( 2012.09.25 )

  

 2012年9月23日、中国経営報によると、日本の尖閣諸島国有化に抗議する反日デモが中国各地で行われたことを受け、キヤノンやトヨタ自動車やパナソニック、ユニクロなどが操業を停止することになったが、こうした日本のブランドと関係の深い中国企業も事態の推移に注目せざるを得ない状況にある。

 中国のキヤノン販売代理店の責任者は、デジタル撮影機器の市場で日本のキヤノン、ニコン、ソニーの3社は圧倒的なシェアを維持しており、他国のブランドが入り込む隙はまったくないと、デモ隊の姿を見て複雑な思いを抱きながら話した。

 日中関係の悪化で日本製品ボイコットの気運が高まり、販売高が急激に悪化しているものの、撮影機器市場では日本の製品に代わる存在はなく、今後経営がどうなるか見通しが立たないと話している。 また、撮影に使用するフィルターや三脚、カメラバッグなどの多くは中国で生産されており、影響はきわめて大きいという。

 キヤノンは中国での売り上げを急速に成長させており、今年9月には 「キヤノン博覧会2012」 を開催。 キヤノン中国の小澤秀樹社長は2017年の売り上げを100億ドル( 約8000億円 )にすることを目標に掲げていたが、尖閣諸島をめぐる対立の “流れ弾” の影響を受けようとしている。

 キヤノン中国は従業員の90%以上が中国人であり、2003年に起きた反日情勢にも耐え、コピー機の開発や生産、販売チェーンも中国にある。 ユニクロなども同様の状況だが、現地化を進めても政治的な影響を受ける日本企業に困惑の色が出ている。





( 2012.09.17 )

 

 中国の反日デモが “日本”企業を襲っている。 日本のマスメディアはこれを連日報道するが、われわれ日本人と何の関係があるというのか。 グローバル企業は国家と関係なくリスクが大きくなればその土地から撤退するだけだ。 それがグローバルな国家間( 都市間 )の投資誘致競争の必然的な結果である。

 尖閣国有化に伴い、中国で反日デモが激しくなっている。 これ自体は所詮、いつもの官製 “容認”デモなのでどうでもいい。 もちろん、日本人の生命と財産を守る必要はあるが、日本政府は既に行動している。
 「北京の日本大使館の堀之内秀久公使は15日、デモが暴徒化し日系企業が放火されたことなどを踏まえ中国外務省の羅照輝アジア局長に遺憾の意を伝え、邦人と日系企業の安全確保を申し入れた」 ( 日経新聞 より )
 ただ、日本政府が 「邦人」 の安全確保を要請するのはわかるが、 「日系企業」 について日本政府がいちいち安全確保を要請する必要があるのだろうか。 グローバル経済において、グローバル企業の国籍が何かということは本質的に意味を持たない。 「日系企業」 が襲われているというのなら、それはその 「日系企業」 が中国政府に対して直接要請をすればいいだけの話である( 「日系企業」 の幹部には中国人もいるのだから )。

 グローバル化とは、グローバル企業が無国籍化し、純粋に投資効率を求めて投資先を決めることを意味する。 税金は安いか。 労働市場は硬直的でないか。 労働者の質は高いか。 ビジネスを阻害する規制はないか。 さらには、治安は良いか。 地政学的リスクはないか …… こうした条件を考慮した上で、投資先が決定される。

 日本企業も例外ではない。 1980年代から空洞化ということが言われ続けているが、これもグローバル化に伴い、投資先として日本の魅力が薄れたことが原因だ。 “日本”企業は日本から撤退し、アジアなど他に投資効率の優れた土地を目指していった。 そこに 「愛国」 だのといった甘っちょろい感情は存在しない。

 それを日本政府もよく知っているからこそ、とりわけ21世紀に入ってからは、対日直接投資を増やすことが目標とされた。 そして、具体的な政策としてさまざまな規制緩和や減税措置などが講じられてきたのである。 対日直接投資の誘致対象には、当然のことながら “日本”企業も含まれる。

