以上が負傷。上記の事故と酷似しており、鉄道省に対する非難が集中。
2015年
6月
湖北省荊州市長江で大型クルーズ船が転覆。442名が死亡。
 「中国鉄道史上の大事件だ」
 列車を試乗した朱鎔基首相( 当時 )はこう高らかに謳い上げ、その先進性を国内外にアピールした。 リニアや新幹線に代表される高速鉄道は、中国の対外インフラ輸出の目玉商品なのである。
 中国の高速鉄道の総延長距離は、既に日本の新幹線の5倍以上の距離を誇る。 中国国内では主要路線が飽和しつつある。 鉄鋼生産や車両製造を超過させないためにも、対外輸出を迫られている。
 その国家戦略は昨今、さらに顕著になりつつある。 習近平国家主席や李克強首相は、アフリカや東南アジアなどを訪問するたびに、高速鉄道輸出の商談を行っている。

 そうしたトップセールスは、AIIB創設の動きと相侯って、インフラ輸出を成長戦略の一つに掲げる日本をも凌駕しつつある。
 だが、中国はそうした 「インフラ輸出国」 に足る国なのかどうか。 今回の写真は、車両メンテナンスの不備をはっきりと物語っていた。 鉄道評論家の川島令三氏はこう分析する。
「上海リニアは、ドイツのトランスラピッド社から技術を提供され、開発されました。 このころ、ドイツは官民あげてリニア事業の実用化を進めており、各国への技術提供も申し出ていました。 しかし、当のドイツでは実用化前の06年、実験線で事故が起こり、23人が死亡してしまう。
さらにまた、リニアでは一般鉄道への乗り入れができません。 EUでは国家を跨いだ往来が当たり前になるなか、需要が高まることはありませんでした。 そして2011年、ドイツでの開発が終了した。 結局、実用化を果たしたのは中国だけ。 部品調達などの面でコストが上がり、メンテナンスにも影響が出ているのではないでしょうか」



 さらに深刻なのが社員のモラルだ。 前述のドイツの事故は、無人の遠隔操作によって運転中のリニアが前方走行中の作業車に時速200㎞で衝突した。 車両故障ではなく通信系統にトラブルがあったと報じられている。
 機械制御には誤作動が想定される。 人的な監視も求められるが、写真に映る女性に、トラブルを収束する技術を求められそうもない。 それは鉄道に限った話ではなく “上意下達” の中国社会では無理もない。
 権力と情報は限られた共産党幹部にしか集まらず、末端の人間は何も知らず、そのツケだけを払わされる。 このたびの天津大爆発で救助に駆けつけた消防隊が化学物質に放水し、更なる爆発を招いたのが分かりやすい例だろう。
 ちなみに上海リニアは、日本( JR東海 )で開発が進むリニアとは違万方式を採用する。
 最大の違いは浮力にある。 「上海リニアの場合は、軌道と車両の間が1cm。 一方の日本は10㎝。 これは日本の地理的な条件が考慮されている。 多少の揺れや地盤の歪みが起こっても、地面との間隔に余裕があれば、安定して走行することができます」 ( 川島氏 )
 逆にいえば、上海リニアは地殻変動に弱い。 長江の下流域に位置する上海は地盤が軟らかく、地盤沈下の影響も受けやすい。 時を経れば経るほど、慎重な運用が求められる。
 最高時速430㎞を掲げた上海リニアが、取材時には300㎞程度に留まったのも、運行に不安を抱えているからに思える。
 他国にインフラを輸出するとなれば、 「技術」 とともに 「安心」 を提供する義務がある。 日本がリニア開発を入念に行っているのも、命を預かる鉄道運行に、 「万が一」 があってはならないからだ。
 上海リニアに何か起こってもおかしくない。 果たして中国指導部は、その軋みの音に気付いているだろうか。