中国で共産党は司法を超えた存在だと言われる。 指導部は法治の重要性を訴えるが、憲法も前文に 「 共産党の指導の下 」 での国家建設を明記している。 党幹部には権力が極度に集中し、公権力の乱用による「 冤罪事件 」 が後を絶たない。
 唐山市の裁判所は08年7月、国有財産を横領した罪で懲役6ヶ月を受けて服役を終えていた市物価局の元幹部に無罪の判決をあらためて出した。 上司の腐敗を通報したため逆恨みされ、ぬれぎぬを着せられたと訴え続けていた。 上司の失脚にともない 「 冤罪 」 が晴れたのだという。
 瀋陽市では06年に公安局の副局長らが腐敗を理由に検挙されたのを受けて、無実を訴えながら傷害罪で服役していた弁護士の再審が認められ、07年に無罪判決が出た。 市の警察関係者は 「 権力が代わったので罪に問われないやつらが出てきた 」 と平然と話す。
 権力者の交代で有罪無罪が一変すること自体が、権力を握る者が意のままに法を操りうる現実を物語っている。

 相手の中に 「 味方 」 を作る政治手法は、中国共産党が古くから用いてきた。 1940年代までの国民党との闘争では、国民党と対立している共産党以外の党派と共同戦線を構築。 現在も活動が公式に認められている民主党派8政党は、いずれも当時、共同戦線に加わった党派。 国民党内で蒋介石と対立していた左派勢力が1948年に結成した中国国民党革命委員会も、そのひとつだ。

 ただし、1949年の建国当初は 「 異なる意見も取り上げる 」 共同戦線本来の理念がかなり生かされたが、1950年代末期に 「 共産党への批判を歓迎する 」 とする百花斉放政策を実施したとたん共産党への不満が噴出したことなどがきっかけで、 「 共同戦線 」 は急速に形骸化した。 現在では一時よりも民主党派が重視され、少数ながら閣僚も存在する。

 敵対勢力の中に 「 味方 」 を作る手法が外交面で用いられた典型的な例が、対日外交だ。 1970年代の国交回復以前から 「 対中侵略戦争を発動したのは、一部の軍国主義者。 日本国民は中国人民と同様に、被害者だった 」 との主張を繰り返した。

 この 「対日ラブコール」 は中国との国交正常化を求める日本での国民世論の形成に役立ち、佐藤栄作政権末期には田中角栄氏をはじめとする次の首相候補の全員が 「自分の手で国交正常化を実現する」 と表明することになった。

 対日外交での同手法は、中国国内の対日強硬派を抑え込むためにも用いられてきた。 中国側の見解では、少なくとも国交正常化以後の日本の政府要人は 「 国益面で多少の対立はあっても、戦前の軍国主義者とはまったく異なる“対中友好主義者” 」 ということになる。

 いわゆるA級戦犯が祀られる靖国神社に日本の首相らが参拝した際、中国側が極めて敏感に反応する理由には 「 根強い対日強硬派に対して説明がつかなくなる 」 との、中国の国内政治の 「 力学 」 による部分が大きい。





共産党


 


 中国を赤い資本主義に導いた鄧小平も常々 「 真実は事実に求めよ( 実事求是 ) 」 と言っていた。 7月15日、中国政府は今年第2四半期のGDP( 国内総生産 )成長率が前年比プラス10.3%だった、と発表した。 この発表自体が、鄧小平の教えが守られていない証拠である。

 この数字は 「 政策的 」 な成長の減速が成功したことを意味する。 事情通の中国アナリストたちは、既にその信憑性を疑っている。 確かに怪しい。 こうした数字が捏造されるプロセスをたどれば、中国の本当の姿が見えてくるかもしれない。

 ではまず出発点から。 中国の統計はなぜ疑われるのか。 中国の国家統計局は四半期ごとに経済成長率の発表という儀式を繰り返している。 この数字の基になるのは全国各地からの報告だが、地方の当局者はわずか2週間で数字を上げてくる。 データ収集の仕組みが整っている先進国でも、この3倍の期間はかかるのだが。

