官僚
アメリカ、カナダなどに118万人が脱出準備




 600万人とも1000万人とも言われる中国の公務員。 その1割以上にあたる高級官僚たちが、真っ先に逃亡の準備を始めている ──。

 昨年8月、中国・北京空港。 1機の飛行機を100人以上の警官が取り囲む異様な光景が広がった。 中国国際航空の北京発ニューヨーク行きの便が約7時間のフライトの後、突然、引き返してきたのだ。 表向きは同機が脅迫を受けたためという理由だった。
 しかし一部の情報では、海外逃亡を図った中国高官が搭乗していることを情報機関である国家安全部が知り、亡命を阻止するためにとんぼ返りさせたとされる。 確かに同機が脅迫を受けたとしても北京空港に戻る対応は奇妙だし、警官が100人規模で飛行機の周りを固めたことは異例中の異例である。 逃亡に失敗したとされる高官が誰で、その後どうなったのかは藪の中だ。
 中国共産党幹部や政府高官が海外逃亡を企てるケースが近年増えている。 明らかになったものだけでも、例えば09年、広東省中国人民政治協商会議主席( 当時 )の陳紹基が腐敗などの党紀違反に問われ、役職も党籍も剥奪された後、関係の深かった高官約150世帯が海外へ逃亡したと言われている。 少し遡るが、03年には当時、浙江省温州市副市長だった楊秀珠が娘や娘婿らと上海空港を飛び立ち、シンガポール経由でアメリカヘ逃亡した。 楊は約2億5000万元( 約40億円 )にものぼる収賄の疑いをかけられていた。 05年にオランダで拘束された楊は、その後中国側に引き渡された。
 中国社会科学院の研究によると、海外に逃亡した中国高官の数は1990年代以降、1万6000~1万8000人にのぽる。 中国の統計は正確ではないため、この数字も根拠ははっきりしないが、実際の逃亡人数はもっと多いと私はみている。 さらに言えば、これから逃亡する高級官僚はどんどん増えるだろう。


幹部の子女の75%が米国籍か永住権を取得

 なぜこれほど多くの高官が海外へ逃亡するのか。
 理由はいくつかあるが、今めところは前述のように汚職の摘発を恐れて高飛びするケースが目立つ。 政権が代わったり、自分の上司が失脚したり、別の派閥から上司が来たりすると、いきなり汚職の疑いをかけられてしまうことが日常茶飯事の国である。 財産を築いても中国国内にいる限り、いつ奪われてもおかしくないため、海外に逃げる。
 汚職の疑惑を突然かけられるのは、ランクの高い官僚であっても例外ではない。 中国人の権力闘争の人物相関図は日本人には理解できないほど複雑であり、例えば現在の習近平体制は 「 反腐敗 」 の姿勢を打ち出しているが、誰が狙われているのかはまったくわからない。 当面安泰と言えるのは、せいぜい習近平国家主席を筆頭に激しい権力闘争に勝ち残ったチャイナーセブン( 中央政治局常務委員会常務委員の7人 )、その直下の政治局員、これら量局幹部計25人程度までである。 それ以外の官僚は、いつ誰が海外に逃げてもおかしくない。
 逃亡先として人気なのは、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどだ。 共通するのは移民の受け入れが盛んな国という点で比較的、移住のハードルが低い。 多額の資金を持つ中国高官のような移民は受け入れられやすい。
 一般的な海外逃亡の手順はこうだ。 まず自分の息子か娘を留学させる。 次に妻が出国する。 地下銀行などを使って資産を中国から海外に移転するといった準備を進め、最後に本人が中国を脱出し、逃亡が完了する。
 各省や直轄市幹部の干女の約75%がアメリカのグリーンカード( 永住権 )、あるいはアメリカ国籍を取得しているとされる。 自分の子供がアメリカ国籍を持っていれば、本人も永住権を取りやすいからだ。 子女の留学が本人の逃亡の布石となるのである。
 95~05年の統計だが、子女を海外に定住させた中国高官は約118万人にのぽる。 言ってみれば彼らはいつでも海外逃亡が可能なのである。 最終的に身ひとつで海外に逃げ出すことのできる彼らのような逃亡予備軍は 「 裸官 」 と呼ばれる。 中央政府だけでなく、地方政府にも多くの裸官が存在する。


