( 2012.12.16 )

 


上海の日本総領事館近くで行われた「反日デモ」で掲げられた毛沢東元主席の肖像。このことは、格差拡大、特権階級の不正蓄財などに不満を抱く「反政府デモ」の側面も色濃いことを物語る。反日はデモの本質ではなく、悪用されているのが実態だ。
 日系企業が相次ぎ襲撃されるなど中国各地で暴徒化した9月の反日デモから3ヵ月。 事態は沈静化したかにみえるが、リスクまで消えたわけではない。

 「いわばデモのための反日であり、反日のためのデモではなかった。 反日は大義名分となって、今後も悪用される」。 上海エリス・コンサルティングの立花聡総代表( 48 )は、中国人の反日への姿勢をこうみる。 「イスラム過激派による反米テロと比べたとき、( 物質的な豊かさを求める )唯物ゆいぶつ主義者の中国人による反日がどこまで厳格か。 本質を見抜く必要がある」 と話す。


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 立花氏が注目したのは 「 反日便乗スト 」。 9月の反日デモに乗じて複数の日系企業の中国工場で従業員による突然のストが発生し、あわてた日本の本社からの指示であっさりと要求に応じてしまったケースがある。

 しかし、労組が手続きを踏んで行うストは適法でも、 「従業員が散発的に起こす山猫やまねこストは明らかに違法で怠業( サボタージュ )。 ルールなきストを集団で行うことはテロに近い」 と立花氏はみる。 反日への便乗、あるいは反日を悪用して打つ山猫スト。 中国人従業員に 「 やらねば損 」 と映る事態は問題だ。 日系企業はどう対処すべきか。

 立花氏は、 「 違法ストを打ったら従業員側が損をする経営構造を作るのも方策 」 という。 工場の従業員の20%をエリート層の管理職として、80%の職員と賃金制度を分ける。 あえて階級社会を作り、例えば一般職員が違法ストを打ったら管理職にはボーナスを支給しない、との制度にすれば、管理職側は情報収集に必死になり、違法スト発生を未然に防ぐ力になるからだ。




 今後、日中関係で再び政治問題が発生しても経営が立ち行くよう日系企業は体質改善をすべきで、 「 そのために( 階級構造を作るなど )中国化を推し進めるしかない 」 と考えている。 中国ビジネスでは次の経営戦略を練る上で、日系企業を3つのグループに分けて考えている。

 まず、中国に加え東南アジアなど別の進出先で製品供給のバックアップ態勢が取れる 「 チャイナプラスワン組 」。 ただし資金や人材に余力のある企業でないと難しい。 次に、取引先が全て中国に進出したり、販売市場が中国にしかないため、撤退しようがない 「 チャイナオンリー組 」。 この場合、日本の成功体験を捨て、徹底的に現地化して中国化を進める必要がある。

 最後は、労働集約型の工場など今後、経営悪化が予想される業種や企業で、立花氏は 「 チャイナゼロ組 」 と呼ぶ。 投下資金の回収を断念してでも、早期の撤退を決断すべき。 将来的に中国の消費市場が急拡大するまでの先行投資だと判断し、体力勝負に出るのは危険だと話す。




 中国は政府関係者や既得権益層など20%の特権階級が国家の富の80%を握るとされる。 不正蓄財など富のゆがみがあり、中産階級層の形成はまだまだだ。

 立花氏は、 「低成長時代に入ると一部の特権階級は中国でのうまみを失い、不正蓄財を含む資産を持って海外に逃げ切ろうとするだろう。 そうなれば大多数を占める負け組だけが取り残され、13億人の中国も 『幻の市場』 になってしまう。 社会動乱の要因が拡大する」 という。

 悲観的なシナリオだが、説得力はある。 「一連の反日デモは日系企業が( 中国事業を )ゼロベースで再考するいいきっかけになった」 と立花氏は話す。 中国に幻想を抱き続ける経営者には、今こそ現実を直視した冷徹な判断が求められている。