 国家統計局は集まってきたデータを整理し、 共産党幹部に 「相談」 した上で、 謎めいた手法を駆使して計算し、 中央の指導部が設定した目標に気味の悪いほど合致した数値を発表する。

 何年かたつと、経済学者たちが地方から寄せられた資料をもう一度精査し、分析し、公式統計の数字を修正する。 かなりの矛盾が発見され、非難の声が上がると、中央政府は統計処理プロセスの 「 構造的欠陥 」 に対処すると約束する。 これで儀式が完結する。

 もちろん、公式発表の数字がすべて操作されたものだと言うのではない。 中には正しい数字もある。 だが四半期統計の儀式の内実を探れば、今の中国社会を動かす本当の力が何で、中国流 「 市場社会主義 」 の欠陥がどこにあるかを知ることができる。

 歴史を振り返れば、唐( 618~907年 )の時代には国民2927人につき1人の官僚がいた。 中国最後の王朝である清朝( 1644~1911年 )では、299人に1人だった。




 だが、今の中国には5000万人もの官僚がいる。 国民27人に1人の割合だ。 これだけいれば、どんな官僚機構も人手不足を口実にはできまい。

 現代の中国は、アジアで最大の 「 過剰統治 」 国家と言えるが、同時に 「 最悪統治 」 国家でもある。 初期の中央集権から地方分権へと移行し、その過程で地方官僚が増えているが、政治の透明性を高め、説明責任を強化する仕組みは構築されていない。

 中国共産党の支配力は裁判所から官僚機構、メディア、研究機関、国有企業にまで及ぶ。 だが中央政府が遠く離れた地方への影響力を維持するには、地方の党幹部に頼らざるを得ない。 そんな状況で、地方の党幹部や官僚に責任ある行動を期待するのは無理だ。

 別な問題もある。 中国経済においては、今も国が重要な役割を担っている。 国有企業には、国の資金の4分の3以上がつぎ込まれている。 国は総固定資産の65%以上を所有している。 言い換えれば、地方官僚には国の資金の4分の3以上の使い道を決定する権限があり、国有企業の運営にも大きな影響力を行使できる。

 彼らは資本、土地、時には労働力の分配まで支配する。 中国の広大な政治・官僚ネットワークの中で地位と権力と富の階段を順調に上っていきたければ、ひたすら 「 結果 」 を出し続けるしかない。 ちなみに、ここでの 「 結果 」 は各自の持ち場にある国有企業が中央政府の設定した目標をきちんと達成したことを意味する。

 こうした地方官僚の報告がベースになって、公式の統計は作られる。 猛烈な経済成長であれ段階的な成長の減速であれ、地方官僚は党と中央政府の設定した目標をきっちり達成したと報告したい。 それが中央に気に入られる唯一の道と承知しているからだ。




 だから地方の党幹部や官僚は、数字を操作して 「結果」 を出す。 不正なことだが、出世という確かなメリットがある。 一方、不正が暴かれ、罰せられるリスクは限りなくゼロに近い。

 統計が信用できないこと自体は、大した問題ではない。 だが中国のような一党支配のシステムにおいて、広大な国を効果的に統治できていないという現実は切実で急を要する問題だろう。

 欧米の人たちは、中国流の 「市場社会主義」 はトップダウンだから政策実現の効率がいいと考えがちだ。 しかし忘れないでほしい。 中国の公式統計の数字を正しく検証することは、およそ不可能 に近いのだ。

 鄧小平の言う 「 真実は事実に求めよ 」 は、中国を改革するための賢明なアドバイスだった。 しかし今は、その事実までもがゆがめられている。





( 2012.10.30 )
 

 中国の温家宝ウェンチアパオ首相の一族が首相就任後に27億ドル( 約2100億円 )もの巨額な蓄財をしたと米紙ニューヨーク・タイムズが報じた。 中国当局は同紙のサイトへのアクセスを遮断したと報じられているが、中国国内でもこの話は野火のように広がり、様々な方法で論じられている。