経済成長の停滞が “トリガー” となる

 アメリカなど逃亡先で彼らはどのような生活を送るのか。 先に海外で暮らしている子女は英語を話せるが、最後に中国から逃げてきた本人は、英語が堪能ではないケースが少なくない。 英語を話せれば現地に溶け込めるかもしれないが、溶け込めない場合は、同郷の高官たちとコミュニティーをつくって暮らすケースが多い。 カナダやアメリカの高級住宅地には 「 裸宮村 」 と呼ばれるエリアができている。
 中国国内に残っている 「 裸官 」 たちはどのタイミングで動き出すのか。 これまで同様に収賄の疑いをかけられることをきっかけに逃げ出す者が出てくるだろう。 さらにこれから増えるのは、中国という国家の未来に希望を失った逃亡だ。
 腐敗・汚職とセットになっている激しすぎる権方闘争、無理に無理を重ねた結果生じた環境汚染など、政府の要職に就く者は中国という国家の問題点を間近で見ている。 だからこそ、他の国民に先駆けて逃げ出す準備を怠らないのだ。
 ー斉逃亡のトリガーとなるのは経済成長の減速・停滞であろう。 国家の危ういバランスをなんとか見せかけの成長で支えていることを裸官たちは知っている。 遅かれ早かれ、その時はやってくる。
 

 「裸官」 たちは子女だけでなく愛人も海外に住まわせ、いざという時の逃亡先候補にしているようだ。 “妾村”と呼ばれる高級住宅街がロスにあった ──。

 ロサンゼルスのダウンタウンから車で30分。 人口4万9000人の約3割を中国系が占める街、ローランドーハイツがある。
 ここ10年あまり、中国の富裕層が投資目的を兼ねて先を争うように高台の高級住宅地を買い漁った。 商業地には中国語の看板が立ち並び、行き交ラ人はアジア系が多い。 ごくわずかなコリアンとベトナム人を除けばほとんどは中国系だ。
 この街の住宅地の一角が数年来、 「 Ernai Village 」 と呼ばれている。 「 Ernai = 二奶 」 とは中国で愛人の意。 つまり 「 妾村 」 だ。 中国の高級官僚などが愛人に “別荘管理” をさせていると台湾系アメリカ人が話題にし、現地の華字メディアなどでも報じられた。 どんな場所なのか。
 地元の不動産業者によると平均的な家屋は寝室4部屋、バスルーム3つ、プール付き、3800平方フィート( 約353㎡ )で、ざっと90万ドル( 約8900万円 )。 中国人富裕層にとっては現金払いできる額だという。
 「 物件が気に入ると、ドル紙幣をびっしりつめたトランクを持ち出してきて、ぱっと開け、これで払うと言い出す。 彼らにとっては住宅ローンもクレジットもあったもんじゃない 」 (地元の中国系不動産業者)
 商業地を抜けて高台に向かって車を走らせると、高級住宅が立ち並ぶ。 周りを高い塀で囲う家屋が目立つ一帯が 「 妾村 」 と呼ばれるエリアで、 「 中国高官らの愛人が数十人は暮らしている 」 ( ロス在住の台湾系中国人 )とされる。 昼間に外出する者の姿はあまり見られず、塀の向こう側の暮らしぶりは外からはわからない。 地元の中華料理店で働く中年の台湾系女性はこう言う。
 「 時々、愛人だとすぐわかる若い女性を連れてくる中年男性がいますよ。 ポルシェでやってきてチップもはずんでくれるし、ありかたい客よ。 なんでも彼女にアメリカ人の家庭教師をつけて英語を習わせているんだって。 愛人を囲うなら中国よりもアメリカのほうがいいんじゃないの。 遠すぎて奥さんにばれないしね 」
 かつては上海や深洲にも存在が指摘された 「 妾村 」 だが、こうした “国外進出” も高官たちが中国から逃げ出すための布石なのかもしれない。




不買
ロサンゼルス郊外の民家には 「20人の中国人妊婦が住む家」 まで

 