 まだ多くの日本人が誤解しているフシがあるが、グローバル化した “日本”企業はわれわれの身内でも何でもない。 ビジネスの論理に基づいた、あくまでも冷徹な交渉相手の1つなのである。 だから、 “日本”企業がリストラをしたとか、工場を閉鎖したといったことに対して感情的に批判するのは間違っている。 われわれ日本人が “日本”企業を引き留めたいなら、投資先として魅力ある土地となるよう、日本政府がさまざまな構造改革を進めなければならない。

 同じことは “日本”企業の経営者についても言える。 彼らはグローバル企業の経営者なのだから、 「同じ日本人だよね」 と日本政府や日本人に甘えることは許されない。 日本人労働者は給料( 時給 )以上に働く必要はないし、ムダな忠誠心を抱くこともない。 また、グローバルな “日本”企業の経営者が、日本政府に対して民族主義的な補助金や保護規制を求めるのは完全に間違っている。 日本政府および日本人からしてみれば、対日直接投資をしてくれるのであれば、別に “日本”企業以外のグローバル企業であっても構わないのであり、 “日本”企業だけを救済する必要など微塵もないのだから。

 海外での収益の一部が “日本”企業の日本本社に還元されるといった意味合いもないことはないが、日本政府および日本人にとって重要なのは何よりも雇用創出だ。 それなのに、何を勘違いしているのか、日本国内で雇用を生み出さないくせに日本の代表面をした財界人( グローバルな “日本”企業の経営者 )が、いちいち外交問題に口を出してくる。 小泉首相の靖国参拝で反日デモが起きた時も、 「中国で商売できないから靖国参拝やめろ」 と批判した財界人が多くいた

 グローバル企業としての最低限のマナーは、外交問題に口を出さないことだろう。 その上で、地政学的リスクや治安リスクを考慮に入れながら投資をしていく。 今回ならば、中国という治安リスクの高い土地において、積極的に投資をしてきたということは、それなりのリスクヘッジをしてきたはずだ。 まず中国の治安当局に安全確保を要請し、それでも治安リスクが軽減されなければ、静かに撤退する。 それがグローバル企業としての合理的な判断というやつである。

 日本政府としては今回の反日デモは、 「中国は治安リスクが高くて大変でしょう。 治安も良くて労働者の質も高い日本が投資先としてオススメですよ」 と、ニッコリ笑いながら “日本”企業の誘致をするチャンスだ。 グローバル企業の1つとして “日本”企業に接することが、日本政府の正しい態度と言える。 だから、日本政府は “日本”企業についていちいち安全確保を要請する必要などない( 繰り返しになるが、勤務先が “日本”企業であろうが “中国” 企業であろうが、中国で働いている日本人の安全確保についてはしっかりと要請しなければならない )。 靖国参拝にしろ、尖閣国有化にしろ、 “日本”企業の経営者から指図される筋合いもない。

 一方、中国政府はグローバルな国家間( 都市間 )の投資誘致競争で一歩後退したと言える。 中国の “日本”企業は、中国での雇用を創出する “中国人のための企業” である。 その企業に対して襲いかかるというのだから、中国人の 「愛国」 というのは理解不能だ。 中国政府は “日本”企業を人質に取ったつもりなのだろうが、 「英貨排斥( イギリス資本排除 )」 とか 「日貨排斥( 日本資本排除 )」 と言っていた100年前から何の進歩もしていない。

 中国における “日本”企業襲撃を連日大々的に報道する日本のマスメディアは、結果的に “日本”企業を人質に取るという中国政府の方針に加担している。 しかし、ここまで述べてきたように、中国の “日本”企業はわれわれ日本人とは無関係のグローバル企業だ。 日本政府は、グローバル経済を理解していない中国政府の脅しに屈することなく、淡々と尖閣国有化を維持し、中国に住む日本人の安全確保を要請していくべきである。