 汚職は、どの国であってもまさしく問題ではあるのだが、今回の件で明らかになったのは、中国が特に汚職にまみれているということではなかった。 そうではなく、今回の報道で浮き彫りになったのは、過去何年にもわたり多くの人々にとっての疑問だったことに対する答えだった。 その疑問とは、すなわち、発展途上国にとって頭痛の種である汚職のようなものに、中国は概して免疫があるのではないか、というものだ。

 確かに、たいていの場合、インドにおける悲惨な汚職の現実と比べると、中国には円滑に動く官僚機構が存在しているように見えてきた。 この見方には、いくばくかの真実が含まれている。 中国の方が、官僚機構はきちんと動いているし、ライセンスや許認可などに関してはインドよりも腐敗が少ないといえるだろう。

 しかし、今回の報道が浮き彫りにしたのは、中国には違った種類の広範囲な汚職が存在しているということだ。 密接につながった人々が、政府からの融資や投資、ライセンスに関して優遇措置を受ける。 中国の目を見張るような経済成長のおかげで、そういった力添えは最終的に数億ドルもの大金に化けることにもなる。 どこかの許認可を獲得するためにやり取りされる紙袋の中の現金などよりもはるかに大きな額となるのだ。

 今回の件は、中国にとって、汚職が存在しているかどうかが問題なのではないだろう。 インドやインドネシアといった国々よりも、それについては問題は小さいように見える。 そうではなく、中国政府にとっての問題は、閉ざされた政治制度が選挙による正統性を有していない点だ。 このことは、中国共産党にとっての打撃となりかねず、高度な能力主義のなかで大儀のために政治を行う選ばれた人々が運営する国家という自己イメージを損なうことにつながる。

 いまや、温一族や公職追放された前重慶市党委員会書記の薄熙来ポーシーライ氏の件が明るみ出ており、中国がこういった混乱をどのように処理するのか興味深いところだ。

 中国指導部には選挙を実施する意思がないように見えるとすれば、中国共産党は、正統性のうわべを維持するために、汚職問題への対処や指導部の選出のためにどんなプロセスを実行するのだろうか。

 この問題に中国がどう取り組むのか、興味が尽きない。





( 2012.01.23 )

 
  

 まらない。

 「 EB‐5ビザプログラム 」 というのがある。 米国に100万ドル( 約7700万円 )の投資、または失業率の高い指定地域において50万ドルの投資を行ない、投資家ひとり当たり10人の新規雇用をつくれば、最短1年で米国の永住権を取得できるというものだ。

 米国務省の発表では、2009年にこの「 EB‐5ビザプログラム 」 を取得した外国人のうち、実に46%強が中国人だった。

 さらに驚くべきニュースが昨年12月に流れた。 北京大学が共産党幹部の逃亡について調査した結果、1999年から2009年までの10年間で逃亡した共産党幹部は1万人、海外へ持ち出されたカネは1020億ドル( 約7兆8000億円 )だったという。
 09年以降、現在までには逃亡者はさらに激増しており、公表されない金額は、おそらくその3倍 になるだろう。


 このため、中国の全空港では逃亡の恐れがある人物のリストが回覧され、出入りを厳重にチェックしている。

 「 2011年版・中国長者番付 」 ( 胡潤研究院作成 )によれば、資産1000万元( 約1億2000万円 )以上の富豪は96万人。 そのうち1億元以上が6万人、10億元以上は約4000人、100億元以上は200人となっている。

 これら富豪の職業分類は、企業経営者が55%、不動産関連20%、投資家15%、企業集団、多国籍企業の高級管理職が10%となっている。

 注目は公職に就いている富豪層で、その数は153人。 中でも全国人民代表大会( 全人代=国会 )代表が75人。 全国政治協商会議( 全国政協 )委員が71人。 党大会代表7人。 つまり、エリート党幹部に成り金が集中しているのだ。