 自国の医療や製品が信じられない ── 中国人のなかにはすでに“行動”を起こし始めた者がいる。

 「 医療はアメリカのほうが進んでいて、中国より安全。 それに将来は子供にアメリカの教育を受けさせたいから、市民権があるほうが便利でしょ。 非合法なことじゃないし 」
 はるばる上海からロサンゼルス近郊のチノ・ヒルズに出産のため渡米して来た中国人妊婦の一人はそう語る。
 近年アメリカでは中国人の 「 Birth Tourism 」 ( 出産ツアー )が急増中。 中国本土から、観光ビザを握り締めた身重の女性が殺到しているのだ。
 合衆国憲法修正第14条は 「 アメリカ合衆国で生まれ、あるいは帰化したもの、その司法権に属するものすべてはアメリカ合衆国市民であり、住む州の市民である 」 と定めている。 米国独特の 「 出生地主義 」 が出産ツアー人気の一因である。
 彼女らが目指すのはチノ・ヒルズやアーケーディア、サングーブルなどロス近郊で中国系住民が多い市や町。 商業地区には中華レストラン、スーパーなどがひしめき、中国系医師や看護師のいる総合病院まである。
 渡米出産ツアーが商業化したのは4~5年ほど前からで、その走りがディズニーランドのあるアナハイムにあるU社。 航空券や出産前後の滞在先の手配、入院・出産費用などを含め1万4000~2万2000ドルで請け負う。
 全米保健医療統計センターによると、外国籍の母親がアメリカ国内で産んだ新生児の数は08年で7462人。 それ以降の統計はないがかなり増えていると考えられ、中国からの出産ツアーも急増していると見られる。
 元読売新聞北京支局長の丹藤佳配氏はこう分析する。
 「 尖閣問題では “ 愛国” を掲げる中国人だが、彼らの愛国心は国に向けられたものではなく “漢民族共同体” に対するものと言える。 国家としての中国に嫌気がさしている彼らにとって、380万人の同胞が住むアメリカは “もう1つの祖国”。 だから出産ツアーや、それを受け入れる体制ができていくのだろう 」
 トラブルも起きている。 サンゲーブル市役所には 「 真夜中、赤ん坊の泣き声がうるさい 」 と苦情が殺到。 市が住宅地区で抜き打ち調査した16軒のうち5軒は中国系住民所有の民家で、1軒に20人の中国人妊婦を住まわせていたケースもあった。 住宅地区での 「 商業活動 」 は市条例違反のため、この5軒は “営業停止” 命令を受けた。
 中国人妊婦たちには自国の医療サービスヘの拭い難い不信感がある。 これは医療に限ったことではなく、中国人による自国製品の “不買行動” は、経済発展と比例して活発化しているから皮肉である。
 昨年来、ドイツやオランダなど欧州諸国では新生児用粉ミルクが深刻な品薄状態となつている。 中国人観先客が大量に買い漁っているためだ。 08年に中国製粉ミルクに工業用メラミンが混入していた事件が発覚して以来、中国人は自国製をボイコット。 輸入品に殺到したが、すぐに品薄となった。 そのため個人や業者が外国まで買い出しに行く事態となっている。 中国人の買い占めによりドイツでは粉ミルクの価格が倍以上に跳ね上がり、ロンドンのスーパーや薬局は 「 購入は1人2個まで 」 とする販売制限を始めた。
 さらに 「 中国製の紙おむつでは赤ちゃんのお尻がかぶれる 」 という情報が広がり、中国人の母親は中国製をボイコット。 特に日本製に人気が集中して貴重品となり、偽物が出回る事態となっている。
 中国紙 「 法制晩報 」 が昨夏に行なった世論調査によれば、中国人の80.4%が中国産食品の安全性に疑問を抱いており、政府による食品安全検査などを信用していない。 特に生肉や肉加工製品、スーパーで売っている惣菜などの安全性に疑問を持っているという。
 中国人の 「 チャイナーフリー( 中国製を使わない )生活 」 は、ますます広がりそうだ。




