( 2010.06.04 )


 5月24日、大韓民国( 韓国 )大統領がほぼ20年ぶりに北朝鮮に言うべきことを言った。 韓国大統領は長く、北朝鮮政権に対して 「 言論の自由 」 を行使できなかったが、北による哨戒艦 「 天安 」 の撃沈に怒った李明博大統領が、特別談話で禁忌を破った。

 多くの韓国国民が 「 北は自らの行為に相応する代価を支払うことになろう 」 という大統領の言葉を聞き、鬱積うっせきしていたものが解消されると感じたことだろう。




  「 われわれは天安艦沈没を通し、もう一度身にしみる教訓を得た。 世界で最も好戦的な集団と対峙( たいじ )している現実を忘れていた 」 との言葉は事件の教訓を要約したものだ。 46人の戦死で、韓国人はいつ崩れるか分からない土手の上で生きている現実を自覚した。

 詐欺的で反逆的な金大中、盧武鉉両氏の2代の政権がとった 「 太陽政策 」 は、朝鮮半島で冷戦が終わり、平和の時代が到来したという幻想を植えつけ、対北警戒心と警戒態勢に穴をあけ、北に従う勢力の活動の舞台を提供した。

 演説で李大統領は金正日総書記の名こそ挙げなかったものの、彼が指導する北政権を 「 反省なきテロ主犯、戦争犯罪者、民族反逆者 」 と次のように批判した。

 テロ主犯  「 朝鮮戦争での南侵以後、北はアウンサン廟( びょう )( 現ミャンマー )爆弾テロ、大韓航空機爆破事件など武力挑発を繰り返してきたが、一度も公式に犯行を認めていない 」

 戦犯  「 北は、今回の天安艦事件で国連憲章に違反し、朝鮮戦争の休戦協定、南北基本合意書など朝鮮半島の平和と安定のための既存の合意を壊した 」

 民族反逆者  「 いったい何のために誰のために、こんなことをするのか。 同じ民族として本当に世界に対して恥ずかしいことだ 」



 金大中元大統領が金正日総書記を 「 見識ある指導者 」 と激賞し、2000年6月、平壌宣言で北朝鮮政権を 「 民族共助のパートナー 」 「 統一のパートナー 」 とみなしたのとは全く逆だ。

 テロ主犯、戦犯、民族反逆者は戒めの対象であり、協力の対象ではない。 李大統領は北を戒める政策を発表した。 最も注目できるのは、 「 対北心理戦 」 放送と北への風船飛ばしの再開だ。 北はこれらに最も神経質に反応した。

 対北心理戦放送は、軍事境界線付近に配置された韓国軍が、北の軍人たちに毎日、内外の情報を流すものだ。 04年以後中断していたが、これを再開すれば北に動揺が起きる。 「 金正日が天安艦を撃沈させたから、韓国政府は今後コメを送らない 」 という一言で、北の市場での米価は暴騰する。 米価は民心だ。 金正日政権は、上昇する物価と民心の激しい抵抗に突き上げられよう。

 北の政権は即座に、放送再開の場合は放送施設を照準射撃すると警告した。 万一、北が放送施設に向け発砲すれば、韓国軍の報復を受ける。 これは天安艦撃沈より重い領土攻撃だとして、北をかばう中国の政治的認知も少なくなる。 ある脱北者は、北への心理戦放送と風船飛ばしの再開は金総書記の頭上への核爆弾投下と評価した。

 中国は国連安保理の常任理事国だが、北朝鮮とパキスタンの核開発を支援、黙認してきた。 そのうえ、政治難民として居住地を提供すべき脱北者を北に送り返している。 韓国政府は細かい調査で、事件が北政権によって起こされたことを客観的、科学的に究明した。 米国、日本、国連事務総長など世界の責任ある国や機構がすべて韓国の発表を尊重し、対北批判や制裁を強めようとしている。



 問題は中国政府だ。 彼らは 「 客観的、科学的調査の重要性 」 を強調してきたが、実際に、そうした結果発表があっても、快く受け入れようとはしない。 中国政府がそういう姿勢ならば、中国が国連安保理の常任理事国でいるのはおかしい。 真実を認めることのない北と同様の 「 ならずもの国家 」 「 テロ集団 」 ならいざ知らず、国際秩序を維持するはずの大国がそんなことはできないはずだ。

 北朝鮮をかばうのと、真実を受け入れるのは別問題だ。 真実が通じない国を相手には、貿易も対話も外交も不可能になる。 中国指導部も悩んでおり、北の仕業だと思っていても、表向きは知らないふりをしようとするだろう。 中国がこの明白な真実を受け入れなければ、常任理事国の資格への疑義を申し立てねばならない。

 今回の事件で、韓国政府と国民が中国に見せる態度は、朝鮮半島の統一過程で中国が韓国を扱うのに大きな参考になる。 韓国が中国にとってくみしやすいように振る舞うならば、中国は統一過程で韓国をうまく操るだろう。

 中国共産党は、マルクス・レーニン主義に代わる政治理念として儒教の現代版を考えている。 儒教は仁義を重んじ、実事求是( 事実を尊ぶ )の行動哲学を持つ。 孔子や老子、仁義の国が無道なテロをかばえば、国際的にはもちろん、国内的にも指導力を発揮できはしない。