 香港誌 『開放』 ( 2011年10月号 )は 「政治局員のほとんどがスイスに秘密口座を保有しているのは常識」 とした。

 これら共産党幹部を含む大富豪が財産を海外へ持ち出す “エクソダス” の主役である。

 資金の流れる先は、前述のように米国の永住権を得るための投資。 あるいは、ロンドンの高級住宅地の保有。 ロンドンの高級住宅地の28%は中国人が保有し、そのうちの54%はロンドン中心部に位置するという。 イギリスの不動産サイトによれば、その平均価格は約500万ポンド( 約6億円 )。

 またカナダのバンクーバーでも閑静な住宅地を購入しているのは30%が中国人である。 日本でも東京・台場のマンションを棟ごと買ったのは温州の投機集団だった。

 





( 2012.10.26 )

   総額27億ドル以上

 26日付の米紙ニューヨーク・タイムズ( NYT )は、裕福でない家庭の出身で庶民への思いやりが深いことで知られる中国の温家宝首相に関し、指導部入りした後に一族が巨額の財産を蓄えていると報じた。

 記事は 「企業や規制関連の記録を検証したところ、首相の夫人を含む一部親族が、強引な手法で少なくとも 27億ドル相当の資産 を蓄えた」 と伝えている。

 記事によると、温首相の母親や兄弟、子供たちの資産の大半は、温氏が1998年に国務院( 内閣に相当 )副首相に指名されて以降に蓄えられたと指摘。 温氏はその後、2003年に首相に就任した。

 NYTは一例として、2007年には温首相の親族や友人などの共同名義の会社が、中国の平安保険の株式最大22億ドルを保有していたと指摘。 現在90歳になる温首相の母親はその当時、同社に対して1億2000万ドル相当の投資をしていた。

 同紙はこれらの調査結果について中国外務省や温首相の一族に対してコメントを求めたが、いずれも拒否または無視された。

 中国では26日朝、NYT( 電子版 )は英語・中国語のサイトともに閲覧ができなくなっているほか、中国版 「 ツイッター 」 と言える主要ミニブログサービスでも 「 ニューヨーク・タイムズ 」 と、温氏の妻や子供たちの名前による検索ができなくなっている。

 中国外務省の報道官は定例会見で 「 中国の評判を落とし、隠された意図がある 」 報道と述べた。 ウェブサイトへの遮断については 「 法と規則に基づきネットを管理している 」 と述べた。

 中国では政府高官の私生活や資産の状況は闇に包まれており、個人情報は国家機密とみなされている。 それでも、それほどランクが高くない高官の問題は中国や香港、欧米のメディアを通じてしばしば伝えられ、彼らが権力を利用して富を蓄積している様子がうかがえる。 場合によっては、そうした高官が逮捕あるいは訴追されるケースがある。

 次期国家主席のポストが確実視されている習近平氏の一族も、多額の資産を蓄積していると伝えられている。

 ブルームバーグは6月に、習副主席の親族が3億7500万ドルの資産を企業に投資しているなどと伝えている。 それ以降、中国ではブルームバーグのウェブサイトへのアクセスがブロックされ、当局が最高首脳のこうした問題に敏感になっていることが示された。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、温首相の場合、一族の名前が 「 友人、同僚、ビジネスパートナーが関与しているパートナーシップや投資会社 」 の陰に隠されていた、と伝えている。

 同紙によると、温首相一族の資産には、北京の別荘開発プロジェクト、中国北部のタイヤ工場、2008年の北京オリンピックの施設建設にかかわった企業、大手保険会社の平安保険などが含まれている。

 温首相の弟が保有する企業は、大都市の下水処理や医療廃棄物処理事業で3000万ドルに上る政府契約と補助金を受け取り、複数の会社名で2億ドルの資産を保有しているという。

 ニューヨーク・タイムズはこれらについて、政府の記録に基づき推定したものとしている。

( 2013.01.31 )


  

 米紙ニューヨーク・タイムズは31日までに、同社のコンピューターネットワークが中国からハッカー攻撃を約4ヵ月間受け続け、著名記者や他のスタッフのパスワードが盗まれる被害を受けたと発表した。