資産流出

一番人気は投資移民できるカナダ。 深圳 香港間ではスーツケースで運搬



 中国の富の70%は上位0.4%の富裕層が握っている。 その富が、どんどん国外へ流出中だ。 富裕層はどれだけの富をどのように持ち出そうとしているのか。

 2011年に発表された 「 中国個人財産管理白書 」 によると、資産1000万元( 約1億5000万円 )以上の富裕層のうち、すでに14%が海外に移民申請中で46%が申請準備中だという。 つまり中国の億万長者の60%が海外脱出を計画しているのだ。
 この1000万元以上の資産家の数は約96万人。 平均資産は6000万元( 約9億円 )に達する。 そのうちの60%( 約60万人 )が海外移住を検討しているということは、中国から流出する資産は単純計算で36兆元、日本円にして約540兆円になる。 日本のGDP( 国内総生産 )をも上回る規模だ。
 中国では、1950年代後半に食糧問題改善のために農民を増やす大躍進政策が取られたが失敗し、4500万人が餓死する事態を招いた。 さらに66年から始まった文化大革命では1000万人以上のインテリ層が排除され、その富を奪われた( 全体の犠牲者は3000万人以上とも言われる )。 このように国家に一方的に富を収奪される記憶が刻み込まれているため、富裕層は国家を信じていない。
 そんな彼らが海外に資産を逃がす手口は多種多様だ。 正攻法は 「 投資移民 」 である。  筒単に言えば移住先の国にカネを積んで国籍を取得する方法で、例えばカナダでは約1億円の資産を持ち、5年間で約6000万円の州債券を購入するといった投資をすれば永住権とパスポートが得られる。 この方法では医療費や子供の教育費が高校生まで無料となるため、富裕層には安い買い物と言えるだろう。
 投資移民を認める制度は米国やオーストラリア、シンガポールなどにもある。 ただ、米国ではオバマ政権が移民政策を厳しくしたこともあり、今は中国の資産家の間ではカナダが一番人気と聞く。 カナダでは投資移民政策による中国マネーが経済を支えているという側面もあるようだ。
 もっと “原始的” な方法もある。 スーツケースや財布、ポケットなどに現金を詰め込んで直接持ち運ぶハンドキャリーという手口である。
 例えば深川と香港を結ぶ鉄道なら、パスポートを見せるだけで容易く出国できるため、常套手段となっている。 自ら持ち出す以外に運び屋を使うケースも多い。
 また、チェックが厳しくなったとはいえ、飛行機で運ぶケースも多い。 米ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によれば、カナダのトロントとバンクーバーの2つの空港で11年4月~12年6月に中国人から押収された無申告の現金は総額11億円以上だったという。
 重慶市トップだった薄煕来が不正蓄財で失脚し、昨年10月26日のニューヨーク・タイムズで温家宝・前首相が総額27億ドルにも及ぶ隠し資産の存在を暴かれたように、共産党の上層部にまで汚職が蔓延している。 習近平体制では汚職撲滅の機運が高まり、当局も監視の目を光らせているが、それでもなお巧妙な手口で資金流出は続く。
 ある中国事情通は、 「 金融取引は厳しく制限されるが、輸出入に伴う資金移動は監視が緩いため、貿易に紛れ込ませる方法が横行していた 」 と言う。 さらにこう続けた。
 「 海外送金のためにここ数年使われてきたとされるのがマカオのカジノだ。 多額の現金を中国本土から持ち出すことはできないが、マカオではジヤンケットと呼ばれる仲介人から資金の融資を受けられる。 その資金でカジノに行くと “偶然” 勝つことができるようになっている。 今度はカジノのチップを香港ドルの小切手に換えるなどして海外の口座に送金する。 ジャンケットには後日、本土で資金を “返済” する。 要はカジノを通じたマネーロンダリングだ。 中国政府がカジノ規制に動くとされるので、また新たな手口が考えられるだろう 」
 他にも、 「 中国本土で人民元を預かり、香港で香港ドルを受け取れるようにする “地下銀行” を使う手もある 」 ( 同 )というように、利に賢く国のために働く気など毛頭ない中国人は、あの手この手で中国から資産を逃がしている。




留学エリート

せめて子供だけでも海外に逃がしたい!?