 被害は、同紙による中国の温家宝ウェンチアパオ首相の一族による蓄財についての調査取材の時期や報道と符号するとしている。 一連の記事は中国当局の反発を招き、中国本土ではタイムズ紙のウェブサイトへの接続が阻止されていた。

 同紙は30日付で中国によるサイバー攻撃に関する特集記事を載せ、コンピューターセキュリティーの専門家に一連の不正侵入についての監視、分析や撃退方法などを依頼したと説明。 自社のネットワーク防御の将来的な防衛策を講じるための措置ともしていた。

 同紙幹部は、温家宝首相一族の蓄財報道に関する取材上の機密情報やファイルが漏出した形跡はなかったと指摘。 ただ、ハッカー攻撃が増していたことを踏まえ、タイムズ紙幹部は昨年11月、佳境に迫っていた米大統領選時での紙面印刷を一時、危惧きぐしたとも明かした。

 タイムズ紙によると、ハッカーは全従業員のパスワードを盗んだ上で、ほとんどが編集部以外の従業員53人の私的なコンピューターへの侵入に成功していた。 米国内の大学にあるコンピューターを経由して攻撃しており、攻撃元を隠ぺいしようと工作していたという。 タイムズ紙が雇った専門家はデジタル上の証拠を収集した上で、中国軍が過去のサイバー攻撃で使ったとみられるのと同様の手口だったと突き止めたと指摘。

 同紙が 中国国防省 にコメントを求めたところ、 「 中国の法律はハッキングやインターネットのセキュリティーを損なう行為を禁止している 」 「 サイバー攻撃で確かな証拠もなく中国軍の関与を非難している 」 などとの反論が返ってきた。 中国外務省の報道官は31日の定例会見で同様の反論を表明した。

 パスワード盗難の被害は蓄財報道を執筆した同紙の上海支局長や中国特派員を以前務めたニューデリー特派員などが含まれる。 同紙はハッカー攻撃は蓄財報道に関する情報源の特定を狙ったとみられると述べた。
 タイムズ紙は、今回のネットワーク侵害で購読者などの私的データが漏えいした形跡はないと説明。 米連邦捜査局( FBI )に自発的に連絡し、ハッカー攻撃を説明したとしている。





( 2013.01.26 )
中国共産党幹部
  

 

 共産党幹部の資産の多くはアメリカにある。 失脚した 薄熙来5000億円 もの賄賂を受け取り、その多くを海外送金したと言われている。 また 温家宝首相 はニューヨーク・タイムズに一族で少なくとも 27億ドル( 約2200億円 ) もの資産を貯め込んでいると報じられた。 さらに 習近平総書記 も親族が 数億ドル の資産を保有しているとブルームバーグに報じられた。

 共産党幹部は中国の将来を信じていない。 いざとなれば身一つで海外に逃げられるように、家族を先に海外へ移住させ、資産の多くを海外に移している。 ちなみに 習近平の姉夫婦 の国籍はカナダ、 はオーストラリア在住、 はアメリカ留学中 である。 そして、海外に移した資産の多くがアメリカに集中していると見ていい。

 仮にアメリカが共産党幹部の資産を凍結すれば、大打撃となる。 尖閣諸島、台湾、南シナ海と中国が覇権主義を前面に押し出して各国と対立している領域で今後アメリカとの緊張が高まらないという保証はない。 万が一アメリカ軍と衝突するような事態になれば、幹部たちは一夜にして資産の大半を失う つまり、在米資産は抑止力となっている。


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( 2013.12.21 )

 





 中国が一方的に設定した防空識別圏が国際情勢を緊迫させていますが、中国は深刻な外交・内政問題をたくさん抱えています。 最近起こった問題だけみても、射撃管制用レーダー照射や大気汚染・公害多発事象、経済失速とバブル崩壊、貿易ルール違反、汚職スキャンダル地方暴動の多発化、報道規制、チベット・ウイグル人権問題や内陸領域抗争( 印・タイ・ミャンマーほか )と南シナ海( 対ベトナム、フィリピン )、東シナ海( 対日 )海域進出 ……。 数え上げればキリがないほどです。 これは、昨年秋から今春にかけての政権交代と同期していると捉えて間違いなさそうです。