 使


 中国人留学生が世界で急増している。 その背景には汚職官僚や金持ちの思惑がある。

 付近を武装警察が巡回する物々しい雰囲気の中、北京のアメリカ大使館前には、ビザを申請する中国人でつねに数十人の列ができていた。 周囲に張り巡らされた警戒線の外側には家族が立っている。 ある中年女性に声を掛けると、一人息子が留学ビザを申請するのに付き添ってきたという。 夫は国家公務員だ。
 「 将来、息子がアメリカに残るようなら、一家で移住することも考えていますよ 」
 「 夫は 『 裸官 』 か 」 と突っ込むと、 「 違うわよ。 他の役人は知らないけれどね 」 と言って意味深な笑いを浮かべた。
 上海在住の作家・邱海濤氏が話す。
 「 中国の役人の数は1000万人、そのうち許認可など何らかの権限を持つ中級以上の幹部は10万人。 そのほとんどが裸官と見られています 」
 裸官の存在によって 「 官二代 」 ( 役人の子女 )の留学が増えていることが、中国人全体の留学者数を押し上げている。 「 冨二代 」 ( 金持ちの子女 )の留学も多い。 中国が崩壊する時に備え、まず子供を留学させて外国に足場を築こうとしているのである。
 ここ10年ほど中国人の海外留学生の数は毎年20%ほど増加し、2011年は約34万人( 中国国家観光局の統計 )で、世界一多い。 おもな留学先はアメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリスなどだ。
 留学開始年齢も下がり、最近は12~13歳から留学するケースが増えている。 アメリカでは、親元を離れてひとりで留学してきた子供を 「 パラシュート・キッズ 」、その子供を世話するために時々本国からやってくる母親を 「 ヘリコプター・ママ 」 と呼ぶ。 そうしたキッスやママで一番多いのが中国人だ。
 最近、官二代らの留学ブームに波紋を呼んだのが、香港の新聞 『 明報 』 の報道だ( 3月末 )。 習近平国家主席、李克強首相、李源潮国家副主席、汪洋副首相、馬凱副首相といった国家指導者の子女はいずれも留学中だったが、習近平体制が発足した昨年11月の共産党大会前後に一斉に帰国していたことが明らかになったのだ。
 習近平政権は腐敗撲滅を掲げているが、多くの汚職では不正に得たお金を海外留学中の子女の銀行口座に振り込んでいる。
 党幹部が自分たちの子供を留学させたままでは国民の批判を浴び、政敵に足元をすくわれかねない。 実際、上海で一般庶民に話を聞くと、 「 奴らが国をメチャクチャにしたくせに、自分たちだけ外国に逃げるとは何事だ 」 「 留学や移民をする奴は売国奴だ 」 と怒りの声が返ってくる。 習近平らが自分たちの子女を一斉帰国させたのは、そうした怒りを爆発させないためという見方が一般的だ。
 だが、今のところ多くの官僚の子弟たちは相変わらず留学したままで、帰国する気配はない。 むしろ、崩壊の時が迫っていることを感じているのか、新たな留学の需要が増えている。 それに応えるため上海、北京など大都市には英語学校が林立し、今日も多くの生徒が吸い込まれていく。





中国脱出
 




( 2014.08.12 )

   


 中国の不動産最大手のひとつ、 SOH中国グループの潘石屹会長が7月中旬、 米ハーバード大学に創設した奨学基金会が物議を醸している。 これは同大で勉学する貧しい中国人留学生のための奨学金だが、 本当に苦学生を助けようとするならば、 「なぜ中国内で同じような奨学基金会を設立しないのか」 との疑問が巻き起こり、 「本当の目的は潘会長の子息が優先的にハーバード大に入学するためではないか」 との批判の声が上がっている。

 潘氏は7月15日、米ボストン市内のハーバード大学を訪問し、ドルー・フォウスト同大学長と、同大の中国人留学生のために1500万ドル( 約15億円 )の奨学基金会を創設する合意書に調印した。

 その趣旨は 「 年収が6万5000元( 約104万円 )以下の貧しい中国人世帯の子息のため 」 というものだが、 「両親が貧乏ならば、そもそも子息をハーバード大に進学させようとするはずはない」 という疑問の声が上がっている。

 米国の非政府組織( NGO ) 「 国際教育機関 」 によると、ハーバード大学で学ぶ中国人留学生数は686人だが、彼らの大半は国費留学生や企業派遣の留学生で、さらに習近平主席の長女の習明沢さんのように、党幹部子弟も多いといわれる。 同大の現役中国人学生は中国で人気があるタブロイド紙 「 新京報 」 のインタビューに対して、 「 奨学金が必要な苦学生が多くいるとは考えにくい 」 との声を紹介している。

 さらに、 「苦学生のための奨学金を出すというのならば、なぜ中国内で奨学基金会を創設しないのか。 なぜ、ハーバード大学だけなのか」 との疑問も出ている。

 これに対して、潘氏の妻で、同社の社長を務める張欣氏は 「 将来、世界的な活躍をする中国人留学生を助けるためで、今後はハーバードだけでなく、エール大学などにも同じような基金会の設立を考えており、複数の大学で、総額で1億ドル程度を出資したい。 あくまでも、中国人の国際人材養成のための奨学金だ 」 と中国メディアに答えている。

 とはいえ、国際的人材の養成が目的ならば、中国内で基金を設けない理由にはならない。 米国内の中国人留学生よりも、中国国内の学生の方が苦学生は多いからだ。

 「新京報」 は読者の声として、 潘夫妻がハーバード大学に基金会を創設した目的は 「息子をハーバード大学に入学させるためだ」 と伝えている。 「ハーバード大学に限らず、米国内の名門私立大学は寄付の額に子息を優先的に入学させる暗黙の了解があり、潘夫妻もそれを狙っている」 というわけだ。

 これが当たっているとすれば、 社会貢献を隠れ蓑に、 自身のことしか考えない我田引水的な発想であり、 ネット上では 「自分の息子をハーバード大に入れるのは構わないが、それを慈善活動に結びつけるのは邪道だ」 との声も出ている。