 ご存じのように中国のトップには、国家主席・総書記・共産党中央軍事委員会主席という3つの肩書が必要で、昨年11月の共産党全国代表大会で、胡錦涛から習近平にバトンタッチされたのは、国家主席以外の2つのタイトルだけで、今年3月の全国人民代表大会まで、胡主席・習副主席体制、すなわち形式上は二重権力構造が続いたわけです。 いずれにせよ、中国は共産党による一党独裁国家であり、人民解放軍は、政府の指示を受ける国家の軍隊と言うより、共産党の命令・指示に従う 「共産党の軍隊」 なのです。

 少し古い話になりますが、1989年に起きた 「 天安門事件 」 という民主化運動の弾圧とは、共産党が政権保持のため、戦車まで出動させ無差別発砲で多くの若者を死に追いやりました。 しかも、鄧小平・江沢民体制は、国民選挙を経ていない共産党政権の正当性を強調するため、 「 悲惨な状況に苦しめられていた人民を革命で解放した 」 とする歴史教育を徹底したのです。 「 人民解放軍 」 という特異な名称の由来がここにあります。

 そして、もう一つ重要なポイントを知っておくべきでしょう。 「人民の悲惨な生活を引き起こしたのは、中国を侵略した日本人である」 という歴史教育によって、日本の極悪ぶりを強調すればするほど、そこから人民を解放してくれた共産党は素晴らしいということになり、結果として 「反日教育」 になったのです。 実際は日清戦争以前から、西欧列強やロシアによって各地を植民地化されていたにもかかわらず、大戦の終了後、共産革命・建国のお墨付きを得て常任理事国仲間には矛先を向けず、敗戦国日本だけを仇敵に祭り上げたわけです。




 一方、日本では、古くから中国に対し 「 4千年の歴史の国 」 「 孔孟の儒教と老荘の道教を生んだ教養大国 」 などと尊崇の念を持つ人が多いため、中国人の反日感情や商取引に始まり、国政・外交に至るまで、よく理解できないケースもあるようです。 しかし、中華文明は、とっくの昔に滅んでいたのだと主張した先哲がいました。 中国文学研究の泰斗・吉川幸次郎です。 彼は、モンゴルによる旧中華圏征服( 元の建国 )は歴代皇帝および宰相が科挙制度を廃止、読書人、知識人を嫌い、実務の才を官吏に重用したので15代目で元が滅び、明王朝に変わったとき、すでに中華文明は絶滅していた ── と書き残しております。

 それに輪をかけたのが、毛沢東の文化大革命だったわけで、隋や唐の漢字文化や歴史の否定は、漢詩文学も、道徳哲学や文明も葬り去ってしまったのです。 結果は、今われわれが耳目にするごとく 「中国人は息を吐くように嘘をつき、息を吸うように今ついたばかりの嘘を飲み込み、次の息で新たな嘘をつく」 という実態にあるようです。




 防空識別圏のような明確な脅威はともかく、気がかりなのは、中国による日本国土の買い漁りが深く静かに進行していることです。 これは国土法がザル法であることが原因で、所有企業の名称が変わらないと届け出が必要でないため、外国人による土地取得が表に出てこないという不備があるようです。

 一例を挙げると、北海道の伊達市辺りの大きな森林地帯210万坪( 700町歩 )が、数年前、中国企業( 背後に共産党がいる )に買われていたことが最近判明しました。 この森林を所有していたゴルフ場経営会社が買収されたのに、所有社名が変更されてなかったのです。 こうした事例が150件近くあり、10万町歩( 上記森林の140倍 )もの広大な敷地に及んでいるそうで、中には香港企業などが含まれ、水源機能を持つ保安林が数件あることも分かってきました。

 中国の水資源枯渇状況はかなり危機的なので、こうした動きはますます加速されそうです。 すでに、長野・群馬・山梨や三重・滋賀などから四国・九州、奄美・沖縄にまで手が伸びているそうですから、国土法や森林資源環境保護法などの立法が急がれます。

 ほかにも、民主党政権下で、新潟県庁近隣の一等地( 5000坪 )が、領事館用? との怪しげな使用目的で、中国政府と売買契約されています。 東京都港区や江東区でも執拗な土地・建物取得が繰り返されているようです。 逆に日本国や日本人は、一切中国の土地取得ができないのですから、なぜこうした不平等取引がまかり通るのか、大きな疑問を禁じ得ません。

 尖閣諸島の問題を単に海洋資源に目がくらんだ動きなどと論評する識者もいますが、それは甘すぎる解説ではないでしょうか。 沖縄を、故意に 「 琉球 」 と呼称し、その一部尖閣諸島のみならず、やがては琉球全部を、台湾同様に百年の計で、自国に組み入れようと算段しているに違いありません。 チベット、ウイグル、内モンゴル併合の経緯を見れば瞭然明白です。




 中国の帝国主義的な膨張戦略の一環としての軍事的脅威を特別警戒するのは、国境を接する大国、ロシアやインドのみならず、アジア・オセアニア、米大陸西岸にまたがる多くの周辺諸国で、特に 「 AA、AD軍事戦略で、米国を西太平洋から追い出す 」 と中国に名指しされたアメリカの警戒感は急に高まりました。

 米国は、すでに太平洋に先端技術兵器搭載の艦艇や無人偵察機を投入し、中国潜水艦の音だけを聞き取るソナーとフォード級の空母2隻の実戦配備で、中国海軍を完全制圧できるほか、それらは、中国のレーダーを撹乱かくらんしてミサイルを除け、逆攻撃に転ずることができるそうです。

 さらに無人戦闘機やステルス性の新鋭戦闘爆撃機を続々と配備計画中で、これは、30年前ソ連のブレジネフの軍事力増強を読みきり、当時のレーガン米大統領が宇宙戦略による圧倒的な軍事力格差による完全抑止に成功した事例とそっくりで、戦わずして、中国の敗北が明白となっているのが現実です。

 TPPとは、 「 環太平洋( 安保 )戦略と( 貿易 )経済連携協定 」 のことで、あえて 「 Strategy 」 の語句をはずした意図が見え隠れしています。 早とちりで、米国の時代が終わったと、北京詣でをする日本の政治家や中国とのFTAをTPPより優先する一部政財学界の平和ボケを憂慮する次第です。




 国際社会の関係性は、持てる軍事力と安保協定が決定的要因になるというのが常識です。 優れた経済力や工業能力と先端技術力や諜報力などの集大成が具現化されるのが、国防力である以上、外交そのものが、そうした前提条件の上に立って、初めて機能することを知っておくべきでしょう。

 ソビエトはゴルバチョフに至って崩壊しましたが、もし、無謀にもアメリカ対抗軍事戦略に走る中国人民軍を統御できなかった場合は、習近平にソビエトの轍を踏ませることまで考えているアメリカの指導層が増えているそうです。

 そんなことを予感しているのか、今、中国の指導層はフランス革命前後の書籍やアメリカ民主主義の研究書を、しきりに求めて読んでいるようです。 体制変化を求める動きは内外に広がりつつあり、 「 中国が突如崩壊する可能性が無きにしも非ず 」 という想定だけはしておいた方がよさそうです。

 今、日本に問われているのは、新しいアジア・太平洋環境の中で、民主主義と自由経済を共有し、政経産学文の各面で協力しあう 「 同盟体制を強化・維持しながら、自国は自分たちで守る 」 という心構えと姿勢を内外に向けて明確に打ち出すことだろうかと考えます。 国の安全を守ることは、憲法や政治問題を越えた国民の基本的義務でなければなりません。 太平洋戦争の失敗を繰り返さないためにも、激動する世界情勢の中で、最新かつ正確な情報を集め、冷静な判断をすることが肝要です。

 それには、面目や体裁といったメンツにこだわることなく、正道を指向する政官財学のリーダーと支援する国民の良識が求められていると思量